悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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一章

178.変態

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部外者は入ってくるなという意味なのだ。
リラックスするためのマスターベーションにもなり得ることをするというのにもかかわらず、いつまで突っ立っているのだ。

馴れ馴れしくて、空気が読めない。最も苦手な部類だ。
呆れて悶々としていたら、こちらを見つめていたレイモンドはよく分からないことを言った。


「お手伝いが必要でしょうか?」

「?」

「初めにご紹介させて頂きたいと考えておりましたが、あの頃はタイミングが悪く·····」


モゾモゾと衣擦れの音がする。
今度はなんなんだ。面倒ながらもレイモンドの方に視線をやったミチルは、ギョッと目を見開いた。

ジャケット、ベストを脱いで椅子にかけた彼が、タイを解きながらワイシャツのボタンを外してゆく。

頑丈に浮きでた鎖骨に続き、割れ目の深い腹筋が顕になる。
逞しすぎる身体だ。

変人じゃない。

変態だ。


「もちろん定期的に検診を受け、常に清潔を保っています。整体、マッサージ、エステティシャン技術資格を取得しており、安心安全で極上のひとときをお約束します」


関連だと、医術学士も取得していますと付け足す男の話を聞く価値は無い。

ハイスペックでも変態は最低だ。
枕をなげつけたらでかい図体が頑丈なことをさらに思い知って怖くなる。ミチルは可能な限りの声量で叫んだ。


「恥ずかしがらずに、身を任せてください」

「こないで·····!」


こうして天界で酷い攻防戦が続いている頃───悪魔界の最北端、ドラゴンの渓谷で、地面を揺るがす大爆発が起こった。



野鳥はギーギー鳴きながら森林を逃げ出してゆく。
静まった崖の瓦礫の中央で、アヴェルは強く歯ぎしりした。

唯一天界へ飛ぶ巨大ドラゴンは一足先に天界へ連れられたらしい。
腹いせに力を放出しても一向に気分は落ち着かない。肩で息を整えていると、「あーあ」と、背後から間の抜けた声が呟かれた。


「相変わらずすげえ馬鹿力」

「·····」


茶化すようだが、ハインツェの横顔は何かを考えるように宙を仰ぐ。
アヴェルは自身の手のひらを見下ろした。

欲しいものは奪い取って、触れるものは全て壊して生きてきた。
生きてきたなんて言い方はおかしいほど、機械的にそうしてきた。初めて愛着を感じたネコという玩具さえ、不機嫌に任せて殺した。

鳴き叫ぶ声は醜かった。
早く静かにしたくて舌を引っ張った。壊れたらほかと変わらない、ただのつまらないものになった。

この手がミチルを撫でた時、感じたのは戸惑いだ。
怖がるくせに、うっとり目を細める。力を入れたら怯えた目を向けるのに、柔らかい温もりは甘い匂いを漂わせる。







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