悪魔皇子達のイケニエ

二章

re.《２１２》能力者

自分は何も知らない。

相手は余程、関心も共通も無いのだ。

ベットからは1歩も動きたくなくなる。
理由は分からなかった。

それから、自分が眠っている間の時事的話題から民間の情報、様々な出来事を時系列に聞かされる。

1度に聞かされたって覚えていられない。
故にこれは、形式上伝えなければいけないことなのだろう。


「最後に──お耳に入れておかなければいけないことが」


声のトーンが変われば、それが重要なアイズだ。


「非公式の野良ギルドで、能力を使った形跡が報告されました」

「·····？」


彼の報告に、ミチルは首を傾げた。

能力は皇族や、それに属する眷族家門のごく一部のみが使うことが出来るものだということは知っている。

あの赤髪の騎士やレイモンドがそうだ。
つまり能力を持つ者が非公式の野良ギルドに参加するなど有り得ない。


「登録されている能力使いの能力と痕跡を照らしましたが、当てはまる者がおりませんでした。捜査で新しく情報が入りましたら、追ってお伝えします」


ミチルへ報告をしながら、レイモンドはあの痕跡を思い出していた。

荒々しく割れた地面と、漂う高悪魔族の臭い。
しかし精度はめちゃくちゃで、まるで理性を無くして暴走した獣のような攻撃だ。

───否、「まるで」ではなく、そのものである。

能力の使い方を知らず、操れてもいない。
そしてその能力は、かなり純度が高く、宿主すらを侵食しかねない攻撃性を持っている。

能力は血筋により決定される。
血筋が高潔であるほど能力値は高く、血筋が良いほど高等教育を受ける。

だから、野良ギルドに現れた謎の能力者は異質だ。

もしかするとこの自分よりも研ぎ澄まされた能力を持ちながら、行使する力はデタラメである。
恐らく成人はしていない男の性だ。

能力者が誕生した場合、その家の者は皇家に能力者が生まれたことを申告しなければいけない。
故に、もしもギルドに現れた人物が無申告の能力者ならば、これは極めて重い罪にあたる。

一刻も早く身柄を拘束しなければいけない。