須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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自分の趣味には正直に

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「いやぁ、お待たせ。 中々に見応えがあってさ。 ついついあれやあれやと見てきちゃたぜ。」

「今回は購入を断念したのですが、次の機会の時には是非とも購入をしたいところです。」


 小舞君と江ノ島さんの2人は心底満足そうに語っていた。 2人が楽しそうならそれでいいのだが。


「では次の場所に行きましょうか。」

「とは言えここの階層はこれ以上は無さそうだ。 上の階へと進もうではないか。」


 坂内君が言うように、5階フロアは先程の4店舗が広々と使っているので、もう見るものがないのだ。


 そう言うことなのでエレベーターで上の階へと進む。 6階に到着して早速目に入ったのはアニメグッズ専門店だった。 しかもご丁寧に男性用と女性用でフロアが分かれている。 なんというか、分かりやすい造りだなと思ってしまう。


「まぁ、わざわざ分けてくれてる訳だし、それぞれで見に行こうか。 見終わったら合流と言うことで。」


 そう僕が提案するとみんなも納得してくれたようで、男女で分かれることとなった。


 中を見てみると、予想通り男の子が好きなヒーロー物から僕ら位の高校生が好きそうな漫画やアニメのグッズが置かれていた。 だがここにいる3人は生粋のオタクとかではないので、盛り上がりに欠けていた。 そんな感じで適当に自分達が見ていたアニメのグッズをチラリと見たくらいで直ぐに出てきてしまう。


「なーんかもっとマニアックなの無いかなって思ってたけど意外と普通だったな。」

「君は何を期待していたんだい? あんなものじゃないのかい?」

「小舞君が見たいものは多分もっと都会の中じゃないと無いんじゃないかな?

 ここは普通の人たちが来るからそういうのは売ってないかもね。」


 個人的な感想を交えながら、女子達を待っていた。 だが意外にも女子達の方が長かったのだ。


「あれえ? 随分と長いねぇ?」

「今は女性向けの方が多かったりするから、それでなにか見つけたんじゃない?」


 とは言うものの僕らが出てきたときよりも明らかに遅い。


「どうする?」

「どうするって言ったって・・・・・・ 待つしか無いでしょ。 下手に入るよりは断然いい。」

「館君の意見に賛成だ。 我々だけ移動するのは、はぐれる可能性がある。 特に今日のような大きい連休の時は尚更だ。」


 座っているベンチから回りを見るとあちらこちらで親子連れが見える。 人が多く集まる時間なだけあってかなりの人口密度だ。 これは下手に動けない。


 そんなことをしていると女子勢が出てくる。 どうやら見学は終わったようだ。


「おっ待たせー! ごめんね。 色々と見て回っちゃった。」


 濱井さんはそう謝っているが、実際に買ってきているのは円藤さんのみだった。


「円藤さん。 なに買ってきたの?」

「え!? あ! ま、漫画ですよ、漫画! 最新巻があったのでそれも含めて買ってきました。」

「へぇ、円藤さんが漫画を読むのはさっき聞いたけれど・・・・・・あれ? じゃあなんでさっきの本屋で買わなかったの?」

「えっとその・・・・・・ そう言った本は普・通・の・本屋さんでは扱っていないので・・・」


 その言葉でふと考える。 先程のフロアの本屋だってかなり大きかった。 それでも無い品物って・・・・・・


「さ、さぁ次に行きましょうみなさん!」

「それもそうだね。 館君、行くよ?」

「え? あ、うん。 すぐ行くよ。」


 考えてもしょうがないか。 そう思い、直ぐに歩き始めた。

 次のお店は、ついに辿り着いた、念願の手芸店である。 右から左まで手芸関係の商品が沢山並んでいる。


「っはぁー。 やっぱり凄いなぁ・・・ 僕も見たこと無い商品もある。 今なら模型店を見ていた小舞君の気持ちが分かるようだよ。」

「あんなに目をキラキラとさせた館は初めて見るぜ。 いや、実際に目は輝いてないけどよ。」

「何より楽しみにしていましたからね。 私も館君の手芸技術は凄いと思いますし。」


 後ろでなにか会話が繰り広げられているが今は目の前の光景で忙しいので全く内容が入らない。


「とりあえずまずは糸からだよね。 僕のところだとあんまり多くの種類無いから、こうして見てるだけでも本当に圧巻だよ。」


 そう言って僕は自分の持ってない色の糸を数種類持っていく。


「館君、これとかはどうですか? なんでも糸切りバサミ用の紙ヤスリだとか。」

「ほんと? 見せて見せて。」


 そう言って安見さんの持っている紙ヤスリを見てみる。 よく見てみると、その紙ヤスリには光沢がある。 どうやら砥石に使う素材の一部が入っているようだ。


「確かにすごいけど、糸切りバサミって結構危ないから、僕はあまり研がないんだよね。 でもこれなら研ぐことが出来そうだね。」


 そう言って安見さんの持っている紙ヤスリの入った袋を貰おうとしたとき、また少し安見さんの手に触れてしまう。 前回の事があるので、触れた瞬間に手を引っ込める。


「あっ、ご、ごめん。 安見さん。」

「いえ、大丈夫ですよ。 どうぞ。」


 そう言って袋を手渡してくれる安見さん。前回のあれはたまたまだったのかそれとも・・・ 少しばかりモヤモヤが心を支配した。


 僕が手芸店で色々と買い終えてお店から出ると、みんなが外で待っていた。


「お帰り館君。 随分と買ったんだね。」

「これでも安い方だよ。 でもこれで色々と出来る幅が広がりそうだよ。」

「それは良かったな。 じゃあ次は・・・・・・」


 ぐぐぐ~っ


「・・・昼飯にしねぇか?」


 お腹の音を鳴らした小舞君の意見に、みんな賛同して、すぐ近くのエレベーターに乗り込んでフードコートのある2階へと降りる事にした。 丁度お昼時だけど、どんなお店があるのかな?

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