須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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悪い生徒には粛清を 前編

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「突然の呼び出しをまずはお詫びしたい。」


 そういって生徒会長は机にまずは突っ伏した。 それを全員で阻止した。 決して生徒会長が悪いことをしたわけではないのにそんなことをされては立場に困るというものだ。


「とりあえずは私達を呼んだことを説明していただきたい源生徒会長殿。」


 そう、今ここにいるのは私の他に小舞君、円藤さん、江ノ島さん、濱井さんの5人が揃っている。 その5人が同時に呼ばれたのだ。 少なくともただ事ではない。


「そうだぜ。 俺達なんにも悪いことしてないぜ? というかなんか呼ばれる覚えすらないんだけど?」

「別に貴殿らを呼んだのは悪行でのことではない。」


 小舞君の反論はもっともだったが、どうやら違うようだ。


「貴殿らも知っているだろうが、今回の不純異性交流禁止期間の間で、今停学処分を受けている館と須今についてだ。 貴殿らは2人の友人だと聞いている。」

「館さん達に、会ったんですか!?」


 己を乗り出すように聞いたのは円藤さんだった。 だがそれも無理はない。 我々も聞いたのはつい先日のことで、かなりの噂が飛び交っていた。


「あぁ、彼等にも今回の事は説明してある。 まずは君たちに勘違いして欲しくないのだが、私とて別に2人を本当に停学処分にする気はなかった。」

「でも実際に処分を下していますよね?」


 江ノ島さんが珍しく怒っていた。 確かにそのつもりがなくて処分を下してしまっていては矛盾を生じている。


「それに関しては私から補足するわ。 今回の2人の処分については訳あってその場の勢いに近い感覚でやってしまったのよ。」

「その場の勢いで友達を停学処分しないでください!」


 言い訳を言ってきた女子生徒、錦野と呼んだか。 その生徒に対して濱井さんが怒号をかます。 生徒会が無責任に生徒を処分するという印象を残してしまう。


「だから貴殿らに協力を要請しようと言っているのだよ。 我々は。」

「協力?」

「生徒会は彼等の処分を急いたが、そもそも本当はあんな処分を出す理由なんてなかったんだ。 本当に悪いのはこのような写真を我々生徒会に送りつけてきて事実をねじ曲げて、罪のない生徒を処分にかけさせた送り主、若しくは指示した首謀者だ!」


 そういって机の引き出しから出した封筒をおもいっきり叩きつけ、中から写真が出てきたのを確認する。


「こ、これは・・・!」

「ちょっと! こんなパパラッチみたいな事をされたの!?」

「館さん達には館さん達なりの距離があります。 これをこんな形で壊されては・・・」

「あいつらにしか知らない事実っていうのはよくわかったぜ。 こんなの理解者じゃなきゃ納得できねぇ。」

「私も、2人が、こんなことを、しているなんて、思いたくありません。」


 みんながみんな、この写真から分かる彼等の微笑ましさを読み取り、それを台無しにしていることに腹を立てているようだ。


「話は理解してもらえたか?」


 生徒会長の言葉に皆が頷いた。


「しかし会長さんよぉ。 これの犯人なんてそんな簡単に見つかるものじゃないのは分かるはずだよな?」


 犯人の目星がなければ探しようがない。 聞き込みをしようにも、このような話をまともに聞いてくれるとも思えない。


「あぁ、純粋にこう言った行為に妬みを持っている輩、という認識しか持ち合わせていない。 しかもそれも本当かどうかも分からない有り様だ。 面白半分という可能性も否定できない。 さらに言えば彼等の処分を言い渡したときに、近くまで来ていたのを確認できたにも関わらず視認が出来なかったのは不覚だった。」


 会長は悔しそうに机を叩く。 自分の下した判断とはいえ、やはり罪悪感があるのだろう。 会長の表情は苦悶に満ちている。


「ですが人海戦術にするにしても人手が圧倒的に足りません。 私達5人と生徒会の人達。 あとは数名協力者を募れますが2桁にギリギリ届くくらいです。 その人数だけで1000名近い生徒の中からその犯人を探すのは至難の業ですよ?」


 江ノ島さんの言う通り、そんなことをしているうちに噂や話など廃れてしまい、館君達が戻ってきたとしても、好奇の目に晒されるのみとなってしまう。


「当然それも考えてはいた。 だが君達はまだ1年だ。 上級生の監視など出来はしないだろう。」


 上級生を監視するなど普通の精神力で出来るものなのだろうか? それは実質不可能に近いだろう。 無理もないことだ。


「そこでなのだが、君たちが個人的にそれぞれで行動をしていくのはどうだろうかと考えている。 簡潔に言えば陽動作戦だ。 たった1回成功したところで満足がいくとは思えないのでな。」

「陽動、作戦って事は、私達は、囮という、ことですか?」

「悪い方向に捉えてしまえばそうなってしまう。 なので強制はしない、これは館本人にも聞いて確認済みだ。 自分の罪を払拭するために友人達が動くことはないと言っていた。 故にこれは命令ではない。 なので降りるならそれでも構わない。」


 生徒会長はそう言っているが、我々が行うことなど決まっているようなものだ。


「私はやらせてもらおうと思う。 これも演劇としてはいい機会かもしれない。 最近は練習風景に溶け込ませてもらっているが、いかんせん自分の思い通りにいかないことも多く、自主練しても納得のいくものが出来ないんだ。 ならばいっそ道化になるのもよいかと思ってな。」

「わ、私も! あの二人が、誤解されたままなのは、嫌です! だから手伝わせてください!」

「実際に行動してみないと分からないです。 もしかしたら複数人いる可能性もあるので。」

「私らの団結はそんな奴等になんか負けない! 必ず館と安見ちゃんの誤解を解いてやるんだから!」

「というわけだ生徒会長さんよ。 みんなやる気なんだよ。 だから、俺達に出来ることを言ってくれ!」

「・・・全く、こんな事実を知ったら、館が私に怒りに来そうだ。」


 そういって生徒会長殿は椅子から立ち上がった。


「よし! ではこれから作戦会議に入る! 我々生徒会と館と須今の友人達による共同戦線だ!」

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