悪魔皇子達のイケニエ

re.《１７２》異端

「·····臭いでどうにかなりそうだぜ·····」

「·····？ッ♡♡ふぁッ"♡♡」


耳に噛みつかれて潮をふく。


「あぁ、クソ·····片方も喰ったら駄目なのか？」


尖った牙が甘噛みしながら鼓膜へ囁くのだ。
食うなら一思いにしてくれないと、痛いのは大嫌いだ。

しくしく泣いていたら、肉食獣はこちらをのぞきこんで首を傾げてきた。
唇を掬われて舐め取られながら、また奥をたくさん叩かれた。


「おい、こっち見ろ」


呼びかけには何度目かでやっと気がつく。
迫り狂う強靭な腹筋から首筋をたどって彼を見上げる。

いま、自分を辱めて、そうしながら喰おうとしている男だ。


「食べないで」

「あ？」


低い声は地鳴りみたいだ。
溢れた涙まで舐め取られる。
それからは、腫れたヒダを擦られながら、終始全身を舐め甘噛みされていた。

初めこそ口元で触れられる瞬間を恐れていたミチルは、途中から彼の唇や舌に甘い吐息を落としはじめる。

緊張のせいで全身クタクタだ。
かなりの時間が経って、かすれた鳴き声をあげる唇にも吸い付かれる。

腹は彼の熱を孕んで苦しい。
また水を飲まされ、乳頭を集中して吸われながら内側を舐めあげられるのを繰り返し、とうとう気絶するように眠ってしまった。

眠っているあいだも奥で射精され、永久に擦られた奥は、目が覚めた頃、発情期独特のニオイをしていた。
兎獣人独特のフェロモンの香りだ。しかし自分は異端だから、とても下品で酷いニオイだと、同族に散々嘲われ揶揄われたそれである。

眠っている間に、既に薬も投与されたようだ。
隠しようが無いほど下品な臭いに、あの魔法薬の匂いが混ざっている。

臭いだけじゃない。
身体は、犯されるためだけの穴の格好として拘束され、膨らんだ腹の中では植え付けられた種を味わっている。


───ガチャリと扉が開いた。















ガウン姿の男だ。
順番通りであればヨハネスだが、視界に映ったのは黒髪の悪魔だった。


「もう時期楽になる」


しっとりした低音が言う。
大きな手が頭を撫でるのを、ミチルは無反応で甘受する他なかった。