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《104》おもしろい後輩
しおりを挟む年下は苦手だと。もっと言うのなら、人の面倒を見るのは大嫌いだ。
転生する前、自分には2人の弟と妹がいた。そして近所には両親と仲の良い夫妻の子供が3人、親戚に年下の男の子が5人いた。
彼らは無責任な上にやりたい放題で、かつてのノワ、否その中で一番の年長者春川は酷く苦労したものだ。
結果として年下の面倒を見るエキスパートの称号を得たが、あんな思いはもう二度としたくなかった。
目の前の新入生たちは皆十七の男児。幼い子供ではないし言うことを聞かないということもあるはずがないのだが、年下の男が沢山いるというこの状況が既に胃に悪い。
ロイドが、新入部員へ各自素振りの練習をするように告げる。
各々散ってゆく彼らを確認し、続いてノワを振り返った。
「それじゃあ、頼んだぞ」
今更後悔したって遅い。
新入生には適当だと思われない程度にアドバイスをして周り、あたりざわりなくこの時間を切り抜ければいいか。
「任せてください!」
なんて、適当な気持ちはお首にも出さない。
しかしロイドは、初めのころより仏頂面だ。
「ウォルター先輩?」
ロイドが、軽く後ろを振り返る。
直ぐにこちらへ向き直り、「話は変わるが」と前置きした。
「今日2年に、編部届けを出しに来た奴がいたんだが」
ノワは相槌を打ちながら闘技場を見渡す。
もしかして、その編部生のことも気にかけてやってくれということだろうか。
「デリック・コンラッド。知り合いか?」
「えっ」
例の編入生の名前だ。
知り合いと言うには遠いが、全く面識がない訳でもない。
「今日僕のクラスに編入してきたクラスメイトです。個人的に話したことは、1度も····」
「··········」
ロイドは眉を顰めた。
昼休みにロイドの元へやってきたデリックは、入部希望を申し出る前に剣練部にノワが在籍しているかどうかを確認していた。
返答を聞いてから、入部を決定したのだ。
「彼がどうかしましたか?」
「ロイド」
会話は、ロイドを呼びに来た副教官に遮られた。
「お?」
レイゲルは、ノワに気づくと親しげな笑みを向ける。
「この前の、おもしろい後輩くん」
頼むからあの時の出来事は忘れて欲しい。
ノワは心の中で泣きながら笑みを返した。
「そろそろ行こう」
レイゲルと共に歩き去ってゆくロイドを見送って、ノワは新入生たちの方に視線をやった。
「!」
素振りをしながらこちらを盗み見ていた生徒達が、慌てて前へ向き直る。
ロイドが臨時の監督生に任命したのは、有名な家紋でも無く3学年でもない、パトリックという2年生。
果たしてどんな人物なのか、新入部員達は皆興味津々なのだろう。
ところで、ロイドはなぜデリックと自分が知り合いかどうかを聞いたのだろうか。
(クラスメイトだからかな?)
理由を考えながら、ノワは1年生達の練習を観察した。
貴族の息子は、大凡が10歳前半から剣を習い始める。
既に基礎を極めている彼らの剣の振り方は、新入生といえど、歴とした経験者のものだった。
「うーん····」
ノワは八つの頃から剣術を習い始めた。
それも将来は死亡フラグばかりの悪役令息という運命の所為で、特に必死に鍛錬に打ち込んだものだ。
そして、リダルが盗賊団から自分を救ってくれたあの日以降は、特に剣の上達に勤しんだ。
理由はただ1つ。
奴隷商のアジトに捕まった時、自分はリダルの足でまといでしか無かったからだ。
他人どころか自分を守る力も無い自分を変えたかった。
新入生たちを見ていると、無駄な力みやブレが目立っている事がわかる。
こうして分析できるようになったということは、ここ数ヶ月の練習がいくらか功を奏したのかもしれない。
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