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クリスマスデート 案内
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バスに揺られることおよそ1時間半、高速に乗っているのもあったけれどようやく車内から解放される。 ずっと座りっぱなしだったのがキツかったのか、僕は背伸びをした後に腰に手を当ててしまった。
「大丈夫ですか?」
「なーんかバスみたいなものに乗ると腰を痛めるんだよねぇ。 乗り慣れてないせいかな?」
「そんなお年寄りみたいな事を言わないでくださいよ。 せっかくのクリスマスなんですから。」
そうは痛いものは痛いのだ。 分かって欲しい。
そんな愚痴も交えながら目的地には着いていた。 「ランド・オブ・スウェーデン」。 この施設のコンセプトはなんと言ってもスウェーデンの街並みをモチーフにした建物やお店が並んでいるところであり、また風景や従業員にまでスウェーデンの雰囲気を出させて、意識がとても高い。
「そういえば・・・」
僕はあることに気が付き、今入館料を払っている人達と、僕らよりも後ろにいる人達をみて思ったことを口にする。
「若いカップルが多いよね。 クリスマスだから?」
「そうですね。 やっぱり人気のスポットですからね。 こう言った時期には多いのではないですか?」
安見さんは少々ぶっきらぼうな返事をしてきた。 うーん、話題としてはあまりよろしく無かったようだ。 相変わらず僕の脳内の言葉の引き出しは少ないようで。
「でも・・・」
なにかを言おうとしている安見さんに目を向けると、頬を少し赤く染めて、
「私達もそのカップルなんですけどね。」
ちょっとだけ、本当にちょっとだけだらしないニヤケ顔の安見さんがそこにはいた。 冷静さを保とうとしているが、嬉しそうには変わり無いので、僕も釣られてニヤケてしまった。
そんなやり取りをしているうちに「ランド・オブ・スウェーデン」の入り口まで来ていた。
「すみません。 これで二人分お願いします。」
父さんからもらった入場券を入り口の人に渡して、確認をしてもらう。
「はい。 確認いたしました。 では半券の方はお返し致します。 それでは当施設の説明をさせていただきます。 当施設は遠き北の国、スウェーデンをモチーフにした建造物、景色、食事をご用意させていただいております。 また、冬季限定で行われておりますイベントも開催中となっております。 ぜひ参加のご検討、よろしくお願い致します。 それてはランド・オブ・スウェーデンの施設をご堪能していってください。」
そういって受付の人は頭を下げた。 そして入場ゲートを抜ければ、眼前に広がるのはスウェーデンの街並みだった。 忠実に再現しているからだろうか、行ったことの無いはずの本物のスウェーデンを間近で堪能している。 それを今、僕は安見さんと共有している。 それがなによりの感動だった。
「光輝君。 上を見てください。」
安見さんの言われたように上を向くと、そこから雪が降ってきた。 まさしく今日はホワイトクリスマスの始まりに相応しい舞台となっていた。
「そういえば今行われているイベントってなんなんだろうね?」
せっかく来たのに、ただ見て回るだけでは面白味が全く無い。 ここで行われているイベントに参加してこそ、こういった場所に来た醍醐味でもある気がする。 そんなわけで総合受付にて説明を受けようと思った。
「すみません、今開催中のイベントについて知りたいのですが。」
そう受付の人に聞いてみた。
「はい。 ただいま開催中のイベントは「怪盗紳士 フィリップ・コリンの可憐なる窃盗」になりますね。 ご参加をなさりますなら、お一人様1200円の参加費をいただいております。」
「これで今日は来たのですが。」
そういって先程返してもらった半券を僕も安見さんも見せる。
「畏まりました。 イベント参加費込みの入場券でのご入館でしたので、このままパンフレットをお渡し致します。」
そういって受付の人は僕らにパンフレットをくれた。 表紙には怪盗紳士らしくタキシードにシルクハット、目の部分のみのマスクにアゴヒゲといかにもらしい格好をした男性の絵が書かれていた。
「そちらに描かれておりますのが怪盗紳士 フィリップ・コリンとなります。 フィリップ・コリンは北欧におけるシャーロック・ホームズのライバルのような存在として探偵小説が書かれています。 怪盗紳士と言っておりますが、必ずしも悪いことをする人物ではなく、むしろ探偵として描かれています。 そんなフィリップ・コリンですが、今回の事件である女性と協力をして、事件の真相を迫っていくというシナリオで構成されております。 詳しい内容や場所につきましてはパンフレット内に書かれていますので、そちらをお読み下さい。」
そう言われてパンフレットを読んでみると、場所の案内も含めて、目的地が書かれていた。 最初はそこに向かってくれと言う意味だろう。
「それではお楽しみ下さい。」
そう言って頭を下げる。 そして僕らはパンフレットを持ちながら場所を確認する。 最初に行く場所も決まったので、そのまま行こうかと思ったが、遠いようなので、園内バスで向かう事にした。
「安見さん行こう。」
「はい。」
こうして僕達のクリスマスデートが始まったのだった
「大丈夫ですか?」
「なーんかバスみたいなものに乗ると腰を痛めるんだよねぇ。 乗り慣れてないせいかな?」
「そんなお年寄りみたいな事を言わないでくださいよ。 せっかくのクリスマスなんですから。」
そうは痛いものは痛いのだ。 分かって欲しい。
そんな愚痴も交えながら目的地には着いていた。 「ランド・オブ・スウェーデン」。 この施設のコンセプトはなんと言ってもスウェーデンの街並みをモチーフにした建物やお店が並んでいるところであり、また風景や従業員にまでスウェーデンの雰囲気を出させて、意識がとても高い。
「そういえば・・・」
僕はあることに気が付き、今入館料を払っている人達と、僕らよりも後ろにいる人達をみて思ったことを口にする。
「若いカップルが多いよね。 クリスマスだから?」
「そうですね。 やっぱり人気のスポットですからね。 こう言った時期には多いのではないですか?」
安見さんは少々ぶっきらぼうな返事をしてきた。 うーん、話題としてはあまりよろしく無かったようだ。 相変わらず僕の脳内の言葉の引き出しは少ないようで。
「でも・・・」
なにかを言おうとしている安見さんに目を向けると、頬を少し赤く染めて、
「私達もそのカップルなんですけどね。」
ちょっとだけ、本当にちょっとだけだらしないニヤケ顔の安見さんがそこにはいた。 冷静さを保とうとしているが、嬉しそうには変わり無いので、僕も釣られてニヤケてしまった。
そんなやり取りをしているうちに「ランド・オブ・スウェーデン」の入り口まで来ていた。
「すみません。 これで二人分お願いします。」
父さんからもらった入場券を入り口の人に渡して、確認をしてもらう。
「はい。 確認いたしました。 では半券の方はお返し致します。 それでは当施設の説明をさせていただきます。 当施設は遠き北の国、スウェーデンをモチーフにした建造物、景色、食事をご用意させていただいております。 また、冬季限定で行われておりますイベントも開催中となっております。 ぜひ参加のご検討、よろしくお願い致します。 それてはランド・オブ・スウェーデンの施設をご堪能していってください。」
そういって受付の人は頭を下げた。 そして入場ゲートを抜ければ、眼前に広がるのはスウェーデンの街並みだった。 忠実に再現しているからだろうか、行ったことの無いはずの本物のスウェーデンを間近で堪能している。 それを今、僕は安見さんと共有している。 それがなによりの感動だった。
「光輝君。 上を見てください。」
安見さんの言われたように上を向くと、そこから雪が降ってきた。 まさしく今日はホワイトクリスマスの始まりに相応しい舞台となっていた。
「そういえば今行われているイベントってなんなんだろうね?」
せっかく来たのに、ただ見て回るだけでは面白味が全く無い。 ここで行われているイベントに参加してこそ、こういった場所に来た醍醐味でもある気がする。 そんなわけで総合受付にて説明を受けようと思った。
「すみません、今開催中のイベントについて知りたいのですが。」
そう受付の人に聞いてみた。
「はい。 ただいま開催中のイベントは「怪盗紳士 フィリップ・コリンの可憐なる窃盗」になりますね。 ご参加をなさりますなら、お一人様1200円の参加費をいただいております。」
「これで今日は来たのですが。」
そういって先程返してもらった半券を僕も安見さんも見せる。
「畏まりました。 イベント参加費込みの入場券でのご入館でしたので、このままパンフレットをお渡し致します。」
そういって受付の人は僕らにパンフレットをくれた。 表紙には怪盗紳士らしくタキシードにシルクハット、目の部分のみのマスクにアゴヒゲといかにもらしい格好をした男性の絵が書かれていた。
「そちらに描かれておりますのが怪盗紳士 フィリップ・コリンとなります。 フィリップ・コリンは北欧におけるシャーロック・ホームズのライバルのような存在として探偵小説が書かれています。 怪盗紳士と言っておりますが、必ずしも悪いことをする人物ではなく、むしろ探偵として描かれています。 そんなフィリップ・コリンですが、今回の事件である女性と協力をして、事件の真相を迫っていくというシナリオで構成されております。 詳しい内容や場所につきましてはパンフレット内に書かれていますので、そちらをお読み下さい。」
そう言われてパンフレットを読んでみると、場所の案内も含めて、目的地が書かれていた。 最初はそこに向かってくれと言う意味だろう。
「それではお楽しみ下さい。」
そう言って頭を下げる。 そして僕らはパンフレットを持ちながら場所を確認する。 最初に行く場所も決まったので、そのまま行こうかと思ったが、遠いようなので、園内バスで向かう事にした。
「安見さん行こう。」
「はい。」
こうして僕達のクリスマスデートが始まったのだった
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