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寝起きドッキリは節度が大事

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「・・・・・・・・・・・・・・ん。」


 瞑っていた目を開けて、回らない頭を使ってあのときの事を思い出す。


「・・・そうだ。 僕は先生のお酒を飲んで倒れたんだ。 それでそれから・・・それから・・・」


 思い返そうとしても全く思い出せない。 昨日の記憶が無い。 何をしていたのか全くわからない。


 ならばと思い、今の状況を確認する。 まず視界に移るのは天井。 しかも薄暗いが見慣れている天井だと把握できる。 つまりここは自室だと考えた。 とりあえずは帰ってきたんだ。


 そして布団に入っているのだが異様に寒い。 まだ秋とはいえ気温も下がっている。 それが原因だろうと考えた。


 上、下と見たので今度は横を見る。 すると安見さんの寝顔がそこにあった。 とても気持ち良さそうに眠っている安見さんを見て・・・・・・



 僕の脳は一気に覚醒した。


 慌てて上半身を起こしたときに寒さの原因が分かる。

 裸、だったのだ。 さすがに下着は穿いていたが、それでも寒いものは寒い。


「クシュン・・・んん・・・」


 そんなことを認知したところで安見さんが寒そうに身を縮める。 そしてその寒さに耐えられなかったのか、安見さんも目が覚めたようだ。


「・・・あ、おはようございます。 光輝君。」


 まだ眠気眼なのか、目はトロンとしていて僕を見てにっこりと微笑んでいた。 その表情にドキリとしたが、それ以上に確認したいことが山ほどあった。


「・・・安見さん。 まずは謝罪として、僕は昨日の打ち上げの後から記憶がないんだ。 それとどうしてこうなっているのかの説明をしてもらいたいのだけれど・・・」


 まだ安見さんが上体を起こしていないので、その布団の中がどうなっているのか全く予想が出来ない。 僕の予想は外れてて欲しいと願っているが、それを安見さんの微笑ましい表情と



「光輝君って、意外にも激しいのですね。」



 その一言で僕は完全にもぬけの殻になった。 節度を守るとはなんだったのか。 僕はあの後どのくらいかのところで「一線」を越えてしまったのか・・・ あぁ、来さんになんて説明をすれば・・・


「・・・ふふっ、ふふふふふふふっ。あはははははは!」


 僕が完全に意気消沈していると急に安見さんが笑い始めた。 その笑い声に僕の意識は戻る。


「ふふふっ、ごめんなさい。 予想以上の反応だったのでつい笑ってしまいました。」

「・・・え?」

「事のあらましを説明いたしますね。」


 そういって上半身を起こす安見さん。 何気に僕の布団で前をガードしている辺りは常識を持ってくれて助かったと言えるだろう。


 安見さんの話によれば僕は先生のお酒を飲んだ後、完全に爆睡してしまっていたようで、今の今まで一切合切起きてないのだそうだ。


 時刻が8時を過ぎていたと言うこともあってクラスのみんなは帰る組と二次会組に分かれて打ち上げは終了したそうだ。 深夜に徘徊して補導されてないよね? その二次会組。


 そして僕は寝ているということで、事故とはいえ飲ませてしまったということで、安見さんの案内のもと、先生が僕を家におぶってくれたのだそうだ。


 そして家に僕をあげた後に安見さんが「心配なので」ということで一緒に残ったそうだ。 そして僕の部屋に僕を寝かし付けて安見さんも帰ろうとしたときに母さんに呼び止められたのだそうだ。 あまり女の子が夜中の閑散とした住宅地を歩くのはよくないということで。


「それで私も泊まっていいと陽子さんがいつの間にか母さんに連絡を入れてくれたみたいで、せっかくなのでといった形で、一緒に寝ていたという訳です。」

「あらましは分かったよ。 でもどうしてそれで、僕は脱がされてるのかな?」


 そう僕が説明を求めると、安見さんは頬を赤く染めながら言った


「それはその、私は普通に寝ていれば良かったのですが、陽子さんが「折角だから朝起きたら光輝を驚かせてあげようか」といって光輝君の服を脱がし始めたので、なんというか、流れで・・・」

「なるほど。 よーく分かったよ。 つまり悪いのは母さんだと言う訳だ。」


 そういっていつの間にか半開きになっていたドアの方を睨む。 するとそこに聞き耳をたてていたであろう母さんが笑いを堪えながらドアを開けた。


「いやぁ、予想通りの反応で面白かったわよ。」

「母さんの思い付きで僕の心臓を縮めないでくれない?」

「まあまあ、文化祭の振替で今日と明日は休みなんだからゆっくりしなさいな。」


 そういって母さんはニヤニヤしながら部屋を去っていった。


「全く、安見さんに変なことを教えないでよ。」

「そう言った所も陽子さんのいいところだと思いますよ?」


 そうかなぁ?と思いつつ、これからどうするか考えていると、安見さんが僕の肩を人差し指で叩いた。


「光輝君。 折角のお休みですし、映画に行きませんか?」

「映画?」

「私、気になる映画を見つけてしまいまして。」

「・・・まあ、それは構わない、か。」

「私たちにとって初めてのデートですよ。」

「・・・言われてみれば初めてだよね。 いろんなところに行くことは多かったけど、2人でって無かったような気がする。」


 そう考えればそれも悪くないと思う。 そう思いながら安見さんの方を見るとふとあることに気がつく。 安見さんが今だに僕の布団を掴んでいるのと、それで上半身が全く見えないのだ。


「・・・安見さん。 その布団の下って、なにか身に付けてる?」


 その質問に安見さんは自分だけ見えるように布団をあげて、そして


「・・・えへっ」


 ウインクしながら僕にそう答えた。 どうやらあの布団の下には安見さんの一糸纏わぬ姿が眠っているようだ。


「2人とも、ご飯出来たから降りてきて。」


 下から母さんの声がした。 恐らく2人分作ったのだろう。


「では行きましょうか光・・・光輝君?」


 だが僕は動けなかった。 正確には座りながら前屈みになっていた。


「ごめん安見さん・・・もうちょっと落・ち・着・い・て・か・ら・にしてくれないかな?」


 そう言うが、安見さんはよく分かっていないようで、僕の後ろから覗くように僕の前の部分を見て


「・・・・・・・・・あ・・・」


 なにかを察したその時の安見さんの顔は完全に真っ赤に染まっていて、お互いしばらく動くことが出来なかった。

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