悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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一章

141.赤い海

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天界へ最も近い古城、ラーガの最上階。
悪魔界を揺るがす不可思議な災害の数々について、議会に出席した大臣たちは皆神妙な面持ちをしていた。


「恐れながら、方法は一つだけです」


老いぼれた神官が告げる。


「大量の貢品は意味を成しません。特別で高貴な血肉でなければ·····」


この世の恐慌はサタンの強欲だ。

サタンの怒気は地を割り、欲望は1つの惑星を木っ端微塵に滅ぼす。
人間界の3分の2を血の海に沈めた時、彼は云った。

赤い海を見てみたかったと。

サタンが世界の支配者である所以は絶対的な力にある。
もうひとつの所以は、彼が魔力の源であること。魔力の流れが止まれば、悪魔達は生きることすら許されない。
だからアビス・サタンは神であり、絶対的支配者なのだ。


「"特別で高貴"か」


ダリアは長老の言葉を反芻した。
今、ここにいる誰もが小さく弱い獣人を頭にうかべているのだろう。

あれを献上するには、いくつか害壁がありすぎる。

実際のところミチルは利用価値が豊富だ。
渡すならば、わざわざ嫁いできた生贄でなく、16程の獣人皇族の雄を餌にやればいい。いくらでもいるだろう。
寧ろ殆どが欠陥品では無いだろうから、高貴且つ優秀な人材を集めれば文句は無いはずだ。
ミチルをやる必要は無い。


「皇太子と妊婦を除き、人間界の齢16以下の皇族を全て集めろ」

「す、全てですか?」


半獣人、半魚人、人間。更に獣人や魚人には数十もの種類があり、皇族には一族につき少なくとも10から20人の兄弟姉妹がいる。
思わず聞き返した宰相は口を噤んだ。
冷ややかな紫に慄いたのだ。


「かしこまりました。それでは·····──」

「その必要は無いさ」


突如、天井から声が響いた。

展開へ通ずる扉──といっても、充分な魔力を持たぬ者にとっては終わりのない闇の向こうから、対象的に神々しい男が姿を現す。


「ルシフェル様!」


降り立ったのは第二皇子ルシフェルだ。
共にやってきた赤髪の騎士が黙礼する。逆風が収まると、その場はしんと静まり返った。


「調べていた件はどうなった?」


魔力の不吉な乱れ───すなわちサタンが憤怒する理由についてだ。
それさえ分かれば、最悪の事態を防ぐことが出来る。


「明確だよ」


大臣たちの外された聖堂、2人きりになると、相手は再び口火を切った。
ルシフェルの周りに空気中のマナが集まる。片手をあげると、彼とダリアの間には直径3メートルほどの黒点が渦巻いた。


「ここにミチルを映せるかい?」


ルシフェルが問いかける。







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