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始める前の下調べ
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「生徒会から配られたぜ。 今年の文化祭の出し物のパンフレット。」
文化祭まで後1週間程まで迫った頃、クラスメイトからパンフレットが配られてきた。 見易い黄色の紙に黒字で書かれている表紙を開くと、学校の全体を書いたマップとそこに細かく出し物の内容が書かれていた。
そして数分もしないうちにみんなはそれぞれのグループでどこを回るかという話になった。 僕のクラスはそれぞれが仲良しなのである。
というわけで僕らもいつものメンバーで集まって色々な出し物を吟味することにした。
「とりあえず教室棟の方は興味ある場所だけで絞ろうか。」
「そうだな。 大体は閲覧室みたいなパターンが多いから入場料みたいなのも取られないしな。」
「あ、私ここ行きたい。 この3年生の教室の先の大多目的室でやってる「大迷宮路」ってやつ。」
「私はこの「お遊び横丁」という出し物が気になります。」
みんなそれぞれで行ってみたい場所は決まったようだ。
「館さんは、どこに、行きたい、ですか?」
円藤さんに指摘されて、僕も興味が惹かれるものがないか見てみる。
「あ、僕はここがいいかな。」
そういって指を指したのは2年生の教室で行われる「占いの館」というものだった。 占い事態に興味があるのもそうだが、どのような占いをするのかが気になるところだった。
「館君は相変わらず渋いところを行きますね。」
「渋い・・・かなぁ?」
まあ確かに一般的な学生が興味を示していく場所ではないかもしれないけれど、きになってしまったのだから許してほしい。
「後は屋台だなぁ。 食券制度なんだっけか?」
「説明を聞いた限りではそのようだ。 屋台側もお客側も分かりやすいようにするのが目的なんだとか。」
それを聞いて改めて先生からのお金についての説明の事を思い出す。
お客さんとして購入するためには校内に6箇所ほどある「食券交換所」という場所があり、そこで現金と引き換えに10枚綴りの食券を貰う。 ちなみに1枚100円単位なので、細かい計算をしなくてもいいお子様たちに優しい制度だ。 そして食券は文化祭終了後に生徒会に滞りなく提出すれば機械の使用代金を差し引いた分がクラスの利益になる。 ちなみにその中に備品や食材の購入分も含まれる。
「一応お客優先だし、私たちは店番のこともあるからあんまり回れないかもね。」
「そうだなぁ。 それに学校の屋台って相場が分からないのがあったりするからなぁ・・・ うげぇ、ここのフライドポテトの店一袋で400円だってさ。 どういうことだよ。」
「利益を優先しているように見えますね。 最初の方はいいですが、後半は辛くなりそうですね。」
「・・・いや、その点を考えると僕らのところはむしろ利益にならないような金額設定にしてる気がするんだけど・・・」
まあおやつ感覚に近い品物なので仕方ないと言えば仕方ないのだけれど。
「そっちは決まった?」
声をかけられたので顔をあげると真岩さんがなにか紙を持って現れた。
「んー、もう少しかな? 真岩さんそれは?」
「クラスの役割と時間配分。 屋台の大きさ、考えれば、これで十分、回る。」
そういって紙を見せてくれる。 配置としてはレジ2人、袋詰め2人、スイートポテト作成に4人の8人体制で行う。 それを文化祭中の時間で一グループずつで販売していく方針になっていた。
「それで順番は・・・ん。 僕は最後なのか。」
「私も最後ですね。」
僕と安見さんは一緒にそう呟いた。
「他はそれぞれ分かれているようだね。」
「あぁ。 こりゃダブってる方が奇跡だな。」
「同じグループなのは館さんと安見さん。 円藤さんと小舞さん。 私と坂内君のようですね。 濱井さんは真岩さんと一緒のようですよ?」
「あ、そうなの? よろしくね真岩っち。」
「真岩っち・・・」
濱井さんにアダ名のように呼ばれた真岩さんは少し困ったような表情をしている・・・ように見える。 だって目元があまり見えないから分からなくって。
「あ、あれ? なんか、ダメだった?」
「ごめ・・・! 違・・・!」
「・・・あー、もしかして普段呼ばれ慣れてないから、困惑しちゃったって感じなのかな?」
僕が真岩さんにそう指摘すると、真岩さんは「それだ!」と言わんばかりに指を指してきた。 若干嬉しそうなのは気のせいだろうか?
「そっかー。 じゃあ慣れるように私はそうやって呼ぶね! 真岩っちには早く慣れて欲しいし。」
なにその荒療治。 だが当の真岩さんも本気で嫌がっているわけではなく、本当に呼ばれ慣れないが故のあたふただと思っているので気にしないことにした。
「なんだか作為的な気がしたのですが、気のせいでしょうか?」
今日の授業と文化祭の準備を終えた帰り道。 安見さんがポツリとそんなことを口走った。
「ん? どういうこと?」
「どうもこうも、私達2人を一緒にするメリットは少ないように感じます。 私達は2人とも料理も出来ますし計算も速いです。 なので私達は分かれた方が良かったのではないでしょうか? そう思うのです。」
それは一理あった。 わざわざ家庭部の2人を分けない理由はあまりないのではないのかとは気がついていたが、何故だろうか?
「まあいいです。 せっかく最終兵器を考えていたのですが。」
「最終兵器?」
「館君、仮に作ったスイートポテトが売れなくなり始めたときにどうするのかは考えていましたか?」
「そう言われると・・・あー、確かになにも無かったかも。」
「なので私個人で最終兵器は投入しようと思っているのです。 最後だったのは幸運でした。」
最終兵器・・・どんなものか気になるが、聞いても答えてはくれなさそうだ。 ならば当日のお楽しみという事だろう。 それならば待つしかないと、別の意味で文化祭が楽しみが増えた。 そんな帰り道だった。
文化祭まで後1週間程まで迫った頃、クラスメイトからパンフレットが配られてきた。 見易い黄色の紙に黒字で書かれている表紙を開くと、学校の全体を書いたマップとそこに細かく出し物の内容が書かれていた。
そして数分もしないうちにみんなはそれぞれのグループでどこを回るかという話になった。 僕のクラスはそれぞれが仲良しなのである。
というわけで僕らもいつものメンバーで集まって色々な出し物を吟味することにした。
「とりあえず教室棟の方は興味ある場所だけで絞ろうか。」
「そうだな。 大体は閲覧室みたいなパターンが多いから入場料みたいなのも取られないしな。」
「あ、私ここ行きたい。 この3年生の教室の先の大多目的室でやってる「大迷宮路」ってやつ。」
「私はこの「お遊び横丁」という出し物が気になります。」
みんなそれぞれで行ってみたい場所は決まったようだ。
「館さんは、どこに、行きたい、ですか?」
円藤さんに指摘されて、僕も興味が惹かれるものがないか見てみる。
「あ、僕はここがいいかな。」
そういって指を指したのは2年生の教室で行われる「占いの館」というものだった。 占い事態に興味があるのもそうだが、どのような占いをするのかが気になるところだった。
「館君は相変わらず渋いところを行きますね。」
「渋い・・・かなぁ?」
まあ確かに一般的な学生が興味を示していく場所ではないかもしれないけれど、きになってしまったのだから許してほしい。
「後は屋台だなぁ。 食券制度なんだっけか?」
「説明を聞いた限りではそのようだ。 屋台側もお客側も分かりやすいようにするのが目的なんだとか。」
それを聞いて改めて先生からのお金についての説明の事を思い出す。
お客さんとして購入するためには校内に6箇所ほどある「食券交換所」という場所があり、そこで現金と引き換えに10枚綴りの食券を貰う。 ちなみに1枚100円単位なので、細かい計算をしなくてもいいお子様たちに優しい制度だ。 そして食券は文化祭終了後に生徒会に滞りなく提出すれば機械の使用代金を差し引いた分がクラスの利益になる。 ちなみにその中に備品や食材の購入分も含まれる。
「一応お客優先だし、私たちは店番のこともあるからあんまり回れないかもね。」
「そうだなぁ。 それに学校の屋台って相場が分からないのがあったりするからなぁ・・・ うげぇ、ここのフライドポテトの店一袋で400円だってさ。 どういうことだよ。」
「利益を優先しているように見えますね。 最初の方はいいですが、後半は辛くなりそうですね。」
「・・・いや、その点を考えると僕らのところはむしろ利益にならないような金額設定にしてる気がするんだけど・・・」
まあおやつ感覚に近い品物なので仕方ないと言えば仕方ないのだけれど。
「そっちは決まった?」
声をかけられたので顔をあげると真岩さんがなにか紙を持って現れた。
「んー、もう少しかな? 真岩さんそれは?」
「クラスの役割と時間配分。 屋台の大きさ、考えれば、これで十分、回る。」
そういって紙を見せてくれる。 配置としてはレジ2人、袋詰め2人、スイートポテト作成に4人の8人体制で行う。 それを文化祭中の時間で一グループずつで販売していく方針になっていた。
「それで順番は・・・ん。 僕は最後なのか。」
「私も最後ですね。」
僕と安見さんは一緒にそう呟いた。
「他はそれぞれ分かれているようだね。」
「あぁ。 こりゃダブってる方が奇跡だな。」
「同じグループなのは館さんと安見さん。 円藤さんと小舞さん。 私と坂内君のようですね。 濱井さんは真岩さんと一緒のようですよ?」
「あ、そうなの? よろしくね真岩っち。」
「真岩っち・・・」
濱井さんにアダ名のように呼ばれた真岩さんは少し困ったような表情をしている・・・ように見える。 だって目元があまり見えないから分からなくって。
「あ、あれ? なんか、ダメだった?」
「ごめ・・・! 違・・・!」
「・・・あー、もしかして普段呼ばれ慣れてないから、困惑しちゃったって感じなのかな?」
僕が真岩さんにそう指摘すると、真岩さんは「それだ!」と言わんばかりに指を指してきた。 若干嬉しそうなのは気のせいだろうか?
「そっかー。 じゃあ慣れるように私はそうやって呼ぶね! 真岩っちには早く慣れて欲しいし。」
なにその荒療治。 だが当の真岩さんも本気で嫌がっているわけではなく、本当に呼ばれ慣れないが故のあたふただと思っているので気にしないことにした。
「なんだか作為的な気がしたのですが、気のせいでしょうか?」
今日の授業と文化祭の準備を終えた帰り道。 安見さんがポツリとそんなことを口走った。
「ん? どういうこと?」
「どうもこうも、私達2人を一緒にするメリットは少ないように感じます。 私達は2人とも料理も出来ますし計算も速いです。 なので私達は分かれた方が良かったのではないでしょうか? そう思うのです。」
それは一理あった。 わざわざ家庭部の2人を分けない理由はあまりないのではないのかとは気がついていたが、何故だろうか?
「まあいいです。 せっかく最終兵器を考えていたのですが。」
「最終兵器?」
「館君、仮に作ったスイートポテトが売れなくなり始めたときにどうするのかは考えていましたか?」
「そう言われると・・・あー、確かになにも無かったかも。」
「なので私個人で最終兵器は投入しようと思っているのです。 最後だったのは幸運でした。」
最終兵器・・・どんなものか気になるが、聞いても答えてはくれなさそうだ。 ならば当日のお楽しみという事だろう。 それならば待つしかないと、別の意味で文化祭が楽しみが増えた。 そんな帰り道だった。
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