悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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一章

207.残された仕事

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※206.にて、表記間違いを訂正しました。
ご指摘ありがとうございます😭

─────────────










───不意に、空間が歪んだ。

足場の岩が亀裂を走らせる。

"サタンの監視に縛られる前の魔力を取り込めば、天界への侵入も不可能じゃない"
集結したマナは、ハインツェの命令どおり動き始めたのだ。

天界への道が開ける。
マンホールが口を開くのと同時に飛び出したのはヨハネスだ。

その後を追ってアヴェルも続くが、行先は思わぬ事態に阻まれた。


「!」


目の前に鋭い輝きが飛び込む。
ハインツェからの攻撃を避けた途端、ひび割れた地面はタイミングを計ったように崩壊した。


「悪いな!定員オーバーだ」

「はぁ?!」


能力を酷使して青ざめた顔が振り返る。
不敵な笑みを最後に、マンホールは忽然と消え去った。

  遠くでは、野生動物が遠吠えを響かせている。
虚空に飛んでいった鳥ははるか遠くだ。

残されたアヴェルは呆然と呟いた。


「·····嘘だろ·····」


















ベットはマットまで新品に取り換えられている。
主を失った部屋だから、しばらく掃除は入らないだろう。

ここはいつも、何故か明るかった。日当たりが良いと思っていたが、見渡すいまは、暗く冷たいただの空き部屋だ。

なんとはなしに、視線をさ迷わせる。
床に転がった金平糖を探しているのだ。


「··········」


ジェロンは無造作に扉を閉めた。

馬鹿なことをしている。
いくら探せど、あんなにこぼしていた食べかすはおろか、亜麻色の髪の毛1本見つからない。

嗅覚は特別鋭い。そのせいで、日に日に薄まった匂いが、ついに完全に消え去ったことまで理解してしまう。

仕事はとてもスムーズだ。
こちらを悩ませる我儘も、理不尽な文句も聞こえない。
くだらない相談を聴くことも無くなった。
そしてなにか大事なことを忘れたように、胸の辺りに穴が空いている。


  悪魔界へ献上された生贄としてここへ来た頃から、ミチルは酷く脅えていた。初めはただそれだけの理由だと思っていた。

他人に世話されるのに慣れていない態度や、手を振りあげると怯えた色をする顔。
ふとした時に見せる寂しげな横顔。
人間界でも、彼は王族らしからぬ仕打ちを受けていたと、すぐに理解することが出来た。

鬱陶しくて面倒な仕事を任されたと思っていた。
早く喰われてしまえば良いと思っていたし、実際そうなるとも確信していた。

解けるような笑顔が、この胸に飛び込んでくるまでは。









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