悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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一章

2.悪魔界の皇子達

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嫁がせるという名分で、悪魔界に生きた地球人を贈る。
悪魔界と人間界に数千年前から続く条約だ。

嫁いだ地球人は悪魔族の一員となり、人間界とは一切の関わりを切らなければいけない。
戻ることはもちろん、家族と会うことも禁止されている。

死のうが生きようが、どのような扱いをされようが構わない、要するにイケニエ。それに抜擢されたのがミチルだった。

イケニエは、半獣人・半魚人・人間3種族のそれぞれの王族の、更に15から17歳に妥当する者の中から選ばれる。
長男、次男である場合除外され、最終的に残った中で一番能力の劣る者が悪魔界に嫁ぐこととなるのだ。

ミチルはライオン獣人の皇帝とウサギ獣人の母から産まれた、14人目の皇子だった。

母親は病弱で、ミチルが5つの時に亡くなった。末の側室だった母の力は弱く、幼くして孤独を味わった。

ミチルは一族からうとまれていた。

ほかの皇子皇女がライオン獣人としての力を開花させる中、一向に素質が見つからない。
遅咲きで開花したのは、ウサギ獣人としての才能だけ。更にフェロモンの制御が思い通りに出来ず、感情が乱れるとすぐに尻尾と耳が出てきてしまう。


彼らはミチルの嫁入りをとても喜んだ。


"お前が役に立つ唯一の機会を与えてやる。"

"部族の恥がいなくなって、生け贄を差し出した名誉が手に入る。一石二鳥じゃないか。"


兄たちの言葉が蘇る。
殺されにいくようなものだ。彼らはそう言って笑った。
あるイケニエは皮を引き剥がされ、目玉をくり抜かれ、四肢をもがれ嬲り喰われたという。

とても怖くて、逃げ出したくてたまらない。

けれど、ずっと、あの場所から出られる日を望んでいた。
自由になれるかもしれないなんて、夢見ていたのだ。

























「お前達は馬鹿なのか?」


意識の戻った時、初めて聞こえてきたのは罵倒だった。
あまりにも聞きなれたそれにドキリとする。

が、


「美味しそうな花嫁ちゃんだよ?そんなん気になるっしょ」


もう1人の声が反論する。
どうやら自分のことではないらしい。

身を預けていたのは、ゴシック調の部屋の、広いベットの上だった。
下方の扉が少し空いている。
話し声は、隣の部屋から聞こえてきていた。

ミチルはそっと起き上がった。
ベットを抜け出し、抜き足差し足で扉の方へ向かう。

覗いた先には4人の男がいた。
皆身長が高く、身体もデカい。
ちょっとした巨人みたいだが、伝書に書かれていた通りだ。

しかし、少し·····否だいぶ違う。

"体長は2m近くあり、人の見た目をしているが、恐ろしく醜い化け物である"

悪魔界の住人に共通する特徴として、人間界で言い伝えられてきたものだ。


「毎回つまんねえ会議に出席してらんねーっつの」


さっきと同じ、ちゃらけた声が言う。
彼はラベンダー色の髪をかきあげながらわざとらしく宙を仰いだ。


「マジだりい」

「俺はこいつと違って、やることはやった」


口を挟んだのは暗い茶髪に褐色の肌の男だ。


「いやいや、講義で寝てたっしょ」

「あ?」


いがみ合う2人の横顔に、慌てて半歩引下がる。

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