ゴドウィン校のヴァンパイア達~望まぬ転生~

亜依流.@.@

文字の大きさ
32 / 141

【32話】ご機嫌

しおりを挟む








──────────────



薬草学の授業中、終始にこにこしする千秋は、いつになくご機嫌だ。
ジュリオは隣の彼を眺めながら、ふっとため息をついた。

どうやら昨日は、ユランに酷く虐められることは無かったようだ。
ずっと心配していた。


「ご機嫌だね」

「うん!実はね·····」


逃亡について話そうとした千秋は、はたと思い留まった。
ジュリオにはぜひ話したいが、そしたら思わぬ所で彼を巻き込んでしまうかもしれない。
浮かび上がった可能性に言葉を飲み込み、千秋はやっぱりなんでもないと首を振った。


「そういえば」


ジュリオが、持っていた教科書の中から数冊を手渡してくる。

「届いてた教科書、近いうちに使いそうなものだけ」


今から使う薬草学の教科書を1番上にし、ジュリオは更にページまで開いてくれた。気の利く対応に感動しながら、ありがとうと礼を言う。



   そんな2人の様子を、少し離れた席から眺めてる者がいた。

何やら嬉しそうにジュリオへ話しかけている千秋に、ユランは眉をひそめる。
今朝は自分を見るや否やそそくさと逃げたくせに、他の奴には笑顔で接している。
それもよりによって、穢れた奇種ヴァンパイアにだ。
気に入らない。

授業が終わると、ユランは廊下へ出た千秋を呼び止めた。

立ち止まった千秋がおずおずとこちらを見上げる。
それがジュリオといた時の楽しそうな様子とは対照的で、更に苛立ちが募る。
千秋は自分に酷く脅えているようだった。
初めの頃はその様子が面白おかしかった筈なのに、今は何故か、とても気分が悪い。


「吸わせろよ」

「でも·····」


言いながら、冷たい指が首に伸びてくる。
初めからこちらの返答など必要としていないようだが、吸血には限界がある。
ただでさえ身体がだるいのに、これ以上血を抜かれたら死んでしまうかもしれない。
命の危険さえ感じて、千秋は咄嗟に声を上げた。


「そうだ·····く、口からじゃダメですか?」

「は?」


ウィルにキスされた頃、唾液だけで活力が上がると言われたことを思い出す。

吸血には劣るとしても、唾液のみで十分にエネルギーが摂取できることはユランも知っているはずだ。
とっさのアイディアを口にしてから、千秋は提案したそれがキスと同じ行為であることに気が付く。


「あ、えっと、変な意味じゃなくて···」

「·····」

 ユランは何も言わない。
千秋はとうとう俯いた。
だからこの時千秋は、ユランがどんな表情をしていたか確かめることは出来なかった。
頭上で彼がふっと笑みを零す気配がした。

おかしな動悸に、ぎゅっと瞼を閉じる。
ユランがもし自分の提案を飲むというのなら、この唇は彼に塞がれる。
思い浮かべただけで、頬に熱が集まった。


「家畜なんかとキスできるかよ」


心底軽蔑するような笑みで、彼はそう言い放った。
1秒後、言葉の意味を理解した千秋は、心が凍りつくような気分に戸惑った。
彼の罵りや、酷い扱いには慣れたつもりでいた。

返答を待たず、首筋に牙が突き立てられる。
みぞおちの当たりが、破られた皮よりもキリキリと痛む。
千秋はそこに拳を押し付けた。
そうしなければ自力で立っていられなくなりそうな程、何故か胸の奥が痛んだ。

程なくして、牙はあっさりと離された。





しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

処理中です...