悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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一章

86.証明

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「····ダリア、あの、······ごめんなさ······」

「謝罪は」


低い声が唸る。


「目を見て言うものだろう?」


顎先を持ち上げられたのにならって彼を見上げることになる。
やっぱり怒っているのだ。
確信すると頭は混乱し始める。
でも、と、ミチルは脳内で呟いた。


「·····エスコートをしてくれるって·····」


わがままであることはわかっていた。
それでも裏切られた気がしてとても辛かった。ダリアは自分がどれほど悲しくて切ない思いをしたか、分かっているのだろうか?


「さみしくて·····」


こんなことダリアには関係ない。
所詮独りよがりな思いだ。

込み上げた想いに収集がつかなくなって涙があふれる。
息をするのも苦しいほど頭が熱くなる。

それなのに、視線の先の彼は────そっと目を細めた。


(··········へ·····?)


月が傾くような、恍惚とした微笑みだ。


「つまり、お前はそんな幼稚な理由で、大事な催しを台無しにしようと?」


幼稚だと馬鹿にする声に、どこかあやしい響きを感じる。

今はそんなことに気を取られている場合じゃない。
どうせ怒られるなら、こっちだって言いたいことを言ってやる。


「そのくらい、悲しくて·········ひどい·····」


咄嗟に言い返してから後悔した。
これは自業自得だ。
彼を好きにならなければ辛い想いをせずにすんだ。


「ほう」


やはり惨めだ。
こうやって感情的になったってなんの力もない。
片思いに縋って喚き、泣き濡れることしか出来ない。
乱れた情緒を表すように獣耳が生え、途端情けなく萎れていった。



「獣人の情熱は随分独りよがりのようだ」


殴るなり叩くなり好きにすればいい。
もうどうなったって知るものか。

投げやりになって、今日は抱いてくれるかと思って期待していたなんていう情けない希望を捨てる。


「そうだな·····お前の愛が本物だとでも言うなら、証明してみせろ」


腕をつかまれ、乱暴にベットへ誘導される。


「手間を取らせなければ褒美をやろう」


ダリアは横暴な男だ。
当たり前のように、自分が与える側として命令をする。
悪魔界の頂点に立つ者であるのだから当たり前だろうが、とにかくそれに相応しい人物だった。
彼はそれ以上指示してこなかった。

ミチルはいつかと同じように服を脱いで、ベットへ片足をかけた。
恥ずかしくてたまらないのを耐え、彼からよく見えるように尻を突き上げる。
呆れるような笑みがこぼされた。


「はしたない身体だ」


そこは既に湿っていた。
一体何故だろうなと転がされる声に虐められながら、そこに指を忍ばせる。
遊ばれているのは分かっている。
しかし、見られていると思うと興奮してしまう。

指でもキツさはあるものの、肉襞はさっき解されたばかりで柔らかかった。


「·····───いや、そこは触るな」


ダリアが何かを思いついたように言う。
弱くひくつくツボから指を抜く。
その体制のまま他を慰めろと、彼は猶予もなく命じた。

ミチルは迷いながらも陰茎に手を伸ばした。
排尿の時にしか必要としないものだ。
握るだけで驚いて穴が縮小する。あまりにも使っていないせいなのか、それとも快楽に弱くなっているのかは分からなかった。


たどたどしい手つきに、普段ここを触らないことは一目瞭然であるはずだ。
自慰の時に余程後ろばかり慰めていたことを申告しているのと変わらない。
ミチルは涙をすすりながらそこを撫でた。

床に雫の垂れる気配がした。


「はぁ、·····ぁ·····♡·····ッ♡·····ミャ·····ッ」


もうイってしまいそうだ。
もしかして今日は、挿入れてくれないのだろうか?不安になりながらも大きな波を受け入れようとした時だった。


「ミチル」


久しぶりに呼ばれた名前に、耳は意図せずピンと立ち上がる。
カチャカチャと金属の擦れる音が聞こえた。

ベルトを片手にしならせたダリアが近づいてくる。
鞭代わりに打たれることを予想し床にしゃがみこむが、彼の目的はそれではなかった。


「口を開けろ」


ベルトはベットの上へ投げられた。
欲望よりも恥じらいが勝って、薄目で視界をぼかす。
ダリアの雄は既に固く昂って、熱気を孕んでいる。口内にじんわりと唾液が分泌された。

とても全ては呑み込めない雄が喉を突き破った。















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