186 / 724
162.脆弱
しおりを挟む彼らがしてくれたこと。
熱や快楽は鮮明に思い出すことが出来る。
抱えた想いから逃れる方法はそれしか思いつかなかった。
「ひゃんぅ」
着崩されたシャツが湿った身体に張り付いて不快なことも無視し、指を咥え込む。
キュッとしまった孔が中指を引き込んでゆく。寂しさが少し埋まり足りなくなれば、初めよりも耐え難い切なさに襲われる。
「ミァ·····♡ん♡·····はぅ·····♡ん、ニャ·····っ♡」
ミチルは必死に自身を慰めた。
これはダリアに教えてもらった御伽事だ。彼の長い指が柱を叩くのに合わせて前を押すと、触られているみたいに錯覚した。
だから今も、その時の幸福を繰り返したくて、甘い幻に縋る。
「ん·····ぁ·····♡」
最後、扉の隙間から見た彼らの顔。
捨て頃かと話をしていたのだ。
じんわりと目頭が熱くなった。
そして捨てられた。
暇つぶしの玩具だったんだ。
けれど自分にとって、彼らは違った。
酷い恥虐、頭を撫でた優しい手、口付け、そして投げかけられた言葉や表情まで、一生忘れることは出来ないだろう。
こんなことなら、初めに喰われてしまった方がよかった。
「·······~~~ッ♡♡」
うずくまって達する。
床と腹に飛び散った白濁はすぐに冷えてゆく。誰の温もりも存在しない。
熱い身体を枕に擦りつけた時、静かな足音が聞こえた。
気がつくと、扉から一筋の明かりが伸びていた。
「ミチル·····」
蜜を含んだ低音が響く。
室内には怪しい匂いが充満していた。
「·····ッ·····♡·····ッ·····」
イったばかりでわだかまった余韻を飲み込み、震える指を孔から引き抜く。
いつから見られていたのだろう。
寂しさと切なさに、消えてしまいたいくらいの恥辱心が広がる。
扉を閉めたルシフェルがこちらへ近づいてくる。
しかし、近づいてきた手が頭を撫でると、後に生まれたのは予想もしない安堵だった。
「·····1人にしてごめんね」
予定が長引いてしまったと彼は言う。
落ち着かせるように繰り返し頭を撫でられる。ミチルは硬い胸元へ寄りかかった。
まだ捨てられていなかった。
そして、彼はまだこうして、優しく頭を撫でてくれる。
「悲しい思いはさせないって言ったのに·····」
「んっ」
目尻の涙に続いて、口元をこぼれた唾液を拭われる。
「寂しかったね」
甘い声に絆されて涙が押し出され、緩んだ涙腺は壊れてしまった。
暖かな他人の温もりだ。
嬉しくてまた甘水が滴った。
膝の上に乗せられたら、イったばかりの尻が甘く痙攣した。
「ミチル」
21
お気に入りに追加
2,183
あなたにおすすめの小説
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる