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〈re〉17.

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「··········は··········?」


手の甲に生ぬるいものが滴った。


「閉じ込めて、俺だけが兄さんに触れて、言葉を交わして、俺を」


落ちてきた雫を追って、上をみあげる。


「俺だけを見てくれないと」


普段サラサラ光る髪が雨で濡れている。でもこっちを濡らしたのは、生まれたばかりのしずくだった。


「死ぬほど」


『死ぬほど───』


溢れてた零れる宝石を、夏樹は瞬きも忘れ見つめていた。
彼がそっとかがみ込む。
頬に触れる手は、火傷しそうなほど熱かった。


「··········僕、は··········」


唇が触れた。
吐く吐息は震えて、凍えているみたいだ。腕はこっちの腰を簡単に一周して引き寄せた。


「ん··········」


恋情よりも強く、家族よりも妖しい愛しさをなんと言うのか分からなかった。
恋愛的な思慕ではとても終わらせられない。ずっと大切に抱えていた罪悪感も想いも、自分だけではなかったんだ。


「愛してるよ、蓮」


夏樹は噛みそうになりながらキスを中断させた。
直ぐに言いたかった。あの時言われた言葉が、ちょうどストンと、当てはまった。


「死ぬほど愛してる·····」


繰り返しながら、唇の先が涙に濡れる。


「あの時、そう言ったんだ」



蓮を抱きしめ返す。
強く力を込めて体温を確かめる。早くなる鼓動が、こっちの鼓動とぴったりになる。


「嘘だ」

「嘘じゃ·····!」


今度こそ、見つめあった瞳から目が離せなくなる。
耳まで真っ赤だ。鼻も赤い。黒目の縁は緑色に滲んで、こっちだけを見ている。

喜び、恐怖、悔しさと切なさ、ほかの大勢の想いが入り交じって、格好もつかなくなった顔だ。
悲しそうな笑顔しか知らなかった。
始めてみる表情に、夏樹は耳まで熱くなる。


「兄さん、顔を見せて」


湿った手のひらが、俯いた首元を撫でた。

じっとしていると抱き上げられて、また唇を塞がれる。
今度はゆっくり、何かを確かめるように舐め取られる。
恥ずかしいけどじっとしていた。
彼が、まるでこっちを試すようにゆっくり服を脱がすから、逃げてはいけないと思ったのだ。


「·····あっ!」


畳に組み敷かれると、開いた足の間に彼が割り込んできた。
勃ち上がった熱が押し付けられる。
夏樹は首を振った。


「で·····電気、消して·····」




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