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二章
re.《236》頼むよ
しおりを挟むまるで本当に心配だけど、嫌われたくなくて機嫌を伺いながらなだめられているみたいな感じ。
変な犯罪者もいるものだ。
とにかく無理やり危害を加える訳はなさそうだから、無視してれば諦めるだろう。
興味を持ったと思われないように相手の方には一切目を向けない。
しかし視界の端で、輝くほど磨かれた革靴が目に入った。
「ねえ?頼むよ、大通りには美味しいパン屋もある。僕あそこのマフィンが大好きなんだ。食べてもらいたいな、きっと気に入るよ、あっちに行こう?」
おまけによく回る口ときた。
よほど悪いことで儲けているらしい。
帰ったら、ダリアに報告してここの治安を見直してもらわないと。
「ついてこないで」
「聞こえてたの?」
こっちをガバッと向いた予感に、ミチルはさらに足を早めた。
いい加減にして欲しくて言ったが、逆効果だったのだ。異様なほど嬉しそうな声が物語ってる。
「ほんとにダメ~?」
なんだ、その甘えた声。
思わず顔を顰めて、ふと前に伸びた長い影を見る。
細身で背の高い相手だ。
追いかけられたら、絶対に敵わない。
ふと恐怖を感じた。
「つ、ついてこないで」
「でも───」
「ついてこないで!」
ミチルは耐えきれず、とうとう走り出した。
知らない相手にしつこくされることがこんなにも恐ろしいなんて初めて知った。
暫くしてそっと後ろを振り返る。
微かに人の影が見えたが、相手はこちらの方に体を向けたまま、立ちすくんでいるように見えた。
やっと諦めたのだ。
初めからこうしてればよかった。
ほっとして前に向き直り、次の曲がり角を曲がり───ミチルは今度こそ足を止めた。
「··········あ?」
先の道は行き止まり。
そしてそこに、7、8人の男たちがたむろしていた。
みな屈強な体つきをしている。
彼らが囲むのは、何かが入った麻袋。真ん中にいた男はご丁寧に金を取り出したところだ。
恐らく、1番見てはまずい現場に現れてしまった。
引き返そうとするが遅かった。
「頭を貫かれたくなかったら動くな」
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