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二章
re.《10》青の過保護
しおりを挟む今頃酷い思いをしているかもしれない。
今度こそ失ってしまったら───。
パッと姿を現したミチルに心の底から安堵しながらも、制御出来ない不安は自分を操った。
彼の細い手首を強く掴みあげていることにさえ気がつけなかったのだ。
ミチルを失うことが怖くて仕方なかった。
傷口は一刻も早く治療しなければ。
説得を諦めてくるぶしを掴もうとしたら、泣き出しそうなピンクの瞳を見つけた。
今にもこぼれてしまいそうなほど切ない輝きだ。
そんな表情をされたら、とても足首をむりやり引っ張ることなど出来なくなってしまう。
嫌だとつぶやく代わりに、膝を折り曲げて拒絶してくる。それによって隙間から見える幼くてあられもない身体の部位に、側に仕えるにはあまりにも卑劣な欲望が沸き上がる。
それを殺して、臆病な彼の言葉を待つ。
彼を手放したくない。
異常に支配され、ミチルを怖がらせていることにも気がつけなかった。
こんな顔をさせたくはなかった。
余程厳しい口調になっていたらしい。
ミチルはそれが寂しくてたまらないとでも言うように、弱々しく眉を下げた。
「それはミチル様が·····」
胸が締め付けられるような表情に、思わず適切な言葉を忘れる。
こちらの気も知らずに、よくもそんな眼差しができるものだ。
ただ、小さな主を護りたいだけだった。
「ミチル様が、そのようにお可愛らしく無防備であられるせいではないですか」
ガンとして硬い声音が、全くそれに合わない単語を口にする。
数秒の沈黙がすぎた。
「·····························???」
堂々と言い渡されたセリフを咀嚼するが、全く理解できない。首を傾げたミチルに発言の許可をとり、彼は再び口火を切る。
「ミチル様は、ご自分がどれほど儚い存在であるか、あまりにも、自覚が無さすぎます。フェロモンに当てられた使用人が必ず理性を保てる保証はありません。警備は無論万全ですが、100%安全とは言いきれません。例えば傷口から細菌が入り命を落とす可能性は十分に考えられます。様々な危険の可能性が潜んでいるのです。ですから今回のような件が起こり、あなた様の身に何か起こるのではと考えると私は」
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