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if【ジュリオEND】
【ジュリオEND】3.
しおりを挟む泣いたらダメだ。席を立ち上がると、教卓の方に、灰色の髪が揺れた。
ロイだ。
他教室からやってきた彼は、教授と何か話し、書類を受け取る。
鋭利な視線が、ふとこちらへ流れた。
「!」
千秋は視線をそらし、後ろの扉から教室を後にする。
廊下を数歩進んだところで、後ろから手を掴まれた。
「へっ·····?」
振り返るとロイがいた。
彼は無言で千秋の手を引き、歩き出す。
「ろ、ロイ·····?」
名前を呼ぶが、彼は振り返ってはくれなかった。
ユランの元を離れて以来、ロイとは1度も口を聞いていない。
レオンによると、彼は儀式の件で、実家に帰省している為、1ヶ月近く学園を離れていたらしい。
決して避けていた訳では無いが、久々の再会だ。
千秋は多少の不安を持ちながらも彼に着いて行った。
全てを犠牲にして救ってくれた理由。
ユランからジュリオに引き渡された自分ををどう思っているか、この1ヶ月何をしていたのかも気になる。
通り過ぎてゆく生徒達は、時折ロイに挨拶をしてゆく。陰に隠れた千秋には気づかないようだった。
涙は乾いていた。
ロイは人気の無い踊り場まで来て、ふと立ち止まった。
「落ち着きましたか?」
泣きそうになっていたのがバレたらしい。
「ごめん、俺、あの·····」
語尾は尻すぼみに消えていく。
聞きたい事は沢山あったのだが、彼のプライベートへ土足で上がる行為のような気がして、言葉にはならなかった。
「お元気そうで何よりです」
一ヶ月前と変わらない、落ち着いた声が返ってくる。
千秋はあっけに取られてから、俯いた。
なぜ何も聞いてこないのだろう。
灰色の瞳が何かを考えるように伏せられる。
そして彼は来た道を引き返しはじめる。
千秋は思わず、腕を掴み、引き止めた。
「何か?」
相手は辛うじて半歩振り返っただけだった。
他人行儀な態度だ。
確かに壁を作られた。
彼にとってユランの物でなくなった自分は、不要な存在なのだ。
「俺のこと嫌いなの?」
袖を握る手に力を込める。
「離れてかないで···」
ロイにとってはお荷物でも、自分にとって彼は、大切な存在だった。
関わる必要が無いから見放されてしまうなんて、あまりにも寂しい。
「そんなの嫌····」
一方、泣き出しそうな千秋の声に、 ロイは大きなため息を漏らした。
「·····馬鹿なのか?」
思わずつぶやいた単語に、目の前の千秋はきょとんと首を傾げる。
アホズラだ。
───千秋の世話をただの仕事の内だと思っていたら、わざわざ儀式を邪魔したり、手を引いて歩いたりはしなかった。
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