悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

文字の大きさ
上 下
144 / 724

124.おねがい

しおりを挟む





ミチルはふとヨハネスを見つめ返した。

 
「抱きしめてもいい?」



湖を思わせるような、澄んで美しい顔だ。
彼はどんなことを思って今、自分を見つめているのだろう。

好きだと何度も告げて、いつでも優しく甘やかしてくれる。
何かとても酷いことをしたような罪悪感を覚えた。


「お願い·····」


真っ直ぐな眼差しを拒むことはできない。
迷いながら少し首を縦に振ったら、すぐ抱きすくめられた。









──────────────────





「好きなの」


いやいやをする幼児みたいに首を振って、ミチルは泣きそうにつぶやいた。

ずっと聞きたかった言葉だ。
それを他の男への想いとして聞かなければいけないなんて、知っていれば耳を塞いでいただろう。

ミチルがダリアを恋しむ姿は、ミチルを愛しいと思う気持ちを、時に狂気へ豹変させる。

理不尽な哀しみを殺し、今度こそ伝わるようにと彼を見つめる。


「俺はうさぎちゃんが好きだよ」


ミチルはなにかに気づいたような顔をしていた。
ピンクの瞳は少し濃い。


「抱きしめてもいい?」


今すぐ、どこかで行ってしまいそうなミチルを腕の中に閉じ込めたかった。

ミルクみたいな甘い匂い。
首元に回された手に噛み付いて、更に欲張りたくなってしまう。


「·····ひゃん·····ッ」


もう優しいだけではいられない。
ミチルを愛しているのだ。

首元へ噛みつき、赤くなった患部を舐めてやる。
驚いたように強ばった身体が、2回目には熱く震え出す。


「だ、だめ·····」


拒絶する言葉まで愛おしくて、かえってこちらを煽るだけだ。


「好き」


たちまち飛び出るしっぽは、撫でてやると小ぶりに振れる。言葉をかけてあげたら耳はピンと立って、恥ずかしそうに項垂れるのだ。
それがとても可愛い。


「ずっと、大好きだよ」

「·····ッ」


今日からは、毎日想いを告げて、こうして触れようと思う。
ミチルが自分のことを好きになってくれるように。











「·····ひゃん·····ッ」


思わず裏返った声を落とす。
首筋にちくりと痛みを感じた。


「·····へ·····?·····ぁ、」


痛みは近辺へ広がり、そして甘い後味を残してゆく。


「だ、だめ·····」


それよりも甘い声が、繰り返し好意を告げる。

せっかく着たスカートの中にも腕が忍び込まれる。
これ以上は拒絶しなければ。弾くようにして彼から離れ、出口へ逃げる。

ノブに触れると同時に扉が開き、目の前に人影が立ちはだかった。


「うお」

「へぷっ」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

5人の幼馴染と俺

まいど
BL
目を覚ますと軟禁されていた。5人のヤンデレに囲われる平凡の話。一番病んでいるのは誰なのか。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...