須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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予定を立てよう 後編

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「さてさて、今回館と須今さんによる、ゴールデンウィークのお出かけ計画をみんなで考えていこうと思う。」


 その日のお昼休み。 今回一緒に出掛けるメンバーをお昼休みになる前に声をかけて、今はそのメンバーで集まってお昼を囲っている。


 因みにメンバーは、発案者の僕と安見さん。 男子側は坂内君と小舞君。 女子側は濱井さんに江ノ島さん。 そして近くで会話を聞いていた円藤さんと、いわゆる、球技大会の時に集まったメンバーで行こうということになった。 元々僕と安見さんだけで言い出した事なので、大人数にならないのはしょうがないことだ。 実費だということも承諾済みだ。


「館君。 今回このような企画に誘ってくれてありがとう。 さすがに長期休みともなると、やることが空回りしそうでね。」

「それは良かったよ。 まぁ1ヶ月しか経ってないとは言え、それなりに話した仲だからね。 親睦を深めるのも大事かなって。」

「私はやっぱり水族館がいいと思うのです。 暖かくなってきていますし、ペンギン達のお散歩が見えるかもしれないですし、なによりイルカのショーが見たいです!」

「えー? やっぱり楽しむなら遊園地でしょ! みんなでキャーキャーしたいよぉ!」

「俺たちはそんなキャイキャイ出来ないぜ? というかそんなやつ今時いねぇだろ。」


 みんながみんなそれぞれ意見を出しあっている。 こうして友人と遊ぶというのはなんだか楽しみが増えるようでなかなかにいい。


「館はなんかないか? みんなで楽しめるような場所。」

「僕は遠いけれど、最近出来た大型のデパートに行ってみたいな。 この時代にデパートってなかなか強気だと思うし、色々と見れて楽しそうじゃない?」

「それは館君が欲しいものがないか探しにいきたいだけなのでは?」

「あ、分かっちゃった? いやぁ、いつも行ってる近くの店だと品揃えが増えにくいからさ。 いい機会だしと思ってさ。」


 安見さんに指摘をされて頬をかく。 皆で行くというよりも、個人的な買い物として行くかもと考えてしまったことに反省する。


「わ、私は、デパートでもいいと、思います。」


 そう声をあげたのは円藤さんだった。 普段意見を自分からは主張しなさそうな彼女からの援護が来るとは思ってもみなかった。


「おー。 意外なところから来たな。 円藤もなにか買いたいものでもあるのか?」

「あ、え、えっと。 ほ、ほらその館さんが行きたがっているデパートって、上から下まで色々な商品のお店が建ち並んでいるそうなんですよ。 ほら。」


 円藤さんはそう言いながら手元のスマートフォンで検索していたデパートの一覧を見せる。 そこにはお店の名前がズラリと並んでいた。 階層によって扱ってる商品も違うので、確かにこれは見に行く価値はありそうだ。


「あ、このお店。 大都会では有名なお店だよ。 さすがは大型なだけあってこのような場所の進出しているのか。」


 坂内君もなにか気になるようなお店があったようで、興味を示している。


「見てください小舞さん。 ここのオモチャ専門店、スプレーやデッサンナイフまでありますよ。」

「何!? この辺りのオモチャ屋じゃ扱ってなかったから諦めてたけど・・・嬉しいねぇ。 こういう模型関係のアイテムが揃ってるお店があるって。」


 小舞君と江ノ島さんも興奮気味にそのお店の概要をみていた。


「うーん。 私は今はそんなに欲しいのとかはないかな。 この前シューズも買っちゃったし。」

「濱井さん。 ここのデパート、屋上がゲームセンターのようになってるみたいですよ?」

「え? あ、本当だ。 だったら私はここにいようかな?」


 どうやら着々と行くことが決まってきているようだ。

「よっしゃ! 今回企画したのは館だし、このデパートにしようか! 日程はどうする?」

「ゴールデンウィークの真ん中辺りに行くのはどうかな? 人混みはありそうだけれど、イベントもあるようだから、あまり影響はないと思える。」

「じゃあデパート行きのバス停で9時集合にしようよ! このバスなら直通で行けるみたいだし。」

「分かりました。 家族と予定を合わせてみます。」

「なんだかんだ楽しみになってきたぜ!」


 まとまって本当に良かったと思う。 そんなことをしていたら次の授業の予鈴がなる。 どうやらお昼休みは終わりを迎えるようだ。 それぞれの席に戻ろうとするとき


「あ、円藤さん。」


 僕は円藤さんを呼び止める。 円藤さんも呼び止められたのでこちらを向く。


「なんですか? 館さん。」

「さっきはありがとうね。 確かに個人的に行きたかったんだけれど、やっぱり初めて行くならみんながいいかなって思ってさ。」

「い、いえ。 私も館さんのお役に立てて嬉しいです。 それではまた。」


 そういって席に戻る円藤さん。 すると隣から肩をチョンチョンと叩かれる。 見ると安見さんが真剣な顔をしていた。


「やっぱり誘わない方がよかったかもしれませんね。」

「え?」

「まあいいです。 館君がそういうことなら気にしません。 おやすみなさい。」


 そういって安見さんはふて寝をし始めてしまう。 その様子を見ていると、授業開始のチャイムがなった。 隣で寝てしまった安見さんの為にもまたノートを取らなければならないなと、ため息をついてしまった。


 部活のために裁縫室へといき、時間の許す限り布に糸を通して、気がつけばあっという間に下校時刻になっていた。 先輩方々に「お疲れ様です」と声をかけて、裁縫室を出ると、逆方向の調理室からも生徒が出てくる、どうやら料理の方の部活も終わったようだ。 さあ帰ろうかと思ったときに、不意に腕を引っ張られる。 何事かと思って振り返るとそこには安見さんが僕の腕を取っていた。 そしてこう一言僕に言ったのだった。


「今日は一緒に帰りませんか? 貴方に渡したいものとお話ししたいことがありますので。」


 まだ決して日が落ちることはない夕焼けの空に、安見さんのそんな声がやけに耳に残った。

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