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全てを回るには?
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「ほーら! 記念写真! 記念写真!」
天祭さんが凄い高いテンションでスマートフォンを構えている。 今目の前の噴水広場のような場所で色んな人が集まっている。 ほとんどが家族連れが多いが一部はツアー客のようで、前のガイドの人と共に写真を撮っている。
「結構待ってるみたいだけど、大丈夫かな?」
「そうねぇ。 1日しかないから全部のアトラクションは回れないわねぇ。」
母さんも同じ意見のようで、今の状況を判断する。
「でもみんなが分かれるわけにはいかない。 一人一人で行けば、それは全部回れるだろうけれど、それではみんなで来た意味がない。 だから2~3つのグループに分かれよう。 最初は家族で回ることは朝の時点で決めていたし。」
父さんは対策を立てていたようで、最善の策を立てているようだ。
「ほらほら! 順番が来たよ!」
天祭さんが並んでくれていたお陰で僕らの番になったようだ。 多分従業員の人に天祭さんのスマートフォンを渡す。 ついでに僕のスマートフォンを渡して噴水広場の前に立つ。
「お姉、もう少しそっちよってよ。」
「はいはい。」
そう言って安見さんが僕の近くによってくる。 彼女の体が僕の腕に少しだけ触れる。 彼女は気づいているのかいないのか。
「では行きますよー! 3、2、1! ハイ!」
カシャリと軽快なシャッター音が聞こえた。 天祭さんのスマホを返すと、今度は僕のスマホを構え直す。
「光輝、もう少し奥にいってくれる?」
「安見、ちょっとしゃがんでくれる?」
母さんと音理亜さんがそれぞれの位置を指示するかのように僕と安見さんを移動させる。
「では行きますよー! 3、2、1! ハイ!」
カシャリと2回目のシャッター音を聞いて、僕のスマホを回収しに行く。
「彼女さんとの写真、良く撮れてますよ。」
別の人のところに行こうとしていた従業員の人の言葉を聞いて、撮られた写真をアルバムで見ると、もちろん撮られていたのはみんなで撮られたものだ。 ただし前にいる僕と安見さんの距離感があまりにも近かった。 みんなが僕らを動かしたのは任意的だったと、僕は感じた。
「光輝ー! 行くわよー!」
母さんの声で僕は後ろをついていく事にした。
「さてと、我々館ファミリーは絶叫系を任されることとなった! 2人とも、覚悟は出来ているか!?」
「おー!」
「お、おー?」
母さんはともかくとして、父さんのこのテンションの変わりようには流石に困惑を極めた。
「そんなわけで、この如月テーマパークの代名詞とも言える、この大型ジェットコースターに乗ることにした。 絶叫系は乗車したあとは長く楽しめる分、待ち時間がかなりある。 そのため、我々はこれひとつにまずは絞り、終わるまでの間に、須今ファミリーに別のアトラクションに乗ってもらってくるという算段にした。 感想とかも含めてね。」
急に素に戻る僕の父さん。 それは心臓に悪くなるからやめてもらいたい。
最後尾の部分を見てみると待ち時間が1時間と書いてあった。 それは長いのか短いのか、感覚では分からない。
「さて、並んでいこうか。」
こんなところで立ち止まっていても仕方ないと言わんばかりに父さんが並ぶ。 まあそういうことならと言った位に僕らも並ぶのだった。
「それで光輝。 あの安見って娘ことは上手くいっているかい?」
「父さん。 まだ会って1ヶ月だよ? そんな簡単に良し悪しを見ないでよ。」
「でもいい雰囲気なのは否定しないのね。」
「母さん・・・ 僕と安見さんはそんな関係じゃないんだってば。 二人して息子を信じないってどういうことさ?」
「別に疑っている訳じゃないよ。 ただ、父さんとしては段階が大事だと思ってるだけだよ。」
「段階?」
そう言った後に父さんは、母さんの方を見る。
「僕と陽子さんとだって、会ってすぐに「結婚しましょう」なんてしなかったさ。 ちゃんとした交際期間を得た上で今の僕らの家庭がある。」
父さんはいつになく真剣に、だけど真に僕にいいかけるように話を進める。
「青春を謳歌しようと思ったときに、色々な誘惑があるものだ。」
「昇さんって大学時代の時はそれなりにモテていたのよ。 下駄箱の中にラブレターとかもあったりしたって言ってたっけ。」
「だからもし光輝も誰これと女性を選んでほしくないんだ。 僕の性格に似ているからそんなことはないと信じてはいるけれど、光輝も選ばれた女の子も、「あぁこの人で良かった」と想えるくらいになってほしいんだ。」
「父さん・・・・・・」
もしかしたらここで僕が「安見さんと付き合っているんだ」と言ったら、こんな風に一緒にジェットコースターの列には並んでいなかったかもしれない。 拒絶とまではいかないまでも、何かしら否定はしていただろう。
「父さん・・・今僕は安見さんの事をどう見えてるのか分からないんだ。 最初は隣に座った女子としか見てなかった。 だけど、安見さんと色んな事をすると、胸の奥が少し熱くなるんだ。 安見さんの事を見ていると、放っておけないって思えるんだ。 この気持ちは、なんだと思う?」
「光輝、それは・・・」
「続いてのお客様。 どうぞお入りください。」
父さんがなにかを言おうとしたときに、受付の人にそう言われた。 どうやらいつの間にか最前列に来ていたようだ。
「昇さん。 光輝。 その話は後にして、今はジェットコースターを楽しみましょう?」
「・・・そうだね。 光輝、席は前の方と後ろの方、どっちがいい?」
「僕は前の方がいいかな。」
そう言ってジェットコースターに乗り込んで、発車と同時にそびえ立つ登りのレールで緊張をしていると、隣に座っている父さんから声がかかった。
「父さんと2人で話す機会を作ろう。 そこで光輝の気持ちをぶつけてくれないか?」
その言葉を聞き終わると同時にジェットコースターは下り始めて、後ろからは絶叫の声が聞こえたが、僕はむしろそれが心地いいと思うくらいだった。
実際終わった後の爽快感はすごかったし。
天祭さんが凄い高いテンションでスマートフォンを構えている。 今目の前の噴水広場のような場所で色んな人が集まっている。 ほとんどが家族連れが多いが一部はツアー客のようで、前のガイドの人と共に写真を撮っている。
「結構待ってるみたいだけど、大丈夫かな?」
「そうねぇ。 1日しかないから全部のアトラクションは回れないわねぇ。」
母さんも同じ意見のようで、今の状況を判断する。
「でもみんなが分かれるわけにはいかない。 一人一人で行けば、それは全部回れるだろうけれど、それではみんなで来た意味がない。 だから2~3つのグループに分かれよう。 最初は家族で回ることは朝の時点で決めていたし。」
父さんは対策を立てていたようで、最善の策を立てているようだ。
「ほらほら! 順番が来たよ!」
天祭さんが並んでくれていたお陰で僕らの番になったようだ。 多分従業員の人に天祭さんのスマートフォンを渡す。 ついでに僕のスマートフォンを渡して噴水広場の前に立つ。
「お姉、もう少しそっちよってよ。」
「はいはい。」
そう言って安見さんが僕の近くによってくる。 彼女の体が僕の腕に少しだけ触れる。 彼女は気づいているのかいないのか。
「では行きますよー! 3、2、1! ハイ!」
カシャリと軽快なシャッター音が聞こえた。 天祭さんのスマホを返すと、今度は僕のスマホを構え直す。
「光輝、もう少し奥にいってくれる?」
「安見、ちょっとしゃがんでくれる?」
母さんと音理亜さんがそれぞれの位置を指示するかのように僕と安見さんを移動させる。
「では行きますよー! 3、2、1! ハイ!」
カシャリと2回目のシャッター音を聞いて、僕のスマホを回収しに行く。
「彼女さんとの写真、良く撮れてますよ。」
別の人のところに行こうとしていた従業員の人の言葉を聞いて、撮られた写真をアルバムで見ると、もちろん撮られていたのはみんなで撮られたものだ。 ただし前にいる僕と安見さんの距離感があまりにも近かった。 みんなが僕らを動かしたのは任意的だったと、僕は感じた。
「光輝ー! 行くわよー!」
母さんの声で僕は後ろをついていく事にした。
「さてと、我々館ファミリーは絶叫系を任されることとなった! 2人とも、覚悟は出来ているか!?」
「おー!」
「お、おー?」
母さんはともかくとして、父さんのこのテンションの変わりようには流石に困惑を極めた。
「そんなわけで、この如月テーマパークの代名詞とも言える、この大型ジェットコースターに乗ることにした。 絶叫系は乗車したあとは長く楽しめる分、待ち時間がかなりある。 そのため、我々はこれひとつにまずは絞り、終わるまでの間に、須今ファミリーに別のアトラクションに乗ってもらってくるという算段にした。 感想とかも含めてね。」
急に素に戻る僕の父さん。 それは心臓に悪くなるからやめてもらいたい。
最後尾の部分を見てみると待ち時間が1時間と書いてあった。 それは長いのか短いのか、感覚では分からない。
「さて、並んでいこうか。」
こんなところで立ち止まっていても仕方ないと言わんばかりに父さんが並ぶ。 まあそういうことならと言った位に僕らも並ぶのだった。
「それで光輝。 あの安見って娘ことは上手くいっているかい?」
「父さん。 まだ会って1ヶ月だよ? そんな簡単に良し悪しを見ないでよ。」
「でもいい雰囲気なのは否定しないのね。」
「母さん・・・ 僕と安見さんはそんな関係じゃないんだってば。 二人して息子を信じないってどういうことさ?」
「別に疑っている訳じゃないよ。 ただ、父さんとしては段階が大事だと思ってるだけだよ。」
「段階?」
そう言った後に父さんは、母さんの方を見る。
「僕と陽子さんとだって、会ってすぐに「結婚しましょう」なんてしなかったさ。 ちゃんとした交際期間を得た上で今の僕らの家庭がある。」
父さんはいつになく真剣に、だけど真に僕にいいかけるように話を進める。
「青春を謳歌しようと思ったときに、色々な誘惑があるものだ。」
「昇さんって大学時代の時はそれなりにモテていたのよ。 下駄箱の中にラブレターとかもあったりしたって言ってたっけ。」
「だからもし光輝も誰これと女性を選んでほしくないんだ。 僕の性格に似ているからそんなことはないと信じてはいるけれど、光輝も選ばれた女の子も、「あぁこの人で良かった」と想えるくらいになってほしいんだ。」
「父さん・・・・・・」
もしかしたらここで僕が「安見さんと付き合っているんだ」と言ったら、こんな風に一緒にジェットコースターの列には並んでいなかったかもしれない。 拒絶とまではいかないまでも、何かしら否定はしていただろう。
「父さん・・・今僕は安見さんの事をどう見えてるのか分からないんだ。 最初は隣に座った女子としか見てなかった。 だけど、安見さんと色んな事をすると、胸の奥が少し熱くなるんだ。 安見さんの事を見ていると、放っておけないって思えるんだ。 この気持ちは、なんだと思う?」
「光輝、それは・・・」
「続いてのお客様。 どうぞお入りください。」
父さんがなにかを言おうとしたときに、受付の人にそう言われた。 どうやらいつの間にか最前列に来ていたようだ。
「昇さん。 光輝。 その話は後にして、今はジェットコースターを楽しみましょう?」
「・・・そうだね。 光輝、席は前の方と後ろの方、どっちがいい?」
「僕は前の方がいいかな。」
そう言ってジェットコースターに乗り込んで、発車と同時にそびえ立つ登りのレールで緊張をしていると、隣に座っている父さんから声がかかった。
「父さんと2人で話す機会を作ろう。 そこで光輝の気持ちをぶつけてくれないか?」
その言葉を聞き終わると同時にジェットコースターは下り始めて、後ろからは絶叫の声が聞こえたが、僕はむしろそれが心地いいと思うくらいだった。
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