111 / 798
一章
94.恐ろしい大悪魔
しおりを挟む「そーそー、俺にだけ濡らして·····コッチの方が、自分が誰の専用穴か分かってんじゃねえの?」
彼は言い聞かせながら指だけを動かし続けた。
酷く下品な発言だ。それなのに、心做しか、構えていたよりも甘い声音だ。
グチュグチュと濡れた濁音が漏れ出す。
こちらに向かって屈んできた大きな体躯から、サボンの香りがする。
ひくりと孔が疼いた。
「ぁん·····ッ♡」
(なんか、へん)
下半身から聞こえてくる粘っこい水音と、血管の浮きでた丈夫な腕。
こんなにしつこく愛撫されるのは嫌だ。いつもみたいに熱を押し込んで無理やりされないと、どうしたらいいのか分からない。
従った方が楽。
本当にそれだけだろうか?
「チルチル、俺の指気持ちいんだ」
人差し指も追加され、2本は互い違いにナカをぐちゃぐちゃかき混ぜる。
へその裏側が熱い。
「はしたないの、いっぱい出ちゃうね」
イキそうになるのを耐えて、限界まで眉を下げる。
激しい出し入れのせいで、付近の台には愛液が飛び散った。
「ひぁぁん·····ッ♡」
激しい波が切なさをとどろかせる。
内側から放たれた電流が身体を痙攣させる。尻はぬるい体液に浸っていた。
「よく出来ました」
ズルリと引き抜かれていった指先は長い舌が舐めとった。
臭いとか汚いと言いながら、なんでそれを舐めるんだ。
恥ずかしくて、ミチルはそっと下唇を噛んだ。
その後は彼の腕の上に座らされて厨房を出た。
"誰に泣かされた?"
"俺がそいつの鼻をへし折って、くり抜いた目を持ってきてやるよ"
美しい曲線を描く唇は、あの日恐ろしいことばかりを口にした。
自分の元から逃げようとすれば殺すと。絶望を感じ自害を試みれば不死身にさせられ、生涯嬲り飼いにしてやると宣言された。
呪いみたいな言葉だ。
それなのに、彼は時折、変な表情をする。
"俺のものになるって言えばいいんだよ"
自分を誰よりも痛めつけたのはハインツェだ。
そんな彼が、自分を虐めた相手を懲らしめるとか、願いを何でも叶えるとか言っていた。
(ハインツェは、なんで酷いことばかりするんだろう)
幾度となく考えた。
初めはただ遊んでいるだけだとわかった。
今だって変わらない。弱いものをいじめて支配したいのかもしれない。
"俺にすれば良かったのに"
あの日、彼はダリアに自分のモノを傷つけられた事が気に入らないみたいだった。
獣人の奴隷が欲しいのだろうか。
なら、顔にアザができているくらいで激昂したのはなぜ?
酷いことばかりされているのに、どうして彼のことを心配してしまったんだろう。
さっき彼らに触られた時は気持ち悪かったのに、なんでいまは嫌悪感がないんだろう。
これを告げたら、ハインツェはまた嘲笑うか、怒るだろうか?
それとも·····───。
「んで、俺がいない間、どんくらい輪姦されたの?」
薄暗い部屋の電気はつけないままベットへ下ろされる。
久しぶりのハインツェの寝室だった。
「ああやっぱいいや、こんなん聞いてもクソみてえな気分になるだけだし」
片手をヒラヒラ振りながら彼がシャワー室に消えてゆく。
相変わらず酷い言葉使いだが、今はそれよりも不可解な疑問が拡がっていた。
"こんな風に·····ベットに押し倒されて、喰われちゃう~って·····興奮してんだ?"
怖い思いをして耳が突出した初夜、彼は獣化現象をそう結論付けた。
獣化した自分の身体を触った他人はハインツェが初めてだ。
あの時は彼の言葉に唖然とし、さっきは欠損品という事実を再確認したら、怯える一方で、支配されることによろこびを感じている。酷いことをされるよりも、捨てられることの方が恐ろしいからだ。
独りよがりだ。
自分にとってハインツェは恐ろしい大悪魔で、彼が何を考えているかなんて二の次だった。
何故か今、ナイフのような言葉一つ一つを思い出す。
───嘘でもいい。
思い通りにならなければ気が済まない暴君が、嘘でもいいと妥協するほど手にしたいものが?
自信なさげに見えたのは気の所為に決まっている。
ハインツェは数分とせず寝室に戻ってきた。
「とっくに逃げ帰ったかと思った」
54
お気に入りに追加
2,279
あなたにおすすめの小説


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる