悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《165》

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アレが全く無力なのに、逃げようとしたり、怯えたり、そして怯えるこの指や牙で身体をとろけさせるのがたまらなく滑稽で、おぞましい嫌悪と愉快さを引連れた。

挿入の時は特に気分が昂った。
奥深くは初めて知る温かさ。悪魔を恐れる素振りに余念が無いのに、身体はこちらが困惑するほど甘く絡みつき鳴き声でねだる。

水面下で浅ましい欲望を掲げ、こちらへは笑顔を向ける今までのヤツらとは逆だ。

(ずっとこいつで遊んでやろう)

この心から恐怖した顔を、一生安堵させることなく、徹底的に慰みものにしてやろう。
そう思っていた。

それなのに─────。


彼がほかの皇子に頬を色づかせた時。

または、怖がっているくせに、彼がこちらへ少し照れたように俯いたのを見てしまった時。

それぞれ別のふうに、この心は掻き乱された。

気まぐれな想いは憎悪へと変わったはずだった。
一生離してやるものかと、他のやつを考えられないほど恐怖で支配して、自分に屈服させてやろうとも思った。

ミチルに受け入れられたいと思うようになっていた。
彼のとても繊細な心が自分に寄せられたら、どれだけ気分がいいかと考えていた。
言動一つ一つを目線で追いかけて、構わずにはいられなくなった。

愛らしくてたまらないと思うようになっていた。


「もうヤメだ」


薄暗くなった部屋で、ハインツェは誰にともなく呟く。

───ミチルがマナを拒み始めた。

意図してできることでは無い。
それは、逃げ道を失い、恐怖し、疲弊しきった哀れな命が陥る奇病だ。

トリガーは分かっている。


『愛してる·····』


あの日告げた、産まれて初めて口にする単語。
それと引き換えに得たのは、脅えるようにも見えたミチルの表情。

突き飛ばそうとした手を無理やり掴んだ。
あの日、猫なで声で彼に縋って、浅ましく何らかの情を求めた。
熱くなる身体はひどく震えていた。


『俺は·····!』


ミチルのこころを壊したのは、あの日、ミチルのココロに立ち入ろうとした自分だ。












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