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これが2人の試練・・・?
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突然呼ばれてしまって先に教室棟の裏手に来ていた私は、ただただ待ちぼうけをしていた。
「なんだかタイミングが悪いですね。」
館君とは色んな場面で二人きりになることが多かった。 だけれどその度に、お互いになにかがズレていた。 その思いに段々モヤモヤが激しくなっていって、
何時しか館君とは絶対に二人きりになってそれで・・・なんていう妄想夢日記のようなことを思い浮かんでいたりもしていた。
「だからこそ、今日という日は絶対に逃したくはないのですよ。」
後ろに抱え持ちしている手提げ付きの紙で出来た鞄を持ちながら待っていると、足音が聞こえてくる。 だけれど複数人いるような気がしたので、そっと茂みの中に先程の紙バッグを隠す。 これは館君にしか見せたくないもの。 それを他人に見られるのは迷惑だと思ったからだ。
そう思い見ていると、男子2人が校舎の角から現れる。 見れば同じクラスの男子だった。 多分この茂みの先の学校の出入口に向かうのだろう。 そんなことを思いながら、過ぎ去るのを待っていると、不意に声をかけられる。
「よぉ須今。 こんなところでなにしてんだ?」
「待ち人を待ってるんですよ。 今はちょっと別の用事でお呼ばれしてしまったようで。」
「へぇ、そうなんだ。」
あまり喋ったことの無い男子だったのでそのまま終わるかと思いきや、急に距離を縮めてきました。
「じゃあさ、俺らとその人が来るまで、お喋りしない? そうすればいずれ・・・」
「大丈夫です。 待つのもまた一興だと思うので。」
館君がこの状況を見て勘違いするとは甚だ思ってはいませんが、今は二人きりになりたい気分なので、彼らには申し訳ないけれど、立ち去って貰いたかった。
「そっかぁ・・・それじゃあ、しょうがないよなぁ。」
分かってくれたようで良かった・・・そんな風に思ってしまったのが気の緩みだったようです。
「須今を捕まえろ。」
その言葉に咄嗟に反応できずにもう一人の男子に後ろで組んでいた両手をがっしりと、抜けられないように捕まれてしまいました。
「な、なにを・・・!?」
「なぁ須今。 その待ち人って館の事だろ? お前らいつも一緒だもんな。」
「常に一緒というわけでは・・・離してください。」
「でも惜しいかな。 君の目の前にはこんなにも魅了されるに値する、俺という存在がいるというのに。」
そういって手を差し伸べてくる。 確かに目の前の男子は、いわゆる「美少年」というに相応しい美貌を持っている。 これならば普通の女子ならばその魅惑のフェイスに恋に落ちることもあるだろう。 ですが私にはそんなものは効かないのです。
「それで、なにがしたいのですか? 女子を拘束するなんて、あまりいいことではないと思うのですが?」
「俺の女にならないか?」
唐突なその問いに、疑問符が浮かび上がった。 なぜまともに会話もしたこともないような男子に私は言い寄られているのかと、そしてそれを言うことになんのメリットがあるのかと。
「きっぱりとお断りさせていただきます。」
「おいおい、俺の顔を見てそんな風に言えるなんて、君も随分と館の事を思っているようだね。」
「見た目は関係ありません。 そもそもあなたはこうして私を拘束しているんです。 そんな男子のどこに惹かれるというのですか。」
わたしは至極真っ当なことを言っているだろうと自負できる。 それが現実だから。
「でも、館だって同じようなことをするかもしれないぞ? 奴だって男だ。 獣を宿しているのは変わらないだろ?」
「それでも館君はこんな強行手段のような事はしませんよ! 男が云々を言う前に、まずは恋愛について学んだらどうです? あなたのその言葉、私じゃなくても幻滅するんじゃないです?」
反論と言う名の罵倒を繰り返す私の顎を、その男子の手が持ち上げた。 それでも私はその男子を睨むのを止めない。
「お前らはまだ付き合ってないんだろ? そんなに否定したって、変えられないものだってある。」
その言葉と行動に鳥肌が立つ。 今から行われること、それは捧・げ・る・と決めた相手ではない人とすることだったからだ。
「や、止めてください!」
「どうやったって止めることは出来ない。 そう仕掛けたのは自分なんだからな。」
そしてその整いつつも醜く見える顔が少しずつ近づいてくる。 あのときの感覚に似ている。 中学の時に迫られたあの感覚に。
でも逃れられないようにしたのは確かに自分だった。 これから起こることを、せめて見ないようにと目を堅く閉じる。
ごめんなさい館君・・・私の家族以外での最・初・はあなたが良かった・・・
――――――――――――――
「それだったら尚更行かせてよ! 僕は安見さんの元に行きたいんだよ!」
「すまん館。 これはこんなことをしてしまった自分への戒めでもあるんだ。 お前のことだ。 光景を見た瞬間にショックで立ち直るのは不可能だと思っているんだ。」
焦らせる僕の前に立ちはだかるクラスメイト。 どんな光景が待ち受けているのか分からない。 だけれど、それで安見さんを見過ごすような僕には絶対にならない。 なりたくない。
「それでも行きたいと言うのならば俺をどかしてみせろ。 俺は不動を貫いてみせる。」
そう言われて立ち向かおうとする、が、すぐに足は止まってしまう。 僕の見立てが間違っていなければ、彼は剣道部。 日々肉体強化に励んでいる身である彼の体を、文芸部である僕が敵うわけが無いのは百も承知の事実。 だけれど、そんなことを言っている猶予も残されていないのかもしれない。 正直こんなことで荒事にも絶対にしなくない。 ドラマとかなら「自分の事よりも好きな相手の事」のように目の前の敵に立ち向かうだろうが、僕にはそんな力がない。
「どうした。 来ないのか? ならばお前はこの教室から出ることは出来ないぞ。」
「では僕が外から介入するのは、ルール違反かな?」
「なんだかタイミングが悪いですね。」
館君とは色んな場面で二人きりになることが多かった。 だけれどその度に、お互いになにかがズレていた。 その思いに段々モヤモヤが激しくなっていって、
何時しか館君とは絶対に二人きりになってそれで・・・なんていう妄想夢日記のようなことを思い浮かんでいたりもしていた。
「だからこそ、今日という日は絶対に逃したくはないのですよ。」
後ろに抱え持ちしている手提げ付きの紙で出来た鞄を持ちながら待っていると、足音が聞こえてくる。 だけれど複数人いるような気がしたので、そっと茂みの中に先程の紙バッグを隠す。 これは館君にしか見せたくないもの。 それを他人に見られるのは迷惑だと思ったからだ。
そう思い見ていると、男子2人が校舎の角から現れる。 見れば同じクラスの男子だった。 多分この茂みの先の学校の出入口に向かうのだろう。 そんなことを思いながら、過ぎ去るのを待っていると、不意に声をかけられる。
「よぉ須今。 こんなところでなにしてんだ?」
「待ち人を待ってるんですよ。 今はちょっと別の用事でお呼ばれしてしまったようで。」
「へぇ、そうなんだ。」
あまり喋ったことの無い男子だったのでそのまま終わるかと思いきや、急に距離を縮めてきました。
「じゃあさ、俺らとその人が来るまで、お喋りしない? そうすればいずれ・・・」
「大丈夫です。 待つのもまた一興だと思うので。」
館君がこの状況を見て勘違いするとは甚だ思ってはいませんが、今は二人きりになりたい気分なので、彼らには申し訳ないけれど、立ち去って貰いたかった。
「そっかぁ・・・それじゃあ、しょうがないよなぁ。」
分かってくれたようで良かった・・・そんな風に思ってしまったのが気の緩みだったようです。
「須今を捕まえろ。」
その言葉に咄嗟に反応できずにもう一人の男子に後ろで組んでいた両手をがっしりと、抜けられないように捕まれてしまいました。
「な、なにを・・・!?」
「なぁ須今。 その待ち人って館の事だろ? お前らいつも一緒だもんな。」
「常に一緒というわけでは・・・離してください。」
「でも惜しいかな。 君の目の前にはこんなにも魅了されるに値する、俺という存在がいるというのに。」
そういって手を差し伸べてくる。 確かに目の前の男子は、いわゆる「美少年」というに相応しい美貌を持っている。 これならば普通の女子ならばその魅惑のフェイスに恋に落ちることもあるだろう。 ですが私にはそんなものは効かないのです。
「それで、なにがしたいのですか? 女子を拘束するなんて、あまりいいことではないと思うのですが?」
「俺の女にならないか?」
唐突なその問いに、疑問符が浮かび上がった。 なぜまともに会話もしたこともないような男子に私は言い寄られているのかと、そしてそれを言うことになんのメリットがあるのかと。
「きっぱりとお断りさせていただきます。」
「おいおい、俺の顔を見てそんな風に言えるなんて、君も随分と館の事を思っているようだね。」
「見た目は関係ありません。 そもそもあなたはこうして私を拘束しているんです。 そんな男子のどこに惹かれるというのですか。」
わたしは至極真っ当なことを言っているだろうと自負できる。 それが現実だから。
「でも、館だって同じようなことをするかもしれないぞ? 奴だって男だ。 獣を宿しているのは変わらないだろ?」
「それでも館君はこんな強行手段のような事はしませんよ! 男が云々を言う前に、まずは恋愛について学んだらどうです? あなたのその言葉、私じゃなくても幻滅するんじゃないです?」
反論と言う名の罵倒を繰り返す私の顎を、その男子の手が持ち上げた。 それでも私はその男子を睨むのを止めない。
「お前らはまだ付き合ってないんだろ? そんなに否定したって、変えられないものだってある。」
その言葉と行動に鳥肌が立つ。 今から行われること、それは捧・げ・る・と決めた相手ではない人とすることだったからだ。
「や、止めてください!」
「どうやったって止めることは出来ない。 そう仕掛けたのは自分なんだからな。」
そしてその整いつつも醜く見える顔が少しずつ近づいてくる。 あのときの感覚に似ている。 中学の時に迫られたあの感覚に。
でも逃れられないようにしたのは確かに自分だった。 これから起こることを、せめて見ないようにと目を堅く閉じる。
ごめんなさい館君・・・私の家族以外での最・初・はあなたが良かった・・・
――――――――――――――
「それだったら尚更行かせてよ! 僕は安見さんの元に行きたいんだよ!」
「すまん館。 これはこんなことをしてしまった自分への戒めでもあるんだ。 お前のことだ。 光景を見た瞬間にショックで立ち直るのは不可能だと思っているんだ。」
焦らせる僕の前に立ちはだかるクラスメイト。 どんな光景が待ち受けているのか分からない。 だけれど、それで安見さんを見過ごすような僕には絶対にならない。 なりたくない。
「それでも行きたいと言うのならば俺をどかしてみせろ。 俺は不動を貫いてみせる。」
そう言われて立ち向かおうとする、が、すぐに足は止まってしまう。 僕の見立てが間違っていなければ、彼は剣道部。 日々肉体強化に励んでいる身である彼の体を、文芸部である僕が敵うわけが無いのは百も承知の事実。 だけれど、そんなことを言っている猶予も残されていないのかもしれない。 正直こんなことで荒事にも絶対にしなくない。 ドラマとかなら「自分の事よりも好きな相手の事」のように目の前の敵に立ち向かうだろうが、僕にはそんな力がない。
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