【完結】寡黙な宰相閣下の愛玩奴隷~主人に恋した奴隷少年の運命~

亜依流.@.@

文字の大きさ
17 / 57

〖第十七話〗

しおりを挟む





ネロはギュッと瞼を閉じた。

予想した惨事はやってこなかった。

恐る恐る目を開く。先程と変わらない景色のまま、身体は前のめりな格好で静止していた。


「わっ」


腹に圧力がかかる後ろに引き寄せられ、バランスを崩した身体は、何者かに支えられた。


「お怪我はありませんか?」


すぐ後ろで、柔らかい声が聞こえた。
勢いよく振り返る。

ネロは、一瞬呼吸を忘れた。

視線が絡み合ったのは、透き通った湖のような瞳だ。少し見開かれた瞳孔は、知的なブラックブルーをしている。

ミルクティー色の髪が風になびく。背の高い身体は、白のコートがとてもよく似合っていた。

おとぎ話の王子様のような男だ。
ネロは瞬きを忘れ固まっていた。

切れ長の目が、柵の向こうの白花を見やる。

男は、あの花は危ないよ、と、囁いた。


「小さな棘が沢山ありますから」


彼の視線を辿り、花を眺める。

真っ白な花はまるで無害そうにひっそりと、美しく咲いている。


「あんなに綺麗なのに」



ネロの手をとっていた青年の指が、するりと動く。ネロははっとして相手を見上げた。


「時に棘のない純白は、罪に値します」


彼はネロの前で跪く。
手の甲に、触れるだけのキスを落とされた。

ネロは呆気に取られてから、手を引っ込めた。


「だれ?」


気後れしそうなほど美しい男だ。屋敷の中で初めて見る顔だった。

上品な口元が弧を描く。


「シェルスピア国第二王子、ステファン・クルーダ=シェルスピアです。…以後お見知りおきを、麗しいプリンセス」


数泊置いてから、ネロはぎょっとした。


王子のようだとは思ったが、まさか本物の王子様だったとは。


(王子様が、何でここに?)


「良ければあなたの名前を····───」


「·····ネロ?」


低い声がネロの名を呼んだ。

アーチの向こうに、朝ぶりのイヴァンがいた。

ネロは、思い出したように手の平を見下ろす。

深紅の薔薇はしっかりと握りしめられていた。ネロはステファンの存在を忘れ、イヴァンに駆け寄った。


「お前、ここで何を···」


「イヴァン様!これ、」


弾んだ息を繰り返しつつ、薔薇を差し出す。


「これ、あの····凄く綺麗だから、イヴァン様にと思って····」


ネロはあることに気がつく。

冷静になって考えてみれば、そもそもこの庭はイヴァンの物だ。

ならばこの薔薇も見慣れているだろう。彼にとってはなんら珍しいものでは無い。


(むしろ、勝手に摘んできたことを、怒られるかも)

ネロの顔が青ざめる。

「逃げようとしたんじゃ無いのか?」


「·····?」




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...