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二章
re.《234》セントラルロード
しおりを挟む自分にとって、もっと絶望的な現実は、取り返しのつかない恐怖と一緒にあった。
その原因はいつだってダリアだったはずだ。
けれど、時折鈍く痛む胸の痛みは、ただの悲しみとは違う。
──裏切ったのはどっちだ?
(また、この気持ち)
恋心を抱いたのはダリアが初めてだ。
利用され、弄ばれ───じゃあ、傷ついた自分を抱きしめたのは?
記憶は真っ黒に塗りつぶされる。
ミチルはブンブンと首を振った。
扉は鍵がかかっているが、内鍵をひねれば開けることが出来た。
となれば、やることは決まってる。
受付のコンシェルジュから死角を狙ってエントランスを突破する。
昨日は沢山歩いた街並みだ。
ダリアもいつ戻るか分からないし、少し近くを散歩するくらいは良いだろう。
ミチルは街へ飛び出した。
セントラル・ロード。
古き良き街並みを維持する、帝都ののどかな街だ。
簡単なシャツとズボンで、ハンチング帽を目深に被ってるから、正体がバレることは無い。
広場のベンチへ腰かけていた老人紳士に"新聞屋の手伝いをしている坊や"と間違われたが、そのくらい街に馴染めているということでよしとしよう。
公園では7、8歳程度の少年少女がシャボン玉を飛ばしていた。
服装からして富裕層だろう。
皆コロコロしていて、悪魔だということを忘れかける。
青い空に優雅な街並み、緑の多い広場と噴水の爽やかな音、パンの焼ける香り。
思いがけず、幸福を感じた。
こればかりはダリアに感謝しなければいけないかもしれない。
センター街を進んでいたミチルは、ふとひとつのパラペットの前で立ち止まった。
『アース美術館まで徒歩10分』
真新しいが、金の縁が無駄遣いなほど立派な看板だ。
行き先を示す矢印が刺すのは真っ直ぐ。
セントラルロードを真っ直ぐ行ったら、「貴族たちの庭」と謳われる広大な鑑賞庭園がある。
上流階級であれば誰もが憧れる美貌の庭。
一生に一度の結婚式場としてそこを望む令嬢は数しれないが、場所を一日独占するだけで膨大な予算がかかる上、土地を踏むには特殊な権利がいるという。
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