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175.行かないで
しおりを挟む忍ばれた指はふちの裏を撫でるように回り始める。
腰からゾクゾクした痺れを感じて、口元が緩む。
空いていた彼の手が、こちらの片脚を持ち上げた。
セクシーで、しかし異様な声音だ。
こんな彼の声は初めてだった。
(·····なに·····?)
「や、ぁ·····ッ♡、!」
しなやかな指は、静かに激しくなっていった。
脚は簡単にベットへ押し付けられてしまう。
初めこそありえないと思っていた、相手から恥部が丸見えで下品な姿だ。彼は、まるでこちらが、恥ずかしい所まで全てさらけ出すことを好んでいるみたいだった。
「あの扉の向こうに出て、どこに行こうとしてるのかな」
くるぶしを掴んだ手に力が入る。
何か、変だ。
「·····今そんなことよりも、重要な話をしてたじゃないか」
ミチルは震えながら絶頂した。
最奥に突き刺さった指は戸惑うほど甘くて切なかった。
やめてと言っても、優しい愛撫は止まってくれない。
全身を濡らしながら、ミチルは扉の話題を出したことを後悔した。
「·····ごめんなさい·····っ」
わけも分からず謝罪して、快楽に打ち震える。
これが一種の調教であることは知り得ない。甲高い声を殺すことも出来なくなったら、年上の、低くて色っぽい男の声が笑った。
「気持ちいいね」
穴はひとりでにクチュリと音を鳴らす。
気持ちいい。
彼に身を任せれば、安心と快楽が得られる。
幸せになれた気がするのだ。
それなら──ここに閉じ込められていることの、何が問題なのだろうか。
「急がなくていいから、答えを聞かせて」
長い舌が口内を蹂躙するうち、ミチルはうっとりと目を細めた。
背に手を回すと、翼が無くなったあとのような肩甲骨が上下した。
首筋を撫でた唇が、牙を剥く気配がする。
何かが、遠くで、崩れ始める音がした。
「俺を愛してると」
。.:*・゜。.:*・゜。.:*・゜。.:*・゜
サタンが寵愛した女をイザベルという。
彼女の出生は不明。下級貴族の雑務から枝式に上流貴族の屋敷で働き、やがて悪魔界屈指の権威を持つ屋敷の主人と関係を持った。
一回り以上年上の相手だ。
不思議なことに、男が彼女にのめり込むと、屋敷の夫人は不治の病で亡くなった。
夫人の座を奪い、夫亡き後、彼女は屋敷の主の座に着いた。
ある者はイザベルを美の女神といい、またある者は毒蜘蛛と云った。
権力のために老いぼれに近づいた、怪しい女。社交界では悪の華と囁かれた。
落下してきそうな赤い月の夜、サタンと彼女は出会う。
孤独な魅力をもつ女性。
サタンは自分とは似て非なるイザベルに惹かれた。
望み通り、彼女は最高権力を手に入れたのだ。
「····──頼むから、行かないでくれ」
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