悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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一章

87.躾け

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「ンく、"ッ」


重たい熱に吐き気を催す。
嘔吐くと宥めるように耳を撫でられた。
耳やしっぽを舐められたり、噛まれたりされるのが性的な興奮を掻き立てることは、しつこいアヴェルやハインツェや、はたまたヨハネスのせいで調教済みだったのかもしれない。
しかし、想い人にはどんなに酷いことをされたって、少し優しくされたら幸福を感じてしまう。

ミチルは喉奥に彼を咥えこんだまま白濁を吐き出した。


「·····───はっ」


思わずこぼれたような笑い声が色っぽくて、腰から砕けてしまいそうだ。


(ダリアの·····)


涼し気な表情とは裏腹に、肉棒は鉛のように硬く熱い。
しまった喉から引き抜かれたそれが、再び寂しさを埋める。

恥じらっていたことこそが恥ずかしいほど、彼は性欲を吐き出すための穴としてこちらを扱う。
喉奥へ種を植え付けられるような感覚だ。


(こっちじゃなくて·····)


腹の中はどうしようもなく切なく疼いた。

長い鉄が引き抜かれていく間に軽く意識を飛ばす。
唾液に濡れた男根が宙に出されると、つられてだらけた舌はしばらく空気を舐めていた。


「·····ぁ·····っ♡」


そびえ勃った凶器に正気を取り戻す。
グロテスクで少し怖い。思わず彼に背を向け、四つん這いのまま床を進む。
震える身体は、まもなくとせず人影におおわれた。






  好きだとか、恋だとか、反吐が出るほど下らない。
卑しい獣人だ。雄を咥えられれば誰でも善いくせに、承認欲に飢えたミチルはそれを恋心と勘違いした。

気がつくまで上手く利用してやろうと思った。
しかしミチルはいつになっても焦がれるようにこちらを見つめては、自分の一挙一動に喜哀する。
ほかの男に抱かれてこいという指示にさえ、役に立てると分かれば喜んで従った。

誰にでもフェロモンを振りまく淫売。
分かっていながらも、自分だけに見せるいたいけで滑稽な姿を幾度となく目にする度、おぞましい感情に気付かされた。

ミチルは無知な上に弱く愚かだ。
甘い臭いで強者に媚び誑かす、下賎な生き物である。
したたかな奴隷を躾けてやろうと決めたのも、今思えば己の欲望が芽生えていたのかもしれない。

こんなに小さな生き物だ。
一時の感情などいずれなくなるだろうと端から見下していた。
ミチルは哀れなほど一途に想いを抱えていた。

躾けなければいけなかったのではない。
ただ自分だけに夢中になり支配されるミチルがたまらなく耽美でそそられた。

感覚を無くすほど痛めつけてやり、そのあとに甘く蕩けるような褒美をやるのを繰り返して、調教してやったならば。
誰のものにもならないように飼い殺して、一生閉じ込めてしまえばいいと思った。

パーティが始まったばかりの頃の今日も、例にもれず愉快な気分だった。
ミチルに芽生えていたのは強い支配欲と独占欲。
しかし、今夜はいつもと違っていた。



"───いつも、考えて·····"


ほかの男に抱かれる時さえ自分のことを考えて濡れ乱れている。
そう告げられた頃、いつしか、狂った歯車を制御できなくなっていた。

ミチルはこの自分のモノだ。

彼を手放したくないのだと確信した。
いやらしい姿にも、笑顔にも、悲しむ顔にさえ理性をかき乱される。

ミチルが少しでも拒絶する素振りを見せれば、いっそ狂ってしまいそうなほどの苛立ちに苛まれる。
今では少しのズレや不信感も許せない。


「また逃げるのかい?」


熱をもてあました身体が、ついに自分の元から逃げようとする。

尻からは恥虐され可愛がられるためだけに分泌される蜜を漏らし、甘い匂いを振りまきながら、必死に床を這う。
ルシフェルの手を取ったことによって、やっと愚かだったことに気づいたのだろうか?

───ルシフェルを選ぶのか?

何を置いても、譲られた地位以外にルシフェルに敵うものはない。
ミチルがその事実を理解して自分の元から離れていこうとしているならば、まずは細い両脚を切り落としてしまおうか。
彼が決して他を見ないように、永遠に鎖に繋げ閉じ込めてしまえば満足できるだろうか?

歯車は狂い、揺るぎない合理性は侵された。
全て手遅れだ。

───今更逃げようとしたって、決して離してやるものか。











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