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一章
241.2人の願い
しおりを挟む「やっと分かったんだ」
「·····?」
眩い閃光がルシフェルを取り囲む。
何か変だ。
漠然とした胸騒ぎすら見えなくなるほど、美しい光景に目を奪われる。
「君を愛しているから、俺は·····───」
『───"お前"を解放しなければいけないようだ』
いつの間にか頬を撫でたのは黒い指先。
刹那、視界がくらみ、動くことすら叶わなくなる。
真っ白な世界に赤い花が飛び散った。
薔薇を湧かせる源は白いタキシードの胸元。
シルバーの長剣が突き刺され、貫通されるのを、どこか別の世界のもののように見届けていた。
初めて、彼の姿を見たときからだった。
か弱い生き物だ。
疲弊し泣き崩れて、卑しい獣の臭いが充満していた。
この胸に宿る魂が騒ぐのを、とても不思議な思いで感じていた。
哀れなニオイは食欲をそそる。
喰ってしまいたいと思うのが、悪魔の性だ。
しかし·····────。
『ピアニストなの』
権力や肩書きを持たない姿を写すピンクに抱いたのは困惑。
自分にとっては飽き飽きしていたもの。
そしてダリアにとっては、固執するほかない膨大な権力の責務を無視して、指先で始末できるほどの生物がそう口にした。
生々しい欲望が、いつしかミチルに愛欲を抱き始めた。
───早く元のところに戻れと警告した。
愛していた。
ずっと手に入れたいと思っていた愛。裏切られた他人の記憶や、孤独にすごした、とてつもなく長い年月。
ミチルを手に入れるために緻密な計画を立てる一方、燃え盛る悪魔の本能の隙間から、まるで子供のように純粋な情けなさが顔を出した。
それはミチルの様々な表情を見る度に葛藤する。
全て喰い我のものにしたい欲望と、撫でれば壊れてしまいそうなほど繊細な生き物を抱き抱える、生ぬるい幸福だ。
めちゃくちゃにしてしまいたい。
そして───この手で涙をぬぐってやりたいと、柔らかな頰を撫でることを夢みたりした。
いつか、支配欲に侵され、ミチルを喰い殺すことになる。
最も欲しいものを見つけた。それがとてもか弱くて、指先だけで思いどおりになるものだというのに、最も手にしがたいことすら思い知った。
傷つけたくなかった。そんな、極悪非道な神からは想像もつかぬ思いから。
他では、悪魔としての強欲な意識が、彼を手篭めにして何がなんでも自分だけの所有物にしようと望んでいた。
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