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re.《124》連れてって
しおりを挟む失いたくないなら、自分がいなくなってしまえば良かったのだ。
「連れてって·····」
「·····どこに?」
おかしなことだ。
いつもなら拒絶の言葉一つで機嫌を悪くする大悪魔。
そんな彼が、何故かこちらをのぞきこんで、壊れ物に触れるように頬をぬぐう。
毒々しい美形が、とても変な表情だ。
こっちの顔に、なにか付いてるんだろうか?
「どこでも連れてってあげるよ。この俺に出来ないことなんて·····」
あるわけないだろと、軽い笑みが続ける。
それは普段にもまして遠く聞こえた。
「だから、もう·····───」
「·····本当?」
そんな顔で泣くな。
そういう前に、幼い声が聞き返した。
涙で昂って桃色になった頬が、喜びを表すようにまた滲む。
「もちろん」
プライドも体裁もクソ喰らえだ。
悩んでいたことを、馬鹿みたいだとはじき飛ばす。
手遅れなことなどない。
こいつが微笑むなら、ほかのヤツに塩を送ったっていい。
ミチルを愛してる。
「───ルシの所に、連れて行ってくれるの?」
高い声はそう言って微笑んだ。
「───ルシの所に、連れて行ってくれるの?」
問いかけに返答はない。
ハインツェは嘘つきだ。
ミチルは彼の上を降りようとしたが、また抱きすくめられて身動きが取れなくなってしまった。
「アイツはもういないよ」
静かな声が言った。
意地悪やからかいなら、いつもみたいに笑えばいいのだ。
そうじゃないと、またただの嘘つきになる。
「チルの居場所は、ここだけだよ」
「·····ニャッ」
擦り寄ってきた高い鼻がうなじを撫でる。
それから、首筋へ刺すような痛みが走る。痛いのに、甘い電気を行き渡らせる魔法だ。
「ぅ」
耳元で聴こえるリップ音に、体は酷く敏感に反応する。
服越しに体を撫でる手が恐ろしいほど気持ちいい。うっとり目を細めたら、また長いキスを甘受した。
「ん、ン·····♡ぅ·····♡」
(あたま、ふわふわする·····)
ただ身体をまさぐられるディープキスを続けた。
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