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二章
re.《227》⚠️内容を修正しました
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小粒のアメだ。
覗き込んでみたら、建国歳年と簡易的な皇族の紋章が刻まれていた。
促されて、乾いた口の中に玉を放り込む。
「変わった味」
コロコロ転がしてたら、視線を感じた。
初めて味わうフレイバーのせいで、ダリアを忘れてた。
彼は窓の方からこちらへ寄ってきて、軽く身体をかたむけた。
それだけだ。
キスされた。
数秒してから脳みそがそれを理解して、ミチルは唖然と相手を見上げた。
「アーブだよ。喉に効く薬草だ」
景色が綺麗だから見てみるといい。そう言い残して、彼はシャツのボタンを崩しながら浴室へ消えてゆく。
どんな感情かも分からないまま、ミチルはしばらく飴玉に舌を伸ばせなかった。
暫くせず、足元はおぼつかないまま窓へ寄った。
目線がちょうど縁に来るから、背伸びしてみる。
さっき歩いた商店街が夜の街並みに変わっていた。
紫と黄色が目立つパラペットの数々。連れ添って歩く紳士と淑女、そしてどこからが流れてくる滑らかな音楽。
人間界とはまるきり違うけれど、賑やかで安らぐ風景だ。
初めは変な味だと思っていた飴も意外と美味しく感じる。
この景色も、
なんたる薬草の飴も、好きだ。
「·····?」
ふと───ピンクの光に混じって、淡い桜色を見つけた。
サクラ。
こっちには無いと知った、人間界特有の花だ。
透けるように光ったのはきめ細かい髪の影。
とても淡くて綺麗なローゼ色だ。
あんな髪色をしている住人は初めて見た。
目で追って、しかし人混みに紛れて消えてしまう。
緊張が解ける気分と一緒に残りの甘味を飲み込んだ時だった。
「───窓を開けるかい?」
「!」
それはすぐ頭上から聞こえて、振り返るより先に窓へ手をかけた。
涼しい風と一緒に、朗らかな音楽が流れ込んでくる。
恐ろしいと思っていた悪魔族の住人たちだ。
無表情だったり、どこか寂しげだったり、笑っていたりする。
ミチルは瞬きをして見入るが、それも直ぐに不可能になった。
少し強い風が当たる。
肩を竦めた身は、後ろの人物に覆われた。
「淡い桃色はお前の瞳を象徴しているそうだ」
街並みに時折光る色だ。
前までは催しに馴染みのないカラーだったという台詞は、面白いほど左耳から右耳へ流れて言って頭に入らない。
背や腰に当たるのは硬い身体だ。
こちらの胴体に回された腕が手持ち無沙汰に腹を撫でる。
美しい景色と2人きりのホテル、少し薄暗いオレンジのライトに、嗅ぎなれない風呂上がりの香り。
とうとう、こんなのはおかしいと、脳内が悲鳴をあげる。
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