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二章
re.《215》間違い
しおりを挟む「用事があるんじゃないのか?」
彼の陰に隠れた、たったそれだけだ。
触れられてもいないのに、身体はビクともしなくなる。
初恋の相手。
そして自分を酷く利用した相手。
今はもう、一応は伴侶として尊重してくれているように思う。
もちろん気まずいし、怖いけれど、いつまでもぎこちなく接するのは悪いことだ。
何故か、それ以外に。何かが引っかかって、彼の眼を見る瞬間、背筋が凍てつく時がある。
「ごめ、んなさい」
「·····」
謝罪には沈黙しかない。
それから微かに聞こえたため息に、指の先が凍てつく。
「体調はどうだい?」
前までは大好きだった、知的さの滲む低音。
それが紡ぐ言葉の意味を、彼の本性を知った今ならしっかり理解出来る。
気遣いの裏にあるのはいつだって自分を利用するための意図があった。
体調を気遣っているんじゃない。
もう十分すぎるほど休んだだろうと。だから怠けていないで、そろそろ役目を果たせと言っているんだ。
使えなければ捨てられてしまう。
「ごめんなさ·····っ」
「謝罪ではなく·····───」
ダリアの言葉は続かなかった。
スラックスはボタンを解いたら直ぐに下へ落ちていった。
次にシャツのボタンを開けてゆく手は、緊張にかじかむ。
しかし、やらなければいけない。
ダリアとて、直ぐに子を作り直す考えはないだろう。
そうであってもなくても、この身体は子を産む以外にも方法がある。
彼らにとっては、理性をも揺るがす獲物の臭い。
生身の血肉は極上の御馳走。
魔力は増大する。そして夫婦間の目交いが繁栄を誇示するとされる悪魔界の掟。
彼が、自分へ最低限に望んでいることだ。
「───なんのつもりだ」
問いかけてきた声は硬かった。
(·····?)
また、何か間違えたのだろうか?
どうしよう?
声のトーンが少し変わるだけで、こんなにも思いは不安定になる。
情けなくてたまらない。
でもどうしたらいいか分からない。
「ご、め、なさ·····」
また、間違えていたら、どうしたらいいのだ?
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