60 / 166
男子2人で
しおりを挟む
学校に戻って、裁縫室に置いてある鞄を取りに行って、僕と佐渡君が来たのは、チェーンレストラン店だった。 ここでは料理を頼めば、ドリンクバーも通常の半額以下で提供してくれるので、高校生の財布にとても優しいレストランだ。
それを利用して、夕飯を兼ねてここで時間を潰す学生の姿があちこち見える。
ここの経営は近隣の高校生で賄ってるんじゃないかと思えるくらいだ。
今は夕方前で、お店が混み始める前に席を確保できたので、安堵する。 とは言え、ここのレストランは小耳に挟んだ情報では、ほとんどの利用客が高校生、もしくは大学生が多く、家族連れが来ることの方が少ないんだとか。
「お水をお持ちいたしました。 料理がお決まりになりましたら、そちらの呼び出しボタンをお押しください。 それでは、ごゆっくりどうぞ。」
そう言ってウェイターさんが離れていく。
「僕の奢りだ。 好きなものを頼んでくれ。」
そうはいうものの、いざ注文となるとなにを選ぶやら。 ここはセットにしてお安く済ますのが一番かな? しかし色んなものがありすぎて目移りしてしまう。 ならばここは無難なものでいった方が良さそうかな?
料理を決めると、佐渡君の方を見た。 彼もまたメニューに釘付けになっていた。 その辺りも後で掘り下げる材料にしてもいいかも。
「佐渡君決まった?」
「む? うむ。 決まったぞ。」
「それじゃあ、店員さん呼ぶね?」
そう言って僕は呼び出しボタンを押す。 すると先程とは別のウェイターさんがやって来た。
「お待たせしました。 ご注文の方、お伺いいたします。」
「じゃあ、僕の方から。 僕はグリルハンバーグのセット一つ。」
「はい。 こちらグリルハンバーグのソースはいかがいたしますか?」
「あ、じゃあデミグラスソースで。」
「かしこまりました。」
「次は佐渡君の番だよ。」
「む、あ、ああ。 では、この、マカロニグラタンセットを・・・」
「はい。 かしこまりました。 他にはなにかございますか?」
「あ、あと、そ、そうだな。 こ、この・・・」
「山盛りフライドポテトですね。 以上でよろしいですか?」
「あ、いや、その・・・」
「あ、すみません。 ドリンクバー、先程の2つのセットと一緒に頼んでいいですか?」
「はい。 ではこちらのドリンクバー、下のお値段で対応させていただきます。 他にはなにかございますか?」
「以上で大丈夫です。」
「かしこまりました。 ドリンクバーの他に、スープバーも一緒にご利用頂けます。 容器はドリンクバー内にありますので、そこでご利用ください。 ではお料理が届きますまで、少々お待ちください。」
そういってウェイターさんは去っていった。 とりあえず僕はドリンクを取りに先に立ち、ドリンクバーコーナーに行って、コップを持って、機械から並々と野菜ジュースを注ぎ席に戻る。 それと入れ替わりで佐渡君も取りに行き、コップにメロンソーダを入れて戻ってきた。
「館 光輝君。 僕の話を聞いてくれるか?」
そのために呼んだんでしょ? とは敢えて言わない。 それは佐渡君の表情が真剣そのものだったからだ。 無駄口など叩けない。
「僕は君達の知っている通り成績は学年トップだ。 だが運動能力はない。 生まれてこのかた、体の動かし方を学んでこなかったせいで、これっぽっちも体が動かないのだ。」
人間なにかしらが秀でていれば、なにかが出来ないことがあることは良くある話だ。 それを否定するつもりはない。 むしろ「運動も出来るんだ」なんて言われた日には、それは妬みの対象になりかねない。 実際に何人かは彼に妬みを持ってそうだ。
「そして僕にはもう一つ、弱点がある。 いやこっちの方が深刻な悩みなのだ。」
僕はその言葉に固唾を飲み込んだ。
「先程のやり取りを見てもらえばわかるが、僕は女性に話しかけるのが苦手でね。 あんな感じで言動やらなにやらがおかしくなってしまうのさ。」
その事で、彼は悩んでいたのか。 しかし僕にとってはなんてことのない悩みでも彼にとっては重要な問題なのだ。
「あれ? それって女性だけ? 僕には普通に話できているよね?」
「基本的には女性だけだ。 君には先程「林間学校に来る人とは極力仲良くする」とは言ったが、実際女子と話そうとすると上がってしまい、中々会話が弾まないのが現状なのだ。」
「話は分かったけれど、何で僕に? クラスの男子とは話さなかったの?」
「参考に出来そうな人物に話をしてはみたのだが、返ってきた答えは同情か強行手段しか語られなかった。 短絡的過ぎて参考にならなかったよ。 他クラスではあったが女子と何気無い会話を出来ている君の姿を見て、同じ同級生として憧れを抱いたのさ。」
まさか学年トップの彼から憧憬をもらえるとは思わなかった。 そういうことなら僕も全力で答えなければ失礼だろう。
「佐渡君の思いは分かった。 僕で良かったらその相談、請け負うよ。」
「本当か!? 恩に切る! 館 光輝君!」
「頭をあげてよ佐渡君。 それとフルネームは長いだろうから、苗字で呼んでくれていいよ。」
「そうか。 では改めてよろしく頼む、館君。」
まさかこんな形で彼と仲良くなれるとは思っても見なかったけれど、僕も僕で嬉しい気持ちになってくる。
「お待たせしました。 山盛りフライドポテトになります。 ほかの料理も順次お持ちいたします。」
「ありがとうございます。」
「・・・早速聞きたいのだが、どうすれば、その、女子と気楽に話が出来るんだい?」
「まずは佐渡君は女子に対してどう見ているかじゃないかな? ほら、変に意識し過ぎるせいで、気分が上がっちゃって話せないとか。 面接のような感じになってるんじゃないかな? だから最初は日常会話程度に・・・」
こうして、僕と佐渡君の誰も知らない、2人だけの相談会に会話の華を咲かせた。 結構長居したお陰もあってか、佐渡君は少し自信を持てたようだ。 でも付け焼き刃はすぐに冷めてしまうので、定期的に行うことにすることも約束した。 みんなの知らない友情がここで芽生えた瞬間だった。
それを利用して、夕飯を兼ねてここで時間を潰す学生の姿があちこち見える。
ここの経営は近隣の高校生で賄ってるんじゃないかと思えるくらいだ。
今は夕方前で、お店が混み始める前に席を確保できたので、安堵する。 とは言え、ここのレストランは小耳に挟んだ情報では、ほとんどの利用客が高校生、もしくは大学生が多く、家族連れが来ることの方が少ないんだとか。
「お水をお持ちいたしました。 料理がお決まりになりましたら、そちらの呼び出しボタンをお押しください。 それでは、ごゆっくりどうぞ。」
そう言ってウェイターさんが離れていく。
「僕の奢りだ。 好きなものを頼んでくれ。」
そうはいうものの、いざ注文となるとなにを選ぶやら。 ここはセットにしてお安く済ますのが一番かな? しかし色んなものがありすぎて目移りしてしまう。 ならばここは無難なものでいった方が良さそうかな?
料理を決めると、佐渡君の方を見た。 彼もまたメニューに釘付けになっていた。 その辺りも後で掘り下げる材料にしてもいいかも。
「佐渡君決まった?」
「む? うむ。 決まったぞ。」
「それじゃあ、店員さん呼ぶね?」
そう言って僕は呼び出しボタンを押す。 すると先程とは別のウェイターさんがやって来た。
「お待たせしました。 ご注文の方、お伺いいたします。」
「じゃあ、僕の方から。 僕はグリルハンバーグのセット一つ。」
「はい。 こちらグリルハンバーグのソースはいかがいたしますか?」
「あ、じゃあデミグラスソースで。」
「かしこまりました。」
「次は佐渡君の番だよ。」
「む、あ、ああ。 では、この、マカロニグラタンセットを・・・」
「はい。 かしこまりました。 他にはなにかございますか?」
「あ、あと、そ、そうだな。 こ、この・・・」
「山盛りフライドポテトですね。 以上でよろしいですか?」
「あ、いや、その・・・」
「あ、すみません。 ドリンクバー、先程の2つのセットと一緒に頼んでいいですか?」
「はい。 ではこちらのドリンクバー、下のお値段で対応させていただきます。 他にはなにかございますか?」
「以上で大丈夫です。」
「かしこまりました。 ドリンクバーの他に、スープバーも一緒にご利用頂けます。 容器はドリンクバー内にありますので、そこでご利用ください。 ではお料理が届きますまで、少々お待ちください。」
そういってウェイターさんは去っていった。 とりあえず僕はドリンクを取りに先に立ち、ドリンクバーコーナーに行って、コップを持って、機械から並々と野菜ジュースを注ぎ席に戻る。 それと入れ替わりで佐渡君も取りに行き、コップにメロンソーダを入れて戻ってきた。
「館 光輝君。 僕の話を聞いてくれるか?」
そのために呼んだんでしょ? とは敢えて言わない。 それは佐渡君の表情が真剣そのものだったからだ。 無駄口など叩けない。
「僕は君達の知っている通り成績は学年トップだ。 だが運動能力はない。 生まれてこのかた、体の動かし方を学んでこなかったせいで、これっぽっちも体が動かないのだ。」
人間なにかしらが秀でていれば、なにかが出来ないことがあることは良くある話だ。 それを否定するつもりはない。 むしろ「運動も出来るんだ」なんて言われた日には、それは妬みの対象になりかねない。 実際に何人かは彼に妬みを持ってそうだ。
「そして僕にはもう一つ、弱点がある。 いやこっちの方が深刻な悩みなのだ。」
僕はその言葉に固唾を飲み込んだ。
「先程のやり取りを見てもらえばわかるが、僕は女性に話しかけるのが苦手でね。 あんな感じで言動やらなにやらがおかしくなってしまうのさ。」
その事で、彼は悩んでいたのか。 しかし僕にとってはなんてことのない悩みでも彼にとっては重要な問題なのだ。
「あれ? それって女性だけ? 僕には普通に話できているよね?」
「基本的には女性だけだ。 君には先程「林間学校に来る人とは極力仲良くする」とは言ったが、実際女子と話そうとすると上がってしまい、中々会話が弾まないのが現状なのだ。」
「話は分かったけれど、何で僕に? クラスの男子とは話さなかったの?」
「参考に出来そうな人物に話をしてはみたのだが、返ってきた答えは同情か強行手段しか語られなかった。 短絡的過ぎて参考にならなかったよ。 他クラスではあったが女子と何気無い会話を出来ている君の姿を見て、同じ同級生として憧れを抱いたのさ。」
まさか学年トップの彼から憧憬をもらえるとは思わなかった。 そういうことなら僕も全力で答えなければ失礼だろう。
「佐渡君の思いは分かった。 僕で良かったらその相談、請け負うよ。」
「本当か!? 恩に切る! 館 光輝君!」
「頭をあげてよ佐渡君。 それとフルネームは長いだろうから、苗字で呼んでくれていいよ。」
「そうか。 では改めてよろしく頼む、館君。」
まさかこんな形で彼と仲良くなれるとは思っても見なかったけれど、僕も僕で嬉しい気持ちになってくる。
「お待たせしました。 山盛りフライドポテトになります。 ほかの料理も順次お持ちいたします。」
「ありがとうございます。」
「・・・早速聞きたいのだが、どうすれば、その、女子と気楽に話が出来るんだい?」
「まずは佐渡君は女子に対してどう見ているかじゃないかな? ほら、変に意識し過ぎるせいで、気分が上がっちゃって話せないとか。 面接のような感じになってるんじゃないかな? だから最初は日常会話程度に・・・」
こうして、僕と佐渡君の誰も知らない、2人だけの相談会に会話の華を咲かせた。 結構長居したお陰もあってか、佐渡君は少し自信を持てたようだ。 でも付け焼き刃はすぐに冷めてしまうので、定期的に行うことにすることも約束した。 みんなの知らない友情がここで芽生えた瞬間だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど
夏目みや
恋愛
「ど、どうして私がラリエットになっているのよ!!」
これが小説の中だと気づいたのは、婚約者選びのパーティでのこと。
相手はゼロニス・ロンバルディ。侯爵家の跡継ぎで、暴君と噂されている。
婚約者が決まるまで、候補者たちはロンバルディの屋敷で過ごさせばならない。
ここから出るのは候補者を辞退するか、ゼロニスから「出ていけ」と命じられるかの二択。
しかも、私の立ち位置は──悪役令嬢のラリエット・メイデス。しかもちょい役で、はっきり言うとモブの当て馬。このままいけば、物語の途中であっさりと退場する。
なぜならゼロニスは、ここで運命の出会いを果たすのだから――
断罪されたくないとメイドに変装して働いていると、なぜかゼロニスの紅茶係に。
「好きだと言っている。俺以上の男などいないだろう」
なぜかグイグイとくるゼロニス。
ちょっ、あなた、ヒロインはどうしたの!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる