須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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安見さんを看病

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「完全に風邪だね。 熱が出ているだけだから、ちゃんと寝ていれば、すぐに治るよ。」


 保健室に着いた僕は、保健の先生の指示のもとすぐに安見さんをベッドに寝かせて、状態を確認する。 それだけならばとホッとした。


「じゃあ僕は授業に戻るので、後はよろしくお願いします。」

「放課後に保健室に寄ってきなさいな。 君も、何かあったらすぐに来るんだよ。」


 そう言って保健室を去っていく。 朝からあのような調子だったのかと考えると、僕の確認不足だったなと思った。 安見さんの分も授業を受けないとなと、勝手な使命感で教室に戻るのだった。


 放課後になり、保健室に足を運ぶと、まだ安見さんはベッドで眠っていた。 頭には氷嚢があった。


「やっぱり熱が酷いんですか?」

「計ってみたら39度だったよ。 まだ動ける状態じゃないから、歩かせては帰せないね。」


 僕も昨日の時点でかなりの熱だったのを思い出して、確かに動けなくなるくらいに体が怠かったので嘘ではない。


「じゃあこのまま帰らせるのは難しいですよね。」

「帰りは先生が車で送ってあげるから、館君も一緒についてきて。」

「はい!・・・・・・はい?」


 勢いよく返事をした後に疑問の返事をする。


「え? 先生が送るなら僕は必要無いんじゃ・・・?」

「彼女の家は知らないぞ? それに男手は必要だろ?」

「それはそうですけど・・・」

「いいじゃないか。 君もついでに送るし、彼女をまたおぶっていけるんだ。 役得だろう?」

「・・・!!」


 安見さんをここに連れてくるときの事を思い出す。 あのときは冷静では無かったので忘れていたが、おんぶすると言うことはそれだけ安見さんと密着をするということになる。


「まあ別にそうなったところで誰かが指差す訳じゃないんだ。 少しくらい手伝ってよ。」


 そう先生が言うのであれば、手助けしないわけにはいかないと思った。



「ここの・・・家です・・・」


 あれから先生の車のなかで目が覚めた安見さんに、少しだけ道案内をしてもらって安見さんの家に着くことが出来た。


「安見さん歩ける? 肩貸そうか?」

「・・・すみません・・・」


 申し訳なさそうに肩に手を添える安見さん。 玄関前まで来たのはいいが、鍵は安見さんしか持っていないので、安見さんに取り出してもらうことにする。


「安見さん、他の家族はいないの?」

「姉さんも・・・味柑も・・・この時間ではまだ帰ってきません・・・それは母も同じです。」

「館君。 付き添ってあげなさい。 誰もいないよりは誰かがいてくれた方がいいだろうし。」

「え? でも・・・」

「家は近いんだろ? だったら私の役割はこれで終わりだ。 彼女も君の方が安心出来るみたいだし。」


 安見さんを見ると、少しだけだがどこかねだるような瞳をしていた。


「それじゃあね。 くれぐれも問題は起こさないでよ。」


 そう言って先生は去っていってしまった。 ど、どうしよう。


「とりあえず家に入って、横になろうか。」


 そういうと安見さんはコクリと頷いて、鍵を僕に貸してくれた。 今の自分じゃ開けることは出来ないようで、玄関のドアを開けるのだった。



「ジャー」


 僕は今台所でお湯を用意している。 流石に汗だくのまま寝かすわけにもいかないと思ったので、安見さんが体を拭けるように、用意しているのだ。 一応冷蔵庫の中のものと戸棚の中のものを拝借してホットミルクを作ることにした。 夏の時期にどうなんだろとは思ったが、あまり他人の冷蔵庫事情に触れるわけにはいかないので、最低限の出来ることで代用した。


 僕はお盆を借りて、安見さんの、正確には姉妹3人で使っている部屋に入る。 安見さんは今は自分が使用しているベッドに横になっている。 制服のままで。


「安見さん、お湯とホットミルクを用意したよ。 机に置いておくね。」

「・・・ありがとう・・・ございます。」


 お盆を置いた後、寝ている安見さんの近くに腰かける。 安見さんは申し訳なさそうな表情をしているが、僕は安見さんが風邪だと言われたから、看病を率先してやっているだけだ。 申し訳ないことなんで1つもないさ。 そんな風に思いながら僕は優しく微笑む。


 すると安見さんは唐突にスカートに手を伸ばして、チャックとホックを外して、寝転がったままスカートを脱いだのだ。


「ちょっ! ちょっと!? 安見さん!?」


 ボヤッとしていて反応が遅れてしまったので、数秒間だけ見てしまった。 安見さんの・・・パンツを・・・


「み、水色・・・」


 そんなことをポツリと言っていると、また別の布の擦れる音が聞こえてくる。


「安見さん!? 一体何してるの!?」


 僕がいるにも関わらずどんどん脱いでいるような雰囲気になって、なんだか訳の分からない気分になってくる。


「館君。」


 後ろから安見さんの声がする。 僕は全力で煩悩に抗いながら後ろを見ないようにしている。 それなのに名前を呼ばれたら振り向きたくなる。 でもそんなことをするのはダメだと脳が危険信号を発している。 僕の頭はパニック状態だ。


「背中・・・拭いてくれませんか?」


 そんな言葉を聞いて、僕の思考は完全に停止した。 僕が・・・安見さんの・・・体を・・・?


「だ、駄目だよ! 僕が安見さんの体を拭くなんて・・・そんなこと・・・」


 そんなことをしてしまったら、僕は確実に、確実におかしくなってしまう。 安見さんを友・達・と・し・て・見れなくなってしまう。 それだけは避けたい。


 そんな事を考えていたら、僕の頬になにかが触れる。 見てみると安見さんの手だった。 そしてその手は僕の顔を無理矢理後ろに振り向かせた。 するとかなり間近に安見さんの顔があった。 熱を帯びているせいなのか、安見さんが色っぽく僕を見ている。


「館君なら・・・触れられても・・・いい・・・です。」


 そんな肩まで肌が真っ赤になっている安見さんをただ見ることしか出来なくて、それでも目が離せなくて・・・


「お姉。 大丈夫? 朝辛そうだった・・・けど・・・」


 第3者の声が聞こえたのでドアの方を見ると、学校帰りの味柑ちゃんが僕らを見ていた。


「あー・・・お姉、元・気・に・な・っ・た・みたいだから大丈夫そうだね。 ごめんなさい、どうぞそのまま続けてください。」

「待って! 助けてとは言わないけど、せめて説明だけは・・・ 立ち去らないで~!」


 唐突な乱入者により我に返った僕は、味柑ちゃんを引き留めるのに必死になっていた。 誤解を解かないと、めちゃくちゃ面倒になる。 それだけは避けたかった。

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