悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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re.《198》壊れ物

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「そっちに行ってもいい?」


自信なさげな声には、やはり頷いてやるしかなくなる。

(あれ、でも·····)

彼の言葉に集中していて忘れていたが、今の自分は───。

彼が縁に腰かけてベットが軋む。
濡れた下着が擦れて、おかしな刺激を拾った。


「ギューしても、いい·····?」


今触れられたら、ダメだ。
臭いでバレてしまうかもしれないし、なにより、人肌は心地よいから。

返答に戸惑っていたら、形の良い眉が傷ついたように歪む。
それを隠すようにごめんと言う彼がズルくて、結局後先を放り投げて頷いてしまう。

まるで壊れ物に触れるようにして伸びてきた腕がこちらを抱きすくめる。
時計の針の音がうるさく聞える。

優しいふれ方だけど、硬い腕だ。
心臓が早足になる。
さっきとは違う、軽く弾むような感じだ。

そっと屈んできた身体に怯える。
彼はピタリと動きを止めて、それからスリーパーからはだけた肩口にそっと口付けした。

頭を撫で付ける手のひらが冷たくて気持ちいい。
キスしようとしてくる唇から咄嗟に顔を逸らしたら、首筋の辺りで息を吸い込まれた。
生ぬるい鳥肌が駆け抜けていった。


「かわいい·····」


甘い声でそんなことを囁くので、思わず腰を引く。

花嫁としての責務も全うできなかった卑しい獣人だ。
こんな待遇はおかしい。
思い上がっていたのは自分の方だ。


「ん、」


下唇に添えられた指が彼を見あげさせる。
陶器みたいな肌だ。見惚れていたらシアンが近づいてきて、またぷいと顔を逸らしてしまった。

彼は甘えるように高い鼻を擦り寄せてきた。


「ゃ、もぅ·····」


腰を引き寄せた指は男らしくて逃げられそうにない。
何とかして発した声は震えた。

怖いからじゃない。
ドキドキして、耐えられなかったから。

ギュッと目を瞑る。

一方、相手はそんなミチルを観察し───これ以上の侵攻を諦めた。
まだ体調が万全でないミチルに対して、欲情を制御できる自信が無いからだ。

そしてそんなことが可愛らしいこの伴侶にバレたら、また怖がらせてしまうだろう。

最大限の配慮を考えるヨハネスは、ふと思考を止めた。













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