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一章
32.ずっと
しおりを挟む「·····ぁ·····っ!」
一気にもう2本追加された指がナカを暴れ回る。
麻痺したみたいにとろけているのに、ヒクつきが止まらない。
ミチルは静かに絶頂した。
「ずっと、そばにいてね」
獣耳に囁かれた甘言を合図に、陰茎からも白濁が飛び出す。
身体中、骨が抜けたみたいにぐにゃぐにゃだ。
湿った両手に抱きしめられたまま呼吸を整える。
まぶたを閉じたら、心地よい眠りに導かれた。
夜中に目が覚めるのが大嫌いだった。
夜は長くて怖いから。真っ暗だから、余計に独りだと実感させられる。
今もそれは変わらない。
しかし眠る前の出来事を思い出すとそれどころではなかった。
「··········!」
勢いよくベットから起き上がる。
寒気はなくなって、体調も悪くない。
結局自分だけ気持ちよくなってしまったんだった。
(役立たず·····)
「──お身体が冷えます」
暗闇から声が聞こえてきた。
青く光る双眸はジェロンのものだ。
ミチルは胸をなでおろした。
びっくりした。
ベットのそばにきたジェロンが額に手を乗せ、熱が引いたのを確認する。
次いで、横になれと視線で訴えられた。
「·····今日の月は何色?」
彼に羽毛をかけ直されながら聞く。
「青です」
「見たい」
ミチルは懲りずにベットを飛び降りた。
ずっと横になっていたせいか、足元が少しおぼつかない。よろけながら窓辺による。
そこには青い世界が広がっていた。
美しいという言葉さえ拙く感じるほど、真っ青なそれだ。
「ジェロン、見て、見て」
「··········」
彼の瞳みたいに綺麗だ。
だから彼がこの月を見たら、もっと素敵かもしれない。
「ええ」
ジェロンからは、相変わらず興味なさげな相槌が返ってきた。
それからまる5日間部屋から出してもらえなかった。
ダリアの指示らしい。入室も硬く禁じられ、ジェロン以外が部屋に出入りすることは無かった。
その間、扉の前にやってきたアヴェルは「太れ」と叫び、一日何度かやってきたヨハネスは一方的に外であった出来事を話しては去っていった。自分は日記帳ではない。
ダリアは寝室で会ったのを最後に、姿すら見ていなかった。
「本日の授業はどうされますか?」
この質問への返答はふたつあってひとつのようなものだ。
YESなら外へ出してもらえる。NOと返せば監禁期間が伸びる。
ミチルは渋々前者を選んだ。
ハインツェからの命令も忘れず首輪を付ける。チリチリなるのが鬱陶しいけど、彼の怒りを買うよりは余程マシだ。
部屋を出ようとしたミチルはジェロンに引き止められた。
「棚の上から4つ目に避妊薬が常備されています」
"1度で1週間持つ。行為後に服用する場合24時間以内に飲むこと"
前に言いつけられたことを思い出す。
そろそろ飲んだ方がいい頃だ。棚から1瓶取り出すが、栓を開けるまえに思いとどまった。
あの行為を、率先して受け入れることと変わりないんじゃないか?
くだらないプライドだとすぐに理解したが、ジェロンがいる手前、自分から薬を飲むのを躊躇った。
いざという時に飲めばいいや。
ミチルはそれをポケットにしまった。
「おい!全然太ってねえじゃねえか!」
部屋に入るや否や、理不尽な叱咤を受けた。
褐色の腕がこっちを持ち上げ、空中で上下に揺する。吐き気を催した頃椅子の上に下ろされ、頬を抓られた。
「それどころか、前より肉、減ってんじゃねえか?」
声がでかいし、見開かれた瞳孔が鋭くて怖いのだ。隣に座ったアヴェルから逃げるようにして身体を傾ける。
椅子から落ちそうになった時、反対側に座った男に体当たりしてしまった。
「!」
「あ?」
船を漕いでいたハインツェだ。
長い腕が大袈裟に伸びをして、大きな欠伸を落とす。
2人目の悪魔が覚醒してしまった。
己の失態を猛烈に後悔するミチルだが、今日の彼はいつもとは少し違っていた。
「··········」
つり上がった目元が僅かに細められる。
彼がみているのはこちらの首元だ。
「·····?」
視線をおって自分の首元に手をやると、チリンと高い音が鳴った。
ハインツェが今度こそ嫌な笑みを浮かべる。
まさに悪魔のような笑顔だった。
「まぁ落ち着けよアヴェル、チルチルの体調が良くなっただけでも十分じゃん?」
そうだろとアヴェルに同調を促し、数日前脅してきた手が髪を梳く。
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