須今 安見は常に眠たげ

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林間学校 夕方の行事

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豆腐料理を堪能(あの後豆腐アイスもご馳走になった。)して、その後は自由行動になっているのだが、せっかくだからと、みんなで森林浴としようと言うことにって。


 集合時間になるまで、森の中を散策したている途中で見かけたキノコを採取しようとしたが、どんなキノコなのか分からないということで諦めたり。


 川のせせらぎを聞いている途中で、江ノ島さんが被っていた帽子が風に飛ばされそうだったので、それを取るために軽くジャンプキャッチをしたら、着地した地面が苔だらけの石で、滑って顔から川にダイブしたり(帽子は無事だった)。


 奥までいって、滝を見つけて小舞君が「滝行しなきゃ漢じゃねぇ!」と言って、一張羅になって滝のなかに入ろうとしているのを止めたりと、なんだかんだで、自然を楽しんでいた。 僕ってこんなにもアグレッシブに外で遊んだことが無かったので、ある意味新鮮味を感じられた。


「館君。 川に顔面ダイビングをしたり、滝行をしに行こうとした小舞君を止めるために、滝下に入った後とはいえ、その清々しい顔が出来るのは流石です。」

「え? それ褒めてるの?」

「だって今の館君の姿をご自身で分かっていますか? 頭から足まで全身ずぶ濡れなんですよ? いくら今日が雲一つない晴天とはいえ、着替えないと風邪を引いてしまいますよ。」


 確かにそれは困るかも。 今は季節の変わり目だから余計に気を付けなければいけないのだ。


「みんなが集まる前に一回着替えてこよう。」

「そうすることをおすすめします。」


 そう言って僕達は時間がまだあるなかで一度旧校舎に戻るのだった。

 午後も6時を回り、みんな所定の場所に集まっていた。 こうして集まるとなんだかんだ多いもんだなぁ。


「生徒諸君。 林間学校は楽しんでいるかな? 夕方に行うのはキャンプファイアだ。 地域の人達が料理を振る舞ってくれたので、準備が終わるまでは食事を楽しんでくれ。」


 その先生の掛け声にみんな、キャンプファイアの木材を集めている場所を中心に食べ物を持って駄弁り始める。


「そういえばお風呂とかって、時間どうするんだろ?」

「源泉を管理している人によれば男女の入浴時間は敢えて指定はしないそうだ。」


 僕の素朴な疑問に答えてくれたのは、今回一緒に行動をしなかった坂内君だ。 料理の乗ったお皿を2つ持ってきていて、どうやら片方は僕の分用に取ってきてくれたらしい。


「え? じゃあ好きな時間に入れるってことなの?」

「流石に深夜帯には入らないでほしいとは言っていたようだがね。 朝風呂位なら出来るのではないか?」


 朝風呂かぁ・・・ 確かに日の光を拝みながら入るのも悪くないかもなぁ。 まぁ僕としての懸念はそこじゃなくて。


「君のことだから、なんだかんだで、入浴時間はずれるのではないかと考えているのではないか?」

「そりゃぁね。 いくら成績上位者の集いとはいえ、それはそれ、これはこれって輩はいるんじゃない?」

「それを防ぐための措置とも取れるがね。 自分達が入った時間帯に異性側には誰もいない。 それもあり得ると言うことだし、第一男女の温泉の仕切りはタイルだし、しきりの高さも一般人には到底登れない高さにしてあるらしいから、覗き対策も万全だ。」

「どこかに抜け道みたいなのがあっても、そこは先生が止めるだろうしね。」


 余計な心配のようで安心した。 ホッと安堵のため息をついていると、坂内君は「フッ」と軽く笑った。


「そんな心配など、普通は先生方がすることだ。 なんで君が心配しているのさ。」

「え? いやぁ、そう言われると・・・」


 何故だろうか? 思い当たる節が見当たらない。 坂内君の言う通り、なぜそんな心配をしたのか僕にも分からなくなった。


「まあ、なにを心配していたのかは知らないけれど、そんなことは忘れて、今はあれを楽しもうではないか。」


 坂内君の指差す先。 そこにはそろそろキャンプファイアの準備が整った様子の雰囲気を醸し出していた。 おーおー、パチパチと燃え上がっているなぁ。


「それではこれよりみんなには親睦を深めるためにフォークダンスをしてもらう。 男子同士女子同士どんな風でも構わない。 好きなようにペアを作って踊ってくれ。 5分たったら別の人と踊ってもらうぞ。 後同じ人とは踊らないようにしてくれよ。 それじゃあ、音楽を流すぞ。」


 そう言って唐突に始まった音楽。 フォークダンスならではの音楽が流れて、みんな戸惑ってはいたが、男子も女子も最初は仲良し同士で踊っているようだ。


「我々も行こうか? 館君。」

「普通こういうのって、男女の見せしめのためにやるんじゃないの?」


 そんなことを言いつつも僕は最初の5分を坂内君と踊る。 そして数分踊っていると一度音楽が途絶える、どうやら交代の時間のようだ。 この辺りからみんなの表情が少し怖いものと見えた。 なんだろうか、あの獲物をとらえる眼は。


「館、今度はあたしと踊ってよ。」


 そう声をかけてきたのは濱井さんだった。 目がランランとしている人達よりはましだったのでそのまま踊ることにした。


「今回はありがとうね。 林間学校、行けないかと思ったもん。」

「濱井さんも頑張ったからだよ。 これはそのご褒美なんじゃないかな?」

「あのメンバーの中じゃ一番馬鹿だけど、仲良くしてね。」


 音楽が途切れたので、濱井さんとお別れをする。


「た、館さん。 わ、私と、踊ってくれませんか?」


 次に声がかかったのは円藤さんだ。 勇気を振り絞ったかのように僕に声をかけたようだ。


「いいよ。 手を出して。」


 僕が手を差し出すと、円藤さんも手を差し伸べてくれる。 その手はとても小さく感じられた。


 音楽が流れて、周りが踊り出す。 僕らも同じ様に踊る。 しかし円藤さんは何故か俯いたままだった。


「円藤さん。 大丈夫?」

「あ、あの、館さんに、聞きたいことが、あるのです。」


 このタイミングで聞きたいこと? なんだろう?


「館さんは、背の低い、女の子は、嫌い、ですか?」


 どういう質問なのだろうか? 円藤さんが聞きたいことの意味が理解出来ない。 でも聞かれたからにはちゃんと答えないと失礼に値する。 うーん、背の低い女子・・・ねえ・・・


「嫌いじゃないよ。 むしろこう、抱くときに僕が包み込むように抱けるから、いいかもなって、思ったりもしなかったり。」


 自分の性癖を暴露しているみたいでなんだか恥ずかしいな。 普段はこんなこと言わないのに・・・


「そう、なんです、ね。」

「でもどうしてそんなことを聞いてきたの?」

「ふえ!? あ、えーっと、き、気まぐれです。 ただ踊ってる、だけというのも、悪いかなと、思って・・・」


 そういうとまた縮こまってしまい、そのままフォークダンスの時間も終わってしまう。


 キャンプファイアの最後に、みんなで「燃えろよ燃えろ」を歌って終わったが、安見さんと踊れなかったことに、少し寂しさが残った。

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