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これもカップルの証
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あれから色々とあって夕方にまでなってしまった。 楽しい時間はあっという間というが、まさにそれを実感している。
「そろそろ帰らないと心配されるかな。」
「そうですね。 私達、連絡もなしに出ているようなものですので、あまり遅くなるのも良くないですよね。」
「高校生なんだしあんまり気にして・・・いや、そんなことはないか。」
僕の両親にならと思ったが親は親、心配しない方がむしろおかしいというものだと自己解決して、最後に向かおうと2人で決めた場所に行く事にした。
「ふーむ、どのようなものが良いか迷ってしまいますね。」
「どんなものでも基本的には変わらないんじゃ?」
「光輝君。 こういったところで妥協を許してしまうと、この先も似たようなことになったときに、中途半端になってしまって後悔することになるのですよ?」
「あーうん。 そこまで真剣だったのに水を指してごめん。」
安見さんに怒られて素直に謝った。 僕らがいるのはごく普通の雑貨屋だ。 ここでの目的は僕らのお揃いの物が欲しくなったというものだ。 前に僕の手作りで僕と色違いのお弁当袋を作ってあげたことがあったが、それとは別になるべく身に付けるもので探そうと安見さんが提案したのだ。
ちなみに僕はキーホルダーとかの方がいいのでは?と言ったのだが安見さん曰く「こう言ったものは直ぐに失くすようなものの方が断然いいんです。」と言われて却下をされてしまった。
「一応カップル用でなにかないか検索してみたんだけど、やっぱりペアリングとかペアピアスとかみたいなのがいいって書いてあった。」
「ペアリング辺りならいいかなとは思いましたが、常に付けるのは少々荷が重い気がするのですよ。 私達はまだ高校生ですので。」
安見さんの基準が良くわかんないや。 僕もなにかいいのがないかと探してみる。 雑貨屋なので、それなりの品揃えで、色んな物が売っている。 ペンにイヤホン、帽子なんかもあるのでどれを取っても良いのだろうけれど、常に身に付けるとなると、校則の範囲内でなければならない。 実際に僕が今付けているチョーカーは校則には引っ掛からない。
なのでこの程度ならという感じに見ているのだが、なかなか良いのが見つからない。 このままではなにも渡せずに終わってしまう気がする。 さすがにそれは良くないだろうとあちらこちらを探してみると・・・
「・・・あ、これならいいんじゃないかな?」
それを2つ分手に取って、会計に向かうのだった。
「おや、見かけないと思ったら、もう外に出ていたのですね。」
ようやく雑貨屋から出てきた安見さんと合流を果たして、近くのショッピングモール側が設置しているソファに座る。
「光輝君もなにか買ったのですか?」
僕が手に持っている雑貨屋のロゴが入った袋を見て、そう訪ねてきた。
「うん。 せっかくだしと思ってね。 はい。」
そういいながら僕が取り出したのはクイーンが刺繍されている赤色リストバンドだ。 もちろん周りにはハート柄になっている。
「リストバンドとは考えましたね。 これなら学校の校則には引っ掛からないです。」
「あ、やっぱりそこも考えて選んでたのね。」
「当然です。 学校の決まり事を破ってまでやるオシャレではありませんので。 私の分があるという事は。」
「僕の分もしっかりあるよ。 絵柄とかが違うからペアとはいかないかもしれないけど。」
そういって僕はもうひとつの青いリストバンドを取り出す。 そこにはスペード柄の中に騎士の刺繍がされている。 ペアかといわれるとちょっと違う気もするけれど、そこは気にしないで貰いたい。
「では私もこれをお渡ししましょうかね。」
安見さんが袋の中から出したのはヘアピン。 しかも良くあるヘアピン出はなく、少しお洒落に型どられた、ばつ印のヘアピンだった。
ヘアピンなんて付けたことがないので良く分からないのだが。
「僕、髪短いからヘアピンなんて付ける場所ないよ?」
「大丈夫ですよ。 前髪を止めるだけでも十分に役に立ちますので。 ちょっと失礼しますね。」
そういって安見さんは僕用に買ってきてくれたヘアピンを僕の左の前髪に付けるように近づいてくる。 急に近づいてきた安見さんの顔が僕の心臓の鼓動を速める。 安見さんの顔が近くにあるだけで、なにかが昂ってくるようだ。
「はい。 終わりましたよ。 どうですか? 違和感は感じませんか?」
たった10秒間、その間だけはまるで時が止まったかのようだった。 左前髪を触ってみると、確かにヘアピンがされていた。
「うん。 大丈夫。 特に違和感は感じないよ。」
「それはよかったです。 そんなに変わったヘアピンではないので、自分で付けるなら鏡を見ながらつけてくださいね。」
「・・・安見さんも同じ形のヘアピンを買ってるんだよね?」
「勿論ですよ。 そうじゃないとペアの意味がないですから。」
「・・・それじゃあ今度は僕が付けてあげるよ。 僕が左だから安見さんは右側でいいよね。」
「それではお願いできますか?」
安見さんは袋の中に入っていたもうひとつの僕と同じ形のヘアピンを出してきた。 そして安見さんから貰うと、安見さんの前髪をサッとあげる。
安見さんの言う通り、デザインは凝っているが、使い方自体は普通のヘアピンなので、そのまま安見さんの右前髪に付ける。 そしてヘアピンを付けた後で安見さんから離れる。
「・・・もしかしてさっきのお返しですか?」
そう言っている安見さんの顔はほんのり赤みがかっていた。
「・・・やられたらやり返す・・・ってね。」
そう僕の口角が上がった。
「・・・帰ろうか。」
「・・・そうですね。」
僕も安見さんもどこか気恥ずかしくなって、ショッピングモールを出ようとする。 その間に僕と安見さんは、それぞれの駅で別れるまで手を繋いでいた。 少しは、恋人らしくなっているのかな? そんな事を思いながら安見さんとのデートと言う1日を締め括るのだった。
「そろそろ帰らないと心配されるかな。」
「そうですね。 私達、連絡もなしに出ているようなものですので、あまり遅くなるのも良くないですよね。」
「高校生なんだしあんまり気にして・・・いや、そんなことはないか。」
僕の両親にならと思ったが親は親、心配しない方がむしろおかしいというものだと自己解決して、最後に向かおうと2人で決めた場所に行く事にした。
「ふーむ、どのようなものが良いか迷ってしまいますね。」
「どんなものでも基本的には変わらないんじゃ?」
「光輝君。 こういったところで妥協を許してしまうと、この先も似たようなことになったときに、中途半端になってしまって後悔することになるのですよ?」
「あーうん。 そこまで真剣だったのに水を指してごめん。」
安見さんに怒られて素直に謝った。 僕らがいるのはごく普通の雑貨屋だ。 ここでの目的は僕らのお揃いの物が欲しくなったというものだ。 前に僕の手作りで僕と色違いのお弁当袋を作ってあげたことがあったが、それとは別になるべく身に付けるもので探そうと安見さんが提案したのだ。
ちなみに僕はキーホルダーとかの方がいいのでは?と言ったのだが安見さん曰く「こう言ったものは直ぐに失くすようなものの方が断然いいんです。」と言われて却下をされてしまった。
「一応カップル用でなにかないか検索してみたんだけど、やっぱりペアリングとかペアピアスとかみたいなのがいいって書いてあった。」
「ペアリング辺りならいいかなとは思いましたが、常に付けるのは少々荷が重い気がするのですよ。 私達はまだ高校生ですので。」
安見さんの基準が良くわかんないや。 僕もなにかいいのがないかと探してみる。 雑貨屋なので、それなりの品揃えで、色んな物が売っている。 ペンにイヤホン、帽子なんかもあるのでどれを取っても良いのだろうけれど、常に身に付けるとなると、校則の範囲内でなければならない。 実際に僕が今付けているチョーカーは校則には引っ掛からない。
なのでこの程度ならという感じに見ているのだが、なかなか良いのが見つからない。 このままではなにも渡せずに終わってしまう気がする。 さすがにそれは良くないだろうとあちらこちらを探してみると・・・
「・・・あ、これならいいんじゃないかな?」
それを2つ分手に取って、会計に向かうのだった。
「おや、見かけないと思ったら、もう外に出ていたのですね。」
ようやく雑貨屋から出てきた安見さんと合流を果たして、近くのショッピングモール側が設置しているソファに座る。
「光輝君もなにか買ったのですか?」
僕が手に持っている雑貨屋のロゴが入った袋を見て、そう訪ねてきた。
「うん。 せっかくだしと思ってね。 はい。」
そういいながら僕が取り出したのはクイーンが刺繍されている赤色リストバンドだ。 もちろん周りにはハート柄になっている。
「リストバンドとは考えましたね。 これなら学校の校則には引っ掛からないです。」
「あ、やっぱりそこも考えて選んでたのね。」
「当然です。 学校の決まり事を破ってまでやるオシャレではありませんので。 私の分があるという事は。」
「僕の分もしっかりあるよ。 絵柄とかが違うからペアとはいかないかもしれないけど。」
そういって僕はもうひとつの青いリストバンドを取り出す。 そこにはスペード柄の中に騎士の刺繍がされている。 ペアかといわれるとちょっと違う気もするけれど、そこは気にしないで貰いたい。
「では私もこれをお渡ししましょうかね。」
安見さんが袋の中から出したのはヘアピン。 しかも良くあるヘアピン出はなく、少しお洒落に型どられた、ばつ印のヘアピンだった。
ヘアピンなんて付けたことがないので良く分からないのだが。
「僕、髪短いからヘアピンなんて付ける場所ないよ?」
「大丈夫ですよ。 前髪を止めるだけでも十分に役に立ちますので。 ちょっと失礼しますね。」
そういって安見さんは僕用に買ってきてくれたヘアピンを僕の左の前髪に付けるように近づいてくる。 急に近づいてきた安見さんの顔が僕の心臓の鼓動を速める。 安見さんの顔が近くにあるだけで、なにかが昂ってくるようだ。
「はい。 終わりましたよ。 どうですか? 違和感は感じませんか?」
たった10秒間、その間だけはまるで時が止まったかのようだった。 左前髪を触ってみると、確かにヘアピンがされていた。
「うん。 大丈夫。 特に違和感は感じないよ。」
「それはよかったです。 そんなに変わったヘアピンではないので、自分で付けるなら鏡を見ながらつけてくださいね。」
「・・・安見さんも同じ形のヘアピンを買ってるんだよね?」
「勿論ですよ。 そうじゃないとペアの意味がないですから。」
「・・・それじゃあ今度は僕が付けてあげるよ。 僕が左だから安見さんは右側でいいよね。」
「それではお願いできますか?」
安見さんは袋の中に入っていたもうひとつの僕と同じ形のヘアピンを出してきた。 そして安見さんから貰うと、安見さんの前髪をサッとあげる。
安見さんの言う通り、デザインは凝っているが、使い方自体は普通のヘアピンなので、そのまま安見さんの右前髪に付ける。 そしてヘアピンを付けた後で安見さんから離れる。
「・・・もしかしてさっきのお返しですか?」
そう言っている安見さんの顔はほんのり赤みがかっていた。
「・・・やられたらやり返す・・・ってね。」
そう僕の口角が上がった。
「・・・帰ろうか。」
「・・・そうですね。」
僕も安見さんもどこか気恥ずかしくなって、ショッピングモールを出ようとする。 その間に僕と安見さんは、それぞれの駅で別れるまで手を繋いでいた。 少しは、恋人らしくなっているのかな? そんな事を思いながら安見さんとのデートと言う1日を締め括るのだった。
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