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球技大会1日目 後半
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そしてドッジボールの試合が始まった。 最初のボールの主導権を握ったのは敵チーム。 相手は女子なのでそこまで驚異ではない。 とは言えそのボールを持った敵クラスの女子は端を狙って投げつける。
それもそのはず外野と区別をつけるための白線の角には4~5人ほどのうちのクラスの女子が集まっていたからだ。 しかもその集団も、自分が後ろに下がりたいが如く、固まってる女子達でやんややんやしている。 髪の色は黒だが明らかにコギャルっぽい感じの女子だった。 多分やる気の無い集団のひとつだろう。
今回は投げたボールは運良く当たらず、ツーバウンドしたのち敵外野に渡る。 そして角を狙い、今度は当たる。 そしてこぼれ球を拾ってボールの主導権を握る。 基本はそれの繰り返し。 非常に分かりやすい球技、それがドッジボールだ。
さて、誰向けに1人で脳内解説をしているのだろうか。 僕も試合に集中し直さなければ。 必ず勝とうとは思ってはいないが、せめて一勝くらいはしたい気もする。 そんな想いがある。
僕はボールが取りやすいように少々後ろの方にいる。 そうすれば誰かが当たったときのリバウンドで回収出来る可能性があるからだ。 それに内野の状況も分かりやすい。 前に作戦を一緒に考えてくれたメンバーはまだ残ってるし、濱井さんや小舞君は積極的に攻撃を仕掛けている。 坂内君や江ノ島さんも邪魔にならない所に陣取っているおかげでやりやすい。
円藤さんはあまり競技として参加できていないが、常に動き回っているため、まだマシなレベルだ。 そして安見さんは僕のさらに後ろにいる。 彼女もまた同じ考えの戦いかたをするだろう。
そんな感じで試合は7分を経過した。 こちらが少し優勢のまま進んでいる。
「このままなんとか・・・」
上手いこといっていたのだが、ここで不思議な事が起きる。
敵ボールになり、持っていた男子からボールが飛んできたのでそれを避ける。 外野からもボールがきたので、避ける。 内野の男子から飛んでくる、避ける。 外野からも来る、避ける。
なんだか相手の男子が投げたボールが僕を集中的に狙い始めたのだ。 しかも投げてくる男子の顔たるや、血眼のような感じなのだ。 その状況を、他の人が狙われないと言う考えでいくのか、なぜ僕だけと考えるのか、その狭間にあった。
そうまでして僕に拘る理由は分からないが、ここまで集中的に狙われては避けるのも限界が近づいてくる。
「っあ!」
ボールが右肩にぶつかり、宙を舞っていく。 投げた男子は僕に当てれてガッツポーズを取っている。 外野に行っても当たり障りはないのでこのまま身を任せようかと思った時、
「よっ・・・とと。」
後ろを振り返ると空中のこぼれ球を拾ってくれた安見さんの姿があった。 ボールを落としそうになったが、問題なく彼女の手の中に収まっていた。
「ありがとう安見さん。」
「後ろは任せてください。 ここから反撃といきます。」
その安見さんの一声から、敵チームにほとんどボールの主導権を握らせることなく勝利を得た。 まずは一勝って所だね。 でもなんであんなに僕のことを狙ってきたんだろ? 試合終わりで休憩をしていた僕のところに坂内君がやってくる。 彼も先ほどの試合の中で健闘はしていたが残念ながら最後の最後は外野に行ってしまった。
「君の疑問を私が答えてあげよう。 なぜあの時君が狙われ続けたのか。 それは数分前に君達に起きた出来事に嫉妬していたからだよ。」
「数分前?」
数分前の出来事って・・・・・・・・・ 安見さんが上に乗っかっていた状態を思い出して顔を赤らめる。
「その様子だと分かってはいるようだね。」
「いや、あれはその、安見さんが怪我をしないように、僕が割り込んだんだけと・・・・・・」
「分かっているさ。 助けようとしていたことはね。 だけど事情を知らない彼らには、あまり見たくないものを見せられたようなものだ。 しかも思春期真っ盛りの今なら、尚更ね。」
分かってもらえるだけでも十分だよ。 僕だってあんなのは心臓に悪いからあまりしたくはない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも今度は事故じゃなくやってもらいたいと思っていたのもまた事実。
試合はその後お昼休憩も挟みつつ順調に進み、僕らのクラスの今日最後の試合まで事が進んだ。 ここまでの戦績は3勝2敗。 ここで勝てれば優勝へと一歩近づく。 そんな最終戦だ。
今回の有力者は矢藤君。 今までの試合ではあまり活躍してこなかったが、ここに来ての大奮闘。 2連敗からの2連勝へと持っていってくれた人材だ。 この調子で最後まで頑張っていこうと思う。 ボールを持った瞬間にチラリチラリと後方を見るのは癖なのだろうか? いや、視線の先には円藤さんがいる。 いいところを見せたいんだなぁ。
試合は残り5分を切り、外野からの攻撃にも注意を払わなければいけない時間になった。 未だに敵チームの猛攻が激しい。 内野から次々と味方が外野に行ってしまう。 このままではまずいけれど、ボールがなかなか取れないのもある。 そんなとき、敵チームの女子の一人が投げたボールが矢藤君に向かって投げられる。 そんなに速い球でもないためもちろん彼は避ける。 しかしその先には円藤さんがいた。 しかも円藤さんは矢藤君の体があったせいでボールが飛んできていたことが見えていなかったようで、反応が遅れ直撃コースに入ってしまう。
それに矢藤君は気が付いていないようで、すぐに回避体勢に入っていた。
「くっ、間に合え・・・!」
今の場所から距離があった上に円藤さんに当たったボールは床すれすれまで落ちそうになっている。 それでも体を最大限に使ってダイビングキャッチを成功させた。 肘をおもいっきり打ったため滅茶苦茶痛いが、それよりも試合の方が重要なので痛みを気にしてはいられない。
円藤さんの方を見て少し安心してから手に持ったボールを外野に投げる。 正直これ以上は試合に貢献出来そうにない。
その後試合は勝利を納めた。 僕の頑張りは無駄ではなかったが、代償はそこそこ大きかった。 明日は控えめに行動しなきゃ。
それもそのはず外野と区別をつけるための白線の角には4~5人ほどのうちのクラスの女子が集まっていたからだ。 しかもその集団も、自分が後ろに下がりたいが如く、固まってる女子達でやんややんやしている。 髪の色は黒だが明らかにコギャルっぽい感じの女子だった。 多分やる気の無い集団のひとつだろう。
今回は投げたボールは運良く当たらず、ツーバウンドしたのち敵外野に渡る。 そして角を狙い、今度は当たる。 そしてこぼれ球を拾ってボールの主導権を握る。 基本はそれの繰り返し。 非常に分かりやすい球技、それがドッジボールだ。
さて、誰向けに1人で脳内解説をしているのだろうか。 僕も試合に集中し直さなければ。 必ず勝とうとは思ってはいないが、せめて一勝くらいはしたい気もする。 そんな想いがある。
僕はボールが取りやすいように少々後ろの方にいる。 そうすれば誰かが当たったときのリバウンドで回収出来る可能性があるからだ。 それに内野の状況も分かりやすい。 前に作戦を一緒に考えてくれたメンバーはまだ残ってるし、濱井さんや小舞君は積極的に攻撃を仕掛けている。 坂内君や江ノ島さんも邪魔にならない所に陣取っているおかげでやりやすい。
円藤さんはあまり競技として参加できていないが、常に動き回っているため、まだマシなレベルだ。 そして安見さんは僕のさらに後ろにいる。 彼女もまた同じ考えの戦いかたをするだろう。
そんな感じで試合は7分を経過した。 こちらが少し優勢のまま進んでいる。
「このままなんとか・・・」
上手いこといっていたのだが、ここで不思議な事が起きる。
敵ボールになり、持っていた男子からボールが飛んできたのでそれを避ける。 外野からもボールがきたので、避ける。 内野の男子から飛んでくる、避ける。 外野からも来る、避ける。
なんだか相手の男子が投げたボールが僕を集中的に狙い始めたのだ。 しかも投げてくる男子の顔たるや、血眼のような感じなのだ。 その状況を、他の人が狙われないと言う考えでいくのか、なぜ僕だけと考えるのか、その狭間にあった。
そうまでして僕に拘る理由は分からないが、ここまで集中的に狙われては避けるのも限界が近づいてくる。
「っあ!」
ボールが右肩にぶつかり、宙を舞っていく。 投げた男子は僕に当てれてガッツポーズを取っている。 外野に行っても当たり障りはないのでこのまま身を任せようかと思った時、
「よっ・・・とと。」
後ろを振り返ると空中のこぼれ球を拾ってくれた安見さんの姿があった。 ボールを落としそうになったが、問題なく彼女の手の中に収まっていた。
「ありがとう安見さん。」
「後ろは任せてください。 ここから反撃といきます。」
その安見さんの一声から、敵チームにほとんどボールの主導権を握らせることなく勝利を得た。 まずは一勝って所だね。 でもなんであんなに僕のことを狙ってきたんだろ? 試合終わりで休憩をしていた僕のところに坂内君がやってくる。 彼も先ほどの試合の中で健闘はしていたが残念ながら最後の最後は外野に行ってしまった。
「君の疑問を私が答えてあげよう。 なぜあの時君が狙われ続けたのか。 それは数分前に君達に起きた出来事に嫉妬していたからだよ。」
「数分前?」
数分前の出来事って・・・・・・・・・ 安見さんが上に乗っかっていた状態を思い出して顔を赤らめる。
「その様子だと分かってはいるようだね。」
「いや、あれはその、安見さんが怪我をしないように、僕が割り込んだんだけと・・・・・・」
「分かっているさ。 助けようとしていたことはね。 だけど事情を知らない彼らには、あまり見たくないものを見せられたようなものだ。 しかも思春期真っ盛りの今なら、尚更ね。」
分かってもらえるだけでも十分だよ。 僕だってあんなのは心臓に悪いからあまりしたくはない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも今度は事故じゃなくやってもらいたいと思っていたのもまた事実。
試合はその後お昼休憩も挟みつつ順調に進み、僕らのクラスの今日最後の試合まで事が進んだ。 ここまでの戦績は3勝2敗。 ここで勝てれば優勝へと一歩近づく。 そんな最終戦だ。
今回の有力者は矢藤君。 今までの試合ではあまり活躍してこなかったが、ここに来ての大奮闘。 2連敗からの2連勝へと持っていってくれた人材だ。 この調子で最後まで頑張っていこうと思う。 ボールを持った瞬間にチラリチラリと後方を見るのは癖なのだろうか? いや、視線の先には円藤さんがいる。 いいところを見せたいんだなぁ。
試合は残り5分を切り、外野からの攻撃にも注意を払わなければいけない時間になった。 未だに敵チームの猛攻が激しい。 内野から次々と味方が外野に行ってしまう。 このままではまずいけれど、ボールがなかなか取れないのもある。 そんなとき、敵チームの女子の一人が投げたボールが矢藤君に向かって投げられる。 そんなに速い球でもないためもちろん彼は避ける。 しかしその先には円藤さんがいた。 しかも円藤さんは矢藤君の体があったせいでボールが飛んできていたことが見えていなかったようで、反応が遅れ直撃コースに入ってしまう。
それに矢藤君は気が付いていないようで、すぐに回避体勢に入っていた。
「くっ、間に合え・・・!」
今の場所から距離があった上に円藤さんに当たったボールは床すれすれまで落ちそうになっている。 それでも体を最大限に使ってダイビングキャッチを成功させた。 肘をおもいっきり打ったため滅茶苦茶痛いが、それよりも試合の方が重要なので痛みを気にしてはいられない。
円藤さんの方を見て少し安心してから手に持ったボールを外野に投げる。 正直これ以上は試合に貢献出来そうにない。
その後試合は勝利を納めた。 僕の頑張りは無駄ではなかったが、代償はそこそこ大きかった。 明日は控えめに行動しなきゃ。
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