悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

文字の大きさ
上 下
523 / 724

re.《239》静かな恐喝

しおりを挟む








居なかったのはダリアの方じゃないか。
いつも1人取り残されるから、今回もずっとかえってこないと思ったのだ。
彼に放置され続けた自分がそう勘違いするのは、なにかおかしなことだろうか?


「ミチル」


長い脚は少しもかがまれないまま、顎に添えられた親指の腹が顔を見あげさせる。

上から見下ろされると怖い。
頭を強く抑え込まれて、ひたすら熱を打ち込まれた記憶が蘇るのだ。
思わず、強く振り払うように首を振った。


「優しく聞いているうちに答えた方が良い」


果たして返ってきたのは、とても静かで傲慢な恐喝だった。
そっと聞こえたのは冷たいため息。

こんなモヤモヤした理不尽感には納得できない。
ちょっとの苛立ちは、しかし彼に睨まれていると次第に消え、恐怖と臆病だけが残る。

前も立ち入ってはいけない所に潜り込んで、ヨハネスに怒られたことがある。
どんな理由があれ、自分が独断で外に飛び出した事実は変わらない。
無責任なこちらが悪かったんだろう。

でも、こんな責められ方をされても、当たり前なのか?
彼の言い分が正しくても、なんだかとても惨めな気分だ。
こんなのまるで、リードに繋がれた猫や犬と一緒じゃないか。


「どこを見てるんだ?」


何か言い返そうと思って拳を握りしめる。
ダリアの手が肩に置かれる。
こっちが口を開くより先に、硬い声が告げた。


「言うことが聞けないなら、外へ出られなくすることも出来るんだが」

「·····───っ」


全身が重たくなるみたいだ。

最近、何かが少し変わっていたと思っていた。
全部勘違いだったのかもしれない。

短い沈黙が流れた。

一方、その短い沈黙の間、ダリアは失言を知った。
見下ろした細い肩は確かに震えた。
自分の発言を後悔するのはいつだってミチルに関することだ。前までは言動を悔いることなど1度だってなかった。

全て自分の考えが合理的で、決定が"正"になったからだ。
それは実際の事だった。
しかし今、ミチルを怖がらせた瞬間に、この言動は全て間違いだと思い知らされる。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

5人の幼馴染と俺

まいど
BL
目を覚ますと軟禁されていた。5人のヤンデレに囲われる平凡の話。一番病んでいるのは誰なのか。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...