【完結】悪役令息に転生した社畜は物語を変えたい。

亜依流.@.@

文字の大きさ
4 / 342

《3》義弟

しおりを挟む








「えーっと·····アレク!」


「え?」


彼の愛称を咄嗟に叫ぶ。
ノワは彼をじっと見つめた。
昨夜、鏡の前で抜かりなくチェックした最強に可愛い上目遣いだ。


「僕、弟ができたのが嬉しくてはしゃぎすぎたみたい。アレク、嫌なことがあったら我慢しないでちゃんと言ってね?嫌われたくないから·····」


向かいに座ったアレクシスの方へ身を乗り出す。
くらえといわんばかりに計算し尽くしたその視線に、彼は驚いたように目を見開いているだけだった。


「弟?」


はたして彼が声に出したのは、承諾の返事ではなかった。


「うん!僕の家族になってくれる?」


こうなればもう強引に既成事実兄弟関係を認めさせてしまおう。いくら彼の設定が主人公だけを愛する冷血漢でも、ノワと家族だという自覚があれば、死刑は逃れられるかもしれない。


「家族·····」


まるで覚えたての単語を口にするようなアレクシスに、ノワはにっこりと微笑んでみせた。
驚いた表情がぷいと俯かれて、少年の顔が見えなくなる。

心配せずとも、こんなに可愛らしい弟をいじめることなど、自分にはできない。


「だから、仲良くしてね、アレク」


アレクシスはノワと目が合うと、また俯いてしまった。

















~7年後~








「·····──さん、·····いさん·····」


どこからが聞こえる声に、ううんと欠伸を返す。
落ち着く声だ。昨日は興奮のせいでなかなか寝付けなかった。

今はとても穏やかな気分だ。


「兄さん起きてください」


先程より近くで聞こえた声は、右耳から左耳へと通り過ぎてゆく。

そういえば、なぜ興奮していたんだっけ。
まるで遠足前夜の小学生のような気分で───。


「·····ノワ」


「入学イベント!!」


そうだ。

全てを思い出して、飛び起きる。額が硬いものに激突した。


「いっっっ·····」


ベッドにうずくまる。
おかげで眠気が吹き飛ばされた。


「ア、アレク·····」


ベッドの前に、アレクシスが立っていた。

艶やかな銀髪は前髪の辺りのみ乱れている。
激突したのは彼の額だったようだ。

ノワを見下ろした美少年はうんざりしたようなため息をついた。


「う、うわあ、起こしに来てくれたの?嬉しいなぁ·····」


「はあ。父様に頼まれたので仕方なく」


取り付く島もない。
いつにも増して、手こずらせたようだ。


「僕の可愛い弟よ、怒ってるの~?」


ご機嫌をとるように軽口を言い、てへへと笑ってみる。

元から冷たい印象を与える目元が更に凍てつく。
最早兄を見る眼差しではない。背筋を冷気が走っていった。
ノワは笑みを張りつけたまま身震いした。

アレクシスとの出会いから、早7年。今年16になったアレクシスは、既に驚く程の美青年に成長を遂げていた。

細身でありながら鍛え上げられた身体に、精悍な顔つき。初めの頃こそ変わらなかった身長は、年下の彼を優勢にどんどん引き離されてしまった。

やはりこの体は、生まれつき身体の発達が芳しくないようだった。


「何ですか」

「別に…」

「じゃ、早く準備した方が良いのでは?」


アレクシスは訝しげな顔をした。

成長の差に若干のジェラシーを感じつつ、ベッドから起き上がる。

準備をすればいいんでしょう、準備をすれば。
不貞腐れながら、ノワはガウンを脱ぎ捨てた。


「·····は?」


感情の読み取りにくい声が一文字こぼれる。
ノワは声の主を振り返った。


「なに?」

「なにって·····」


聞き返すが、彼はノワと目が合うと、首ごと視線を逸らす。


「アレク?」


今度はどうしたのだろう。
ノワは首をかしげた。


「来ないでください」


近づこうとすると、容赦なく拒絶された。
酷い。


「なぜ下着を·····」


着ていないんですか、と、無感情な声が問う。


「?いつも着てないし、シャワー浴びるからだけど·····なんで?」

「そうではなく」


アレクシスは挙動不審だった。
彼は「信じられない」と吐き捨て、逃げるように部屋を出ていってしまった。


「?」


何が問題なのかさっぱり分からない。思春期だろうか?風呂には、既に湯が張られていた。

今日は学園の入学式だ。
17になったノワは、ほかの貴族と同じように寮に入れられ、3年間の寮生活を送る。

死亡フラグを折る作戦は、いよいよスタートを切る。
必ず生き延びて、第2の人生を満喫してみせるのだ。


(あわよくば、最推しキャラのフィアン様を····)


ニタニタしながら支度を終える。
門の外には、召使いとメイドが1列に並んでいた。


「行ってらっしゃいませ、お坊ちゃま」


彼らはノワが姿を現すと一斉に頭を垂れる。
馬車の前には、両親とアレクシスが出迎えに来ていた。

父、母と抱き合い、残るアレクシスに向かって腕を広げる。


「お元気で」


アレクシスの挨拶は酷く他人行儀だった。
ノワは対抗するように、体格の大きい弟を抱きしめた。


「ちょっ·····」

「アレク!僕がいない間寂しいと思うけど、僕達は、心で!繋がってるからね!」


彼には愛情を注いできたが、反応はいつでもイマイチだった。

嫌われているということはないだろう。
しかし主人公を愛した時、アレクシスが、場合によってはノワを手にかけない自信は無い。

アレクシスよ、僕達は同じ血の流れる兄弟なんだぞ、いい子だから殺さないで──そう言いたいのをぐっと我慢する。

きつく抱きしめる。傍から見ればノワがしがみついているようにしか見えない体格差だ。


「…心でなんか」


頭上から、くぐもった声が聞こえる。


「?なんて?」



聞き返すが、彼はいいえと首を振っただけだった。




しおりを挟む
感想 168

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...