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奇跡は起こる?
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なんて帰り道の時に父さんは話していたが、実際に見てもいないのにどうやって信じて・・・いや、半信半疑って言ってたから信じてないのかも。
そんなことをずっと考えていたらいつの間にかみんなが寝る時間になっていた。
部屋はそれなりに多くあるので、家族間で分かれることにした。 隣で両親が寝ているが、僕だけはその神霊の話を聞いて考えていたせいで、寝れなくなってしまったのだ。
「まあ、明日帰るから、今寝れなくてもいいんだけどさ。」
誰も聞いていないのに独り言のように喋り始めてしまった。
・・・少し歩いたら眠気がくるかな? そう思い、僕は寝巻きのまま外へと出るのだった。
街灯が一切無いけれど、そこは月明かりと星の明るさで夜道でも普通に歩けるくらいに明るかった。 集落ではあるが、時間が時間なだけに、電気のついている家はない。 昔の風習である「夜は眠る時間」というものがまだ根付いているのか、ただ単純にやることがないのか。 夜道を歩きながらそんなことを失礼ながら考えていた。
そんな中で辿り着いたのは昼頃に訪れた古寺だった。
「・・・幻想的と言うべきか、はたまたなにかが出そうと言うべきか・・・」
月明かりに照らされた古寺、それはまさしく生と死の狭間にあるかのような不気味さと美しさを彩っていた。 美術に関してはあまり関心の無い僕でも中々に綺麗だと広言できるほどだった。
「ここは写真のひとつでも・・・って、お盆休みの時に写真なんて撮ったら何が写るか分かったもんじゃないだろうけど。」
そんなことをいいながら僕はスマホを構えて写真を撮る。 月明かりもしっかりと写り混んでいるので、幻想的な写真になってくれた。
「少しばかり夜風に当たろう。」
木々が生い茂って風が心地いい。 古寺とは言え階段は上らない。
ここで父さんは暮らしていた。 本当なら祖父母と一緒にここでお盆休みを過ごしていただろうと考えると、また色々と変わったのかもしれない。
「写真以外では見たことがないからなぁ。 会ってみたいとは思うけど・・・!?」
そんな事を言っていたら首筋に冷たい感覚が襲う。 ま、まさか、いやそんなことはないと信じてはいる。 僕は幽霊や神の存在はいないとは思ってはいない。 だが実際にこうして触れられていると言うことは・・・ 恐る恐る後ろを振り向くと・・・
「館君。 こんなところでなにをなさっているのですか?」
「あ、安見さん? なんだぁ・・・よかったぁ・・・」
正体が分かって安心した瞬間に、腰が抜けて、ゆっくりと座る。
「良かったとはなんですか。 私だってこんなところに人がいれば驚きますよ。」
「あ、もしかして僕を触ったのって・・・」
「・・・存在事態は信じているので。」
やっぱり幽霊だと思ったんだね。 でも首筋じゃなくてもいいんじゃなかったかな? こっちが心臓を持ってかれそうになったんだけど・・・
「ところでどうしてここに?」
「その子に連れてきてもらったんですよ。」
「その子?」
そう言うと僕の肩に乗っているホタルに指を指した。 どうやら連れられてきたというのは嘘ではないようだ。
そんなことを考えていると、ホタルは僕の肩から離れ、古寺の裏、墓地の方に飛んでいく。
「私たちをどこかに連れていこうとしているのでしょうか。」
そういうことなのだろうか? でもこの先は墓地だから、何もないような感じもするんだけれど・・・
しかし戻っても寝れる感じはしないので、ホタルに誘われて墓地の方に安見さんと向かう。 そこでなにが待ち構えているのか、もう僕らには予想が出来ない。
そして気が付くと、僕の腕に安見さんがしがみついていた。
「安見さん?」
「怖いわけではないです。 でもここで離れ離れになってしまっては帰れなくなるかもしれないので、こうして腕にしがみついているだけですので、決して怖いわけではないです。」
2回言うほど真剣になっているが、力の込められた方がなんというか尋常ではないのは僕の腕にかかっている力加減で分かっている。
そうこうしている間に墓地の方に着くと、そこに見えたのは本来なら暗くてなにも見えないはずの墓地。 だが今は月明かりではない光が灯っている。
ホタルの淡い光も数がいれば煌々と輝きだす。 その光景を僕と安見さんは間近で見ることができた。
「これが館君のお父様の言っていた、奇跡というものなのでしょうか?」
「多分違うんじゃないかな? これくらいならこの時期のこの時間に来れば見れると思うんだ。」
「でもここに来る道中で歩いている人はいませんでしたよね?」
そう言われるとこれを見た人がいないのならばこの光景を奇跡とは言わないのかもしれない。
「館君は、どうしたいですか?」
「どうって?」
「この光景を誰かに教えますか?」
それはいつかのために残しておきたい。 だって、そうだと知ってしまったら、ホタル達が住みにくくなってしまうかもしれない。 ならば答えはひとつしかない。
「止めておくよ。 僕らのなかに留めておこう。」
「館君ならそう言ってくれると思いましたよ。」
本当にそういうことが分かっていたように、安見さんはクスクスと笑っていた。
「でも、誰かに伝えないと伝承にはならないよね。」
「そうですね。 私達・の子供達にでも伝えていきたいなと思ったりします。」
「・・・・・・・・・え?」
私・達・・・・? 聞き間違いだとは思うけれど・・・ そんな安見さんを見るとキョトンとしていた。
「館君、どうかしましたか?」
「・・・いや、なんでもない。」
気が付いていないのならばいいの・・・かな? 安見さんはどこか抜けている部分があるから、さっきの台詞も無意識かどうかも分からない。 意識しすぎてるのは僕だけかな? そんなことを思いながら僕はホタルの光景をずっと見ていた。
翌朝の帰る車の中で安見さんは終始俯いていたけれど、もしかして思い出してしまったのだろうか? 自宅に送るまで聞けずじまいになってしまったが、敢えて聞かない方が懸命だろうと判断してそのまま須今家の人達とお別れをした。
次に会うのは新学期前の事前登校日だろうか。
そんなことをずっと考えていたらいつの間にかみんなが寝る時間になっていた。
部屋はそれなりに多くあるので、家族間で分かれることにした。 隣で両親が寝ているが、僕だけはその神霊の話を聞いて考えていたせいで、寝れなくなってしまったのだ。
「まあ、明日帰るから、今寝れなくてもいいんだけどさ。」
誰も聞いていないのに独り言のように喋り始めてしまった。
・・・少し歩いたら眠気がくるかな? そう思い、僕は寝巻きのまま外へと出るのだった。
街灯が一切無いけれど、そこは月明かりと星の明るさで夜道でも普通に歩けるくらいに明るかった。 集落ではあるが、時間が時間なだけに、電気のついている家はない。 昔の風習である「夜は眠る時間」というものがまだ根付いているのか、ただ単純にやることがないのか。 夜道を歩きながらそんなことを失礼ながら考えていた。
そんな中で辿り着いたのは昼頃に訪れた古寺だった。
「・・・幻想的と言うべきか、はたまたなにかが出そうと言うべきか・・・」
月明かりに照らされた古寺、それはまさしく生と死の狭間にあるかのような不気味さと美しさを彩っていた。 美術に関してはあまり関心の無い僕でも中々に綺麗だと広言できるほどだった。
「ここは写真のひとつでも・・・って、お盆休みの時に写真なんて撮ったら何が写るか分かったもんじゃないだろうけど。」
そんなことをいいながら僕はスマホを構えて写真を撮る。 月明かりもしっかりと写り混んでいるので、幻想的な写真になってくれた。
「少しばかり夜風に当たろう。」
木々が生い茂って風が心地いい。 古寺とは言え階段は上らない。
ここで父さんは暮らしていた。 本当なら祖父母と一緒にここでお盆休みを過ごしていただろうと考えると、また色々と変わったのかもしれない。
「写真以外では見たことがないからなぁ。 会ってみたいとは思うけど・・・!?」
そんな事を言っていたら首筋に冷たい感覚が襲う。 ま、まさか、いやそんなことはないと信じてはいる。 僕は幽霊や神の存在はいないとは思ってはいない。 だが実際にこうして触れられていると言うことは・・・ 恐る恐る後ろを振り向くと・・・
「館君。 こんなところでなにをなさっているのですか?」
「あ、安見さん? なんだぁ・・・よかったぁ・・・」
正体が分かって安心した瞬間に、腰が抜けて、ゆっくりと座る。
「良かったとはなんですか。 私だってこんなところに人がいれば驚きますよ。」
「あ、もしかして僕を触ったのって・・・」
「・・・存在事態は信じているので。」
やっぱり幽霊だと思ったんだね。 でも首筋じゃなくてもいいんじゃなかったかな? こっちが心臓を持ってかれそうになったんだけど・・・
「ところでどうしてここに?」
「その子に連れてきてもらったんですよ。」
「その子?」
そう言うと僕の肩に乗っているホタルに指を指した。 どうやら連れられてきたというのは嘘ではないようだ。
そんなことを考えていると、ホタルは僕の肩から離れ、古寺の裏、墓地の方に飛んでいく。
「私たちをどこかに連れていこうとしているのでしょうか。」
そういうことなのだろうか? でもこの先は墓地だから、何もないような感じもするんだけれど・・・
しかし戻っても寝れる感じはしないので、ホタルに誘われて墓地の方に安見さんと向かう。 そこでなにが待ち構えているのか、もう僕らには予想が出来ない。
そして気が付くと、僕の腕に安見さんがしがみついていた。
「安見さん?」
「怖いわけではないです。 でもここで離れ離れになってしまっては帰れなくなるかもしれないので、こうして腕にしがみついているだけですので、決して怖いわけではないです。」
2回言うほど真剣になっているが、力の込められた方がなんというか尋常ではないのは僕の腕にかかっている力加減で分かっている。
そうこうしている間に墓地の方に着くと、そこに見えたのは本来なら暗くてなにも見えないはずの墓地。 だが今は月明かりではない光が灯っている。
ホタルの淡い光も数がいれば煌々と輝きだす。 その光景を僕と安見さんは間近で見ることができた。
「これが館君のお父様の言っていた、奇跡というものなのでしょうか?」
「多分違うんじゃないかな? これくらいならこの時期のこの時間に来れば見れると思うんだ。」
「でもここに来る道中で歩いている人はいませんでしたよね?」
そう言われるとこれを見た人がいないのならばこの光景を奇跡とは言わないのかもしれない。
「館君は、どうしたいですか?」
「どうって?」
「この光景を誰かに教えますか?」
それはいつかのために残しておきたい。 だって、そうだと知ってしまったら、ホタル達が住みにくくなってしまうかもしれない。 ならば答えはひとつしかない。
「止めておくよ。 僕らのなかに留めておこう。」
「館君ならそう言ってくれると思いましたよ。」
本当にそういうことが分かっていたように、安見さんはクスクスと笑っていた。
「でも、誰かに伝えないと伝承にはならないよね。」
「そうですね。 私達・の子供達にでも伝えていきたいなと思ったりします。」
「・・・・・・・・・え?」
私・達・・・・? 聞き間違いだとは思うけれど・・・ そんな安見さんを見るとキョトンとしていた。
「館君、どうかしましたか?」
「・・・いや、なんでもない。」
気が付いていないのならばいいの・・・かな? 安見さんはどこか抜けている部分があるから、さっきの台詞も無意識かどうかも分からない。 意識しすぎてるのは僕だけかな? そんなことを思いながら僕はホタルの光景をずっと見ていた。
翌朝の帰る車の中で安見さんは終始俯いていたけれど、もしかして思い出してしまったのだろうか? 自宅に送るまで聞けずじまいになってしまったが、敢えて聞かない方が懸命だろうと判断してそのまま須今家の人達とお別れをした。
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