【完結】寡黙な宰相閣下の愛玩奴隷~主人に恋した奴隷少年の運命~

亜依流.@.@

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〖第四十四話〗

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「ん"♡はぁ····っ♡」


泣きそうな表情を見下ろしながら、ステファンは小さなカプセルを取り出し、ネロの口を開ける。


「そろそろ、飽きる頃だ」


口に入ったそれを無理やり飲み込ませられる。


「それでも·····」


彼の言葉に、ネロは朦朧とする意識の中呟いた。


「かまいません」


流れる涙は止まらない。
彼に暴淫を振るわれたせいなのか、はたまた、自分はイヴァンにとって、いつでも捨てることのできる玩具だと思い知らされたせいなのか。

ほほを伝う涙を抑えることは出来なかった。
先に視線をそらしたのは、ステファンだった。


「馬鹿馬鹿しい」


嫌悪のこもった台詞を吐き捨て、彼は部屋を出ていく。
遠ざかる意識の中、ネロの脳内に浮かんだのは、冷たいエメラルドの瞳だった。










「お帰りなさいませ、ステファン様」


午後5時頃、早朝から出かけたステファンが、屋敷に戻ってきた。

ステファンは真っ直ぐにイヴァンの書斎へ向かう。


「相変わらず美しい町だったよ」


イヴァンに告げながら、ステファンは手にしたワインボトルを少し持ち上げた。


「久しぶりにゆっくり飲まないか?」


イヴァンはそっとため息を着く。
今日一日の執務は、ずっと上の空だった。
全てネロのせいだ。


「ああ」


これ以上続けていても進みが悪い。
イヴァンは筆ペンを転がした。


「ここは書物だらけだね」


ステファンが笑う。


「俺の部屋に行こう」


2人は書斎を出て、ステファンの部屋へ向かった。
イヴァンはふとステファンの後ろ姿を眺めた。幼い頃と変わらず立派な男だが、妹をなくしてからは、どこか影を帯びるようになった背中だ。

あの時のことは、自分にはどうしようとできなかった。
そう分かりながらも、イヴァンはステファンへ罪悪感を抱えていた。


「·····なんだ?」


ステファンが呟く。


「どうした?」


イヴァンは彼の視線の先を追う。
部屋の扉が半開きになっていた。


「朝出ていった時は、確かに閉めたんだけどな」


セシルや召使いが勝手に賓客室へ入るわけがない。
ステファンの言葉をききながら、イヴァンの脳裏に、ふとひとりの少年が浮かび上がった。

まさかと、部屋の主人より先に部屋に入る。そしてベットの上に、人影を見つけた。

そこにはネロがいた。
素っ裸で寝転んでいる。片手はペンを握りしめ、そのペンが、3分の2以上尻の中に納まっていた。


「ネロ?」


なんてことだと、ステファンが呟く。


「ん·····っ」


小さな身体が、ムクリと起き上がった。そしてまたすぐにベットへ倒れ込む。

いじらしくてたまらなくて、そして、狂いそうなほど憎らしくて、いらだたしい光景だった。


「出ていけ」


イヴァンは、ネロに告げた。
こちらを振り返ったネロが、ハッと息を飲み込む。


「イヴァンさ·····」

「早く、出ていけ」


彼は壁に取り付けられたベルを荒々しげに鳴らす。しばらくとせずやってきた召使いに、ネロを元の部屋戻すよう告げる。ネロは否応なしにステファンの寝室を追い出された。

やはり裏切られたのだ。

想いあっているかもしれないなんて、ただの夢だった。
じっと前を見すえたまま、拳を握りしめる。
そんなイヴァンを、もう一人の男は心の内で嘲笑っていた。







外は大雨だった。
しとしとと降り注ぐ雫は、まるで天気がないているみたいに見える。
イヴァンとは、もう一週間近く会っていない。

その日の午後、久しぶりにセシルと使用人以外の人物が訪問した。


「君を売却したいみたいだよ」


やってきたのはステファンだった。
恐れていたことが現実になってしまった。
ネロは呆然として、俯いた。

売却された奴隷の行く末は、想像を絶する肉体労働施設だ。
恐ろしさと悲しみに、言葉を紡ぐことは出来なかった。


「俺と一緒においで」


「·····?」

「あんな無礼をされたとはいえ、ネロとは楽しい時間を過ごさせてもらったからね」


ステファンは、三日月のように微笑んだ。


「誰にも必要とされない君を、俺が買い取ってあげるよ」

























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