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121.玩具
しおりを挟む「だめ、助けて♡死んじゃ·····っ♡」
「────ああ」
否定とも肯定とも取れぬ返事に縋る。
ゴツゴツした肉の管が引き抜かれて、また限界を超えてめり込む。
骨盤が砕けそうだ。
「抱き殺すのも、悪くないかもな」
ローブを脱ぎ捨てた獣は冴えた瞳をしていた。
鋭い瞳がたまらない。絶頂に痙攣する身体を押さえつけられ、腟内に直接精液を吐き出される。
「あっ♡あ♡あ♡あん♡」
体を叩かれるリズムに合わせて甘声が漏れる。
揺すれば鳴く玩具みたいだ。
ミチルは夜通し愛された。
彼の瞳がこんな風に自分を見つめていたのは、いつからだっただろう。
監視するような視線は前から感じていた。
しかし今みたいに鋭くて焼けるような眼は、他を見る時とは違っていた。
翌日は昼過ぎまで身体を動かせなかった。
兎族は柔軟な身体と体力が取り柄だが、そんな特徴さえ台無しにするほどの暴力だ。
ベットから降りたら、未だに膝が震えていた。
「日にちを調整しますか?」
ジェロンに支えられて体制を保つ。
ミチルは首を振った。
この機会を見送ったら、次はもう無いかもしれない。
今日は必ず街へ出かけるのだ。
結構、メンタルはタフだ。
ハインツェが「よわ」と貶したので悪魔からしたら定かでないが、虐げられながらも生きてきた分しぶとい面がある。
「おみやげ買ってくる」
ミチルはふとジェロンに告げる。
普段世話を焼いてくれているお礼だ。
「なにが好き?」
ダリアから貰ったお小遣いがあるからそれで賄える。
大きい桁の紙幣ではなく、ちゃんと覚えたての硬貨を渡してくれたからありがたい。ミチルからしたらかなり多い金額だが、相手の反応がまるで子供にお菓子を買わせる時のそれだったので、受け取らない訳にもいかなかった。
故に今の自分はちょっとした富豪だ。
「なんでもいいよ」と得意げに言ったミチルは知らない。
皇族に使える上級使用人の更に上層である役職。其処に位置するジェロンが、悪魔界でも指折りの格式高い家紋出身だということを。
「なんでも?」
ポーカーフェイスが聞き返す。
そこだけ繰り返されると身構えてしまう。
「あ、あんまり高いのは、だめ」
慌てて付け加える。
「では結構です」
青い瞳が逸らされた。
釣れない態度をされると気になるではないか。
ミチルはジェロンの服裾を引っ張った。
ティーポットの角度まで怠らない、機械みたいな男だ。おもむろにこちらを振り返った図体に、教えてと駄々をこねる。
「責任の取れない発言は慎むべきです」
もはや教育係だ。
「取るもん」
ムキになって口答えする。
「そうですか?」と、意外そうな声音が馬鹿にしているように感じるのは気のせいだろうか?
ただ、いつも世話になっているから、ちょっとお返しをしたいと思っただけだ。
叱られるなんて悔しい。
「おに」
「鬼ではなく悪魔ですが」
「·····っ」
もういいや。
正午過ぎに迎えに来ると言っていたヨハネスを待つべく、ソファに寝転がる。
ふと視界に影が落ちた。
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