転生先は、暴君のせいで滅亡(予定)の帝国だった。

亜依流.@.@

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3.光と剣

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エボイが最も危惧しているのは、アリステアがアリストでないと気づかれること。
しかし二人は社交界に参加したことがない。生まれてから今まで、ほかの貴族との交流も無い。


「入団を拒否することは許されません。伯爵家はただでは済まないでしょう」


父上は少し頼りなくて、かなりの心配症だ。

男の自分を、身体が弱いからといって部屋から出すのを渋るくらいだ。まるで蝶よ花よと育ててくれた彼の監視を盗み夜更かしをするのすら大変だった。しかしそんな日々も、すぎてしまえば美しい思い出だ。
いつの間にか、家族と伯爵家を愛するようになっていた。


「お父様、僕を見て」


彼の手を握り直す。
自分と同じ灰紫色の瞳は、大きく見開かれた。

兄へと届いた制服に身を通し、だらしない髪の毛もさっぱり切った。裾が長いのが難点だが、伸びしろがあるって思えばいいだろう。


「ああ、アリステア」


暖かい両手が、力いっぱい全身を抱きしめる。


「立派になったな」

「大袈裟だよ」


アリステアは兄アリストになりきることを決意した。
ホルスターの剣をなぞる。

とても久しぶりの手触りだった。








 








生まれた時、また転生したのだと、瞬時に悟った。

というのも、いままでの3つの前世を覚えているからだ。
一つ目はある国の少年スパイ。毒を吸い込み、幼い人生を終えた。
二つ目の人生は鼓舞剣闘士。これが最年長で、多分23年生きた末、歳をとると見栄えが悪くなるからと獣の檻に入れられ見せ物にされた。
三つ目の人生ではニホンの一般家庭に生まれ、父親がアクセルとブレーキを踏み間違えて事故るまでは幸せに生きていた。

4回目の出生とともに願った。
短命は嫌だ、老後を暮らしたいと。

今回の転生は少し特殊だった。
ここは過去に読んだ小説の世界だからだ。

そして「アリステア」も若くして死ぬ予定であることを知った。



『光の剣』



世界を蝕む闇のなんたるを、異能力者たちが管理し統治する国、ベルゴッド。
皇帝───現時点では皇太子のキリアンと一部の高位貴族が対立し、悲劇が起こる。
超能力と剣が混在する、在り来りなファンタジー小説だ。

母が読んでいた女性向けファンタジーだが、前世の自分はアクション作品が好きで、没頭して読んでいた。物語の内容を思い返しているうち、アリステアは何度目かもわからぬ後悔に襲われた。




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