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二章
re.《23》泣き跡
しおりを挟む「そのルビーには、とても強力なご加護が架かっています」
背から離れた手が、ぬいぐるみの鼻を撫でる。
勝手に触らないでくれ。
隠すように抱きしめる力を強めると、ふふ、と、何かとても甘いものを含んだ笑みがこぼされる。
意味がわからなすぎて、思わずドギマギする。
レイモンドは何故か嬉しそうだ。
「神は、ミチル様のおそばにいらっしゃることでしょう」
「·····」
ミチルは腕の中のそれをそっと見下ろした。
布に隠された美しいルビー。
彼の色。
最後に見た、吹く深紅と同じだ。
怖くて寂しくてたまらないのだ。
もうあの温もりに抱きしめられることは無い。
見つめあって想いを確認することも、名前を呼ばれることもない。
彼はいなくなったのではない。
では最後、自ら心臓をつき殺した時、彼は何を考えていた?
彼は幸せだったか?
ルシフェルに、自分の想いは届いていたのか?
炎の渦にいた青年と同じだった。
そして彼は別世界へ葬られた。
何度も交わりあった、辛く耐え難いほど耽美な夜。
超人的な彼が、自分だけに向ける愛情。
あれが夢や幻だなんて、あるわけが無い。
彼らは生きていた。欲望や或いは切ない感情を持ち、壊れ物に触れるようにして頬を拭った。
泣きじゃくるミチルを、大きな腕はじっと抱きしめていた。
月が屋敷の真上をゆく頃、すぅすぅと安らかな寝息が聞こえてきた。
腕の中に抱えた温もりをベットへ降ろす。
目元は赤くて、頬にはくっきりと泣き跡が付いている。
泣き疲れて眠ってしまったのに、両手はまだぬいぐるみを抱きしめている。
こちらからすればぬいぐるみのような大きさの主が、さらに小さなぬいぐるみを大切にする様子は、様々な葛藤の末に愛おしいという他ない。
温めたタオルで頬を拭って、誰にともなくうーんと呟く。
前回、この小さな主は、成人男性の置物はお気に召さなかったようだ。
だから、小型仕様にした分体はクローゼットの隣へ。
少年時代の紳士服は蝶ネクタイが良いだろう。分体のネクタイをリボンに直し終えたレイモンドは、再びベットの前にかがみこむ。
そしてそっと囁いた。
「お帰りなさいませ」
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