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保健室での一時
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「・・・ん。 ・・・・・・・・・あれ?」
目を覚ますと見慣れない部屋にいた。 それ以前になんでこの場所にいるのか記憶がない。 僕の身に何があったのだろうか? なんだっけ?
「おはよう、気分は・・・あまり良くはなさそうね。 なにが起きてるのか分かってないって顔してる。」
カーテンが開けられて、覗いてきたのは、白衣を来ていて眼鏡をしている、30代前半位の女性だった。
というかこの人には見覚えがある。 確か保健室の先生だったはずだ。 ということはここは保健室な訳か。
「僕・・・どうやってここに来ました?」
「あぁ、君はずっと眠っていたからね。 坂内って男子生徒が肩を使って君を連れてきたよ。 もうかなり大変そうだったよ。 彼の方が身長が低いのに、引きずりながらも連れてきたんだもん。」
それは本当に申し訳無いことをしたな。 今度そのお礼をしなきゃ。
「それとそこで寝てる彼女は、君が起きるまで一緒に見てるって言って、寝ちゃったみたい。」
そう言って保健の先生の逆方向を見ると、椅子に座りながらウトウトと寝ている安見さんの姿だった。
「彼女も心配していたからね。 もうすぐ授業は終わるけど、怪我の状態を考慮してもう少し寝てなさい。 顔面と後頭部を殴打して、足も擦り傷が多いから、下手に動くと痛みが出るから。」
先生はカーテンを閉める。 僕は氷枕に後頭部を委ね、保健室の天井を見上げる。
「はぁ・・・」
あまりにもいきなりなことで溜め息が出てしまう。 高校に入ってこんなに早く保健室のお世話になるとは思わなかった。 しかも保健室備え付けのベッドまで借りて。
情けないとは言わないが、どうしてこうなったのだろうと考えてしまう。
「・・・・・・・・・ん。」
頭を思考放棄していたら、声がした。 その声の方を向くと安見さんが眠りから覚めたようで、眠気眼を擦っていた。
「・・・・・・あ、お目覚めになられましたか?」
「うん。 そっちも今起きたようだね。」
そんな脳が回ってないのが分かるような会話をお互いにする。 安見さんが起きたので事情を説明してもらおう。
「ねぇ安見さん。 僕はどうして保健室にいるのかな?」
「矢藤君が投げたボールが館君の顔に直撃して、その反動で館君がおもいっきり後ろに仰け反って、そのまま床に頭をぶつけたという訳です。 まだ顔に痛みがあると思います。」
「そっか。 よっと・・・」
「あ、駄目ですよ! 今体を起こしたら・・・」
そんな忠告を無視して上半身を起こすと、鼻と口から鉄の味がした。 違和感があって触ってみると、鼻から血が出ていて、口もどうやら切ってしまっているようだ。 そして急に血が流れたのか眩暈がして後頭部を氷枕にぶつける。
「今のあなたの頭部は血が足りてない状態なので無理に立つ必要はないんですよ。」
回らない頭にそんな言葉が響く。 そういうことは早く言ってよ。
「でも矢藤君もなんであんなに本気で投げたのでしょうか? 下手をすればもっと大事になっていたというのに、彼は館君にボールを当てたときガッツポーズをしていたんですよ?」
それに関しては思い当たる節はある。 あるのだが、そんなことを怒りに任せてぶつけないで欲しいとは思う。
「そういえば授業はどうしたのさ? 僕はこうして動けない理由があるけれど、安見さんは普通に戻ってもいいんじゃない?」
「別に戻ってもいいですけれど、その間あなたは1人になってしまいます。 寂しい思いをすると思うのですがそれでもいいのなら・・・」
「すみません。 話し相手になってください。」
「素直にそう仰っていただければ。」
なんだろう。 この踊らされた感じ。 というか単位の方は大丈夫なのだろうか?
「別に問題はないかと。 あれで単位が落ちるくらいならもっとみんな真面目に取り組んでますよ。」
それは確かに言えることだろうな。 参加する気が起きないのは確かだ。
「はぁ・・・この土日は安静かな。 日課のジョギングは出来ないけれど、無理してやるものでもないからなぁ。」
「あれだけ強力なボールをもらっても、鼻の骨が折れてないらしいので、1日休めば普通に走れるようにはなると思いますよ。」
「それでもあんまり動かないことにするよ。 元々はインドア派だからさ。 僕。」
そう言って鼻という単語が出たので、自分の鼻血を拭くことを思いだし、ティッシュを貰う。
「ねぇ館君。」
「なに? 安見さん。」
「今回のドッジボールで学年一位になれたら、ゴールデンウィークはどこかに行きませんか? ご褒美として。」
まさかの安見さんからのお誘い。 これには少し驚いたが、ここで思い上がってはいけないと思い、言葉を紡ぐ。
「それは僕と、安見さんだけで?」
そう質問すると、安見さんは考えるように上を向く。 そしてもう一度僕を見る。
「それもいいですけれど、今回はご友人を誘って行きましょうか。」
そう微笑むように笑って見せた安見さんを見て、ホッとして、どこか寂しさがあった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・? 寂しさ? みんなで行くんだから寂しさなんてないはずなのだけど・・・・・・?
「・・・? 館君? どうかしました?」
そんな様子をおかしく思ったのか、安見さんが声をかけてくる。
「ん。 大丈夫。 僕らの個人的な目標だけど、勝たなきゃね。」
「そうですね。 また来週から頑張っていきましょうね。」
そして安見さんはもう一度微笑んでくれる。 こうしてゆっくりと流れていく時間がとても心地よく、安心したのか僕の瞼が下がっていき、安見さんが僕に近づいて来たところでもう一度眠ってしまった。
目を覚ますと見慣れない部屋にいた。 それ以前になんでこの場所にいるのか記憶がない。 僕の身に何があったのだろうか? なんだっけ?
「おはよう、気分は・・・あまり良くはなさそうね。 なにが起きてるのか分かってないって顔してる。」
カーテンが開けられて、覗いてきたのは、白衣を来ていて眼鏡をしている、30代前半位の女性だった。
というかこの人には見覚えがある。 確か保健室の先生だったはずだ。 ということはここは保健室な訳か。
「僕・・・どうやってここに来ました?」
「あぁ、君はずっと眠っていたからね。 坂内って男子生徒が肩を使って君を連れてきたよ。 もうかなり大変そうだったよ。 彼の方が身長が低いのに、引きずりながらも連れてきたんだもん。」
それは本当に申し訳無いことをしたな。 今度そのお礼をしなきゃ。
「それとそこで寝てる彼女は、君が起きるまで一緒に見てるって言って、寝ちゃったみたい。」
そう言って保健の先生の逆方向を見ると、椅子に座りながらウトウトと寝ている安見さんの姿だった。
「彼女も心配していたからね。 もうすぐ授業は終わるけど、怪我の状態を考慮してもう少し寝てなさい。 顔面と後頭部を殴打して、足も擦り傷が多いから、下手に動くと痛みが出るから。」
先生はカーテンを閉める。 僕は氷枕に後頭部を委ね、保健室の天井を見上げる。
「はぁ・・・」
あまりにもいきなりなことで溜め息が出てしまう。 高校に入ってこんなに早く保健室のお世話になるとは思わなかった。 しかも保健室備え付けのベッドまで借りて。
情けないとは言わないが、どうしてこうなったのだろうと考えてしまう。
「・・・・・・・・・ん。」
頭を思考放棄していたら、声がした。 その声の方を向くと安見さんが眠りから覚めたようで、眠気眼を擦っていた。
「・・・・・・あ、お目覚めになられましたか?」
「うん。 そっちも今起きたようだね。」
そんな脳が回ってないのが分かるような会話をお互いにする。 安見さんが起きたので事情を説明してもらおう。
「ねぇ安見さん。 僕はどうして保健室にいるのかな?」
「矢藤君が投げたボールが館君の顔に直撃して、その反動で館君がおもいっきり後ろに仰け反って、そのまま床に頭をぶつけたという訳です。 まだ顔に痛みがあると思います。」
「そっか。 よっと・・・」
「あ、駄目ですよ! 今体を起こしたら・・・」
そんな忠告を無視して上半身を起こすと、鼻と口から鉄の味がした。 違和感があって触ってみると、鼻から血が出ていて、口もどうやら切ってしまっているようだ。 そして急に血が流れたのか眩暈がして後頭部を氷枕にぶつける。
「今のあなたの頭部は血が足りてない状態なので無理に立つ必要はないんですよ。」
回らない頭にそんな言葉が響く。 そういうことは早く言ってよ。
「でも矢藤君もなんであんなに本気で投げたのでしょうか? 下手をすればもっと大事になっていたというのに、彼は館君にボールを当てたときガッツポーズをしていたんですよ?」
それに関しては思い当たる節はある。 あるのだが、そんなことを怒りに任せてぶつけないで欲しいとは思う。
「そういえば授業はどうしたのさ? 僕はこうして動けない理由があるけれど、安見さんは普通に戻ってもいいんじゃない?」
「別に戻ってもいいですけれど、その間あなたは1人になってしまいます。 寂しい思いをすると思うのですがそれでもいいのなら・・・」
「すみません。 話し相手になってください。」
「素直にそう仰っていただければ。」
なんだろう。 この踊らされた感じ。 というか単位の方は大丈夫なのだろうか?
「別に問題はないかと。 あれで単位が落ちるくらいならもっとみんな真面目に取り組んでますよ。」
それは確かに言えることだろうな。 参加する気が起きないのは確かだ。
「はぁ・・・この土日は安静かな。 日課のジョギングは出来ないけれど、無理してやるものでもないからなぁ。」
「あれだけ強力なボールをもらっても、鼻の骨が折れてないらしいので、1日休めば普通に走れるようにはなると思いますよ。」
「それでもあんまり動かないことにするよ。 元々はインドア派だからさ。 僕。」
そう言って鼻という単語が出たので、自分の鼻血を拭くことを思いだし、ティッシュを貰う。
「ねぇ館君。」
「なに? 安見さん。」
「今回のドッジボールで学年一位になれたら、ゴールデンウィークはどこかに行きませんか? ご褒美として。」
まさかの安見さんからのお誘い。 これには少し驚いたが、ここで思い上がってはいけないと思い、言葉を紡ぐ。
「それは僕と、安見さんだけで?」
そう質問すると、安見さんは考えるように上を向く。 そしてもう一度僕を見る。
「それもいいですけれど、今回はご友人を誘って行きましょうか。」
そう微笑むように笑って見せた安見さんを見て、ホッとして、どこか寂しさがあった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・? 寂しさ? みんなで行くんだから寂しさなんてないはずなのだけど・・・・・・?
「・・・? 館君? どうかしました?」
そんな様子をおかしく思ったのか、安見さんが声をかけてくる。
「ん。 大丈夫。 僕らの個人的な目標だけど、勝たなきゃね。」
「そうですね。 また来週から頑張っていきましょうね。」
そして安見さんはもう一度微笑んでくれる。 こうしてゆっくりと流れていく時間がとても心地よく、安心したのか僕の瞼が下がっていき、安見さんが僕に近づいて来たところでもう一度眠ってしまった。
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