悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《56》

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どっちのせいでゾクゾクした感覚を甘受したのかは分からない。背後を大きな気配に覆われたまま、半開きの口に指が侵入してきた。


「ゃ、んぅ」


舌を挟んで器用に動く指。
振り込まれる少し苦い薬に、ヨダレが垂れる。

口の中は弱いのだ。ニャアニャアと漏れる鳴き声を無視して、相手は律儀に重ね塗りなんかしてくる。

強ばっていた身体は、だんだんと妖しい熱を帯び始めた。













何かが気に入らない時、逃げ出す癖は治らないらしい。

口で伝えてくれないのならばどうしようもない。
最も、どんな理由があれ、主のために今すべきことは治療を施すことである。

避難先はベット。
安全な逃げ場まで考えられなかった白い脚に、追う身ながら心配になる。
悪い狼に襲われでもしたら、たちまち餌食になってしまうだろう。


「ニャア·····ッ」


身柄を丁重に確保して、骨盤の当たりを押せば、知識通り関節はかくりと力をなくした。
ミチルはよくわかっていなさそうな顔だ。

説明よりも先に、済ませてしまった方がスムーズだろう。


「せめて薬を塗るまでは、辛抱ください」


できるだけ優しい声色を意識するが、触れた唇は緊張の為か平時より熱い。
差し込んだ指の先で、それよりも熱い舌が覗く。

唾液すら甘いことを思い出させられ、瞬時に煩悩を切り捨てる。
これは治療だ。

薬を塗り込んでしまおう。

撫でるように口内を散策する。少し熱くなったところは、火傷未満といったところだろうか。


「·····ニャ·····ミャン·····」


幼い鳴き声は無視する他ない。
容赦ないと思われても仕方がない。これは全て彼のためだ。

いつの間にか、細い片手が手首を掴んで震えている。
怯えているのではない。
縋り付くようなそれだ。

1分ほどそうしていただろうか。

そろそろ薬も馴染んだし、心配いらないだろう。
ポタポタと滴る唾液に、紅茶の香りが混ざった時だった。


「ニャン·····ッ♡」


「·····?」


弱々しくなった鳴き声の異変に、ジェロンは一度手を止めた。

髪の毛はしっとり柔らかい。
火照った身体はそっとこちらへ体重を預けている。
潤うピンクの瞳が、せつなげに斜め下を見つめていた。











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