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《217》聖剣
しおりを挟む「へっ?」
刃は、吸い込まれるようにして茨にくい込んだ。
手のひらに貫通した感触が伝わる。
岩のような茨が、少し傾いた。
「凄いぞ、ノワ」
呆然と剣を見下ろす。鼻から諦めてはいけないなんて言い聞かせながら、出来てしまったこともにわかには信じ難い。
しかしそうと分かれば切り倒すのみだ。ノワは繰り返し茨を切り付けた。
「ノワ、なんでそれを使えるか、分かる?」
レイゲルが周囲を確認しながら言う。
「分かりません。本当に不思議で·····」
「あはは。このニブチンめ」
よく分からないが、馬鹿にされているのは伝わる。ノワは不服に思いながらも、ひたすら茨を切り倒すのに集中した。
「はっ!」
あと少しだ。
ノワはとどめをの一撃を振り上げた。
狙いを定めた刃が、ついに茨を一本切り倒す。
やっと、ひと一人が通れるくらいの隙間ができた。
「レイゲル先輩!」
思わず綻んで背後を振り向いたノワは、すぐに表情を強ばらせた。
こちらに背を向けたレイゲルの肩口から、1人の男が姿を現した。
ガタイの大きな相手だ。
鎧に覆われた顔には、大きな傷跡がある。
「ウォルター先輩·····」
ロイドはうつろな視線でこちらを見据えていた。
「ノワ、先に行っててくれ」
レイゲルが言う。
「でも·····!」
ロイドは、二学年時で騎士団の試験に首席合格を果たすほどの実力者だ。
未来の近衛騎士団長候補でもある。
そしてレイゲルは、今まで1度たりとも、ロイドに勝てた試しが無い。
(無理だ)
今のロイドは正気じゃない。戦う相手が腹心のレイゲルだろうが、容赦なく命を狙いに来るだろう。
「援護しま·····」
「ノワ」
レイゲルがノワを呼ぶ。
有無を言わせぬような声に、ノワは口を噤んだ。
「君がいなければ、レイゲル・シェラック・ヴァーヴは、既に死んでいた」
彼が剣を引き抜く。
「君に恩を返せる時が来たようだ」
「·····!」
レイゲルが肩口から微笑む。
広い背中は、いつもよりも大人びて見えた。
「俺は必ず戻る。それまでほかの人たちを頼む」
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